METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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いつまでもともだち

 ヴェルはいつも元気いっぱいだ。

 ダミーから派生したとはいえ、親であるエグゼの影響を色濃く受け継いだためか常に活発に動き回り、いたずらを仕掛けたりところかまわず遊び回ったり常にフルパワーだ。

 ヴェルの面倒を見るというのはなかなかに骨が折れる。

 というのも、エグゼの子どもということもあってかスネークとエグゼといった親と認識する存在や、それ以外の懐いた者の言うことしか聞かないからだ。以前まではアルケミストやデストロイヤーなどが面倒を見てくれていたが、今はもういない…必然的にエグゼが普段の仕事の時間を割いて面倒を見る時間が増えていく。

 とはいっても常にフルパワーなヴェルの面倒を一人で見るのは流石のエグゼもまいってしまう……数少ないヴェルが懐くハンターがいなければ、とっくの昔にくたばっていただろう。

 

 前哨基地の外れに特別に作って貰った公園にて、ヴェルを連れていき遊ぶ。

 他にも同じようなちびっこ人形たちも一緒にやって来て遊ぶが、ヴェル以外のちびっこ人形の面倒はFALが押し付けられている。まあ時々スプリングフィールドやキャリコなどがやって来て一緒に遊んであげるのでそこまで苦労することは無いだろう。

 

 

「あ、パパだ!」

 

 

 公園の遊具で遊んでいるヴェルは父親と認識するスネークを視認すると、遊具を飛び降りてぱたぱたと駆けていく。ちびっことはいえハイエンドモデルのダミー体であるヴェルは、スネークの胸の高さまでジャンプしてしがみついていった。

 そのままヴェルはスネークの肩をよじ登り肩車の体勢で落ち着いた。

 

「相変わらず元気いっぱいだなヴェルは」

 

「スネーク、いつもいつもミッション(仕事)ばっかりしてないでたまにはヴェルの面倒も見てくれよな?」

 

「そうしたいのはやまやまだが、大事な任務があるんだ」

 

「ヴェルの世話だって大事なことだろう? スネーク、ちゃんと親の自覚持ってんのか?」

 

 常日頃、ヴェルの面倒を任せられっぱなしのエグゼがここぞとばかりに育児の負担が自分ばかりにかかっている不満をぶつける。エグゼは何もヴェルの面倒を見たくないと言っているわけではなく、もっと子どもと一緒にいる時間を増やせと言いたいだけだった……最初は軽く受け流していたスネークも、エグゼに強い口調で言われるとだんだん話を聞くようになっていく。

 

「分かった、じゃあ一緒にミッションに言ってみるかヴェル?」

 

「おれのことつれてってくれるのか!? やったーー!」

 

「おいおい、そりゃいくら何でも無茶じゃ…」

 

「ちょうど現地調査の任務があったからな。MSFの管轄内の調査だし、それほど危険じゃない…色々動物たちが見れるぞ、ヴェル」

 

「どうぶつ!? サルとかみれるのか!?」

 

「サルもいるかもな」

 

「やったー! パパといっしょだ! ねぇ、ママもいっしょにいくの?」

 

「オレはちっと用事があるからな、パパと一緒に行ってきな」

 

「ママはつまんないなぁ、べぇ~~!」

 

「このやろう…なんでオレの時だけ文句言われんだよ…」

 

 スネークと遊べない時は寂しそうにするだけだが、エグゼの場合は何故か挑発される…このヴェルの態度の差にエグゼはジト目でスネークを見つめ、スネークは居心地の悪さを感じたのかヴェルを肩車したまま足早にその場を去っていってしまった。

 

「さてと……おい、なんだよハンター…」

 

「別に。痴話げんかを見てるこっちが恥ずかしかっただけだよ」

 

「うるせえよ」

 

 さっきまでのやり取りを見ていたハンターがニヤニヤしながらからかってくるので、軽く悪態をつく。

 ヴェルの育児から解放されたエグゼは大きく伸びをしてから、何をしようかと考える……仕事に関しては、特に大きなこともなく、ヘイブン・トルーパーの新兵訓練はスコーピオンが引き受けてくれたし、その他の兵站や整備業務などは各大隊長やその副官などが担当しているのでわざわざエグゼが口を出すまでも無い。

 あれこれ何か仕事が残っていないか、考えた後でやはり仕事はない……ようするに今日はお休みの日ということだ。

 

「お前はなんか仕事あんのか?」

 

「私か? いや、私の大隊も特にはな」

 

「そうか……折角だから久しぶりにバイクでも走らせるか? 最後に乗ったのいつだったかな?」

 

「だいぶ前だろう。バッテリー上がってるんじゃないか?」

 

「たぶんな」

 

 お互い今日はやる仕事もないということで、折角だから一緒にバイクに乗ることになった。

 前哨基地の倉庫でほこりまみれのシートを取りはらうと、やや埃を被ったバイクが一台…倉庫の外に押しだしてキーを回してみるが、二人が心配していた通りバッテリーが上がってしまっていた。

 

「乗れよエグゼ、私が押してやる」

 

「あぁ?」

 

「押しがけだよ、やったことないのか?」

 

「分かってるっての。オレに任せろ」

 

「ほんとに分かってるのか? まあいいけど」

 

 半信半疑ではあるが、とりあえずエグゼを信じバイクを押してみせる……しかしタイミングが合わないのか単にエグゼがへたくそなのか、変にブレーキがかかってしまいエンジンはかからない。それが何度も続くので、エグゼを引きずり下ろしハンターがバイクにまたがる。

 今度はエグゼがバイクを押し、ハンターがタイミングを合わせクラッチを繋ぐ…すると、見事エンジンが始動し、すかさずアクセルを開いて回転数を上げた。

 

「ほら、乗れよエグゼ」

 

「あぁ? お前が運転するのかよ、オレのバイクだぞ?」

 

「誰がエンジンをかけてやったと思ってるんだ。さっさと乗りな」

 

「立ちごけしたら容赦しねえからな」

 

 文句を言いながらも後部シートに座るエグゼ。

 目的地を問うハンターに、適当に流せと指示を出す…出発前に適当な缶詰やブランケットを荷物にまとめる、折角だから小型ガスコンロなどを持って大自然でキャンプしようぜというノリになったのだ。

 楽しそうにあれこれ荷物を積もうとするエグゼと、冷静に必要なものだけを選んで積むハンター……二人のまるっきり違う性格だからこそ上手く噛みあう二人の関係、二人のそんな姿を見て基地のスタッフたちは青春を感じていた。

 そしてある程度荷物をまとめ終え、二人は手頃な山を目指しバイクを走らせた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とほほ……こんなわけわからねえ場所でガス欠かよ…」

 

「すまん、ガソリンメーターまでは見てなかった…」

 

 残念なことに、二人が乗るバイクは山を一つ越えた辺りでガス欠を起こし止まってしまった。

 幸いにも基地からそこまで距離があるわけではなく、折角ここまで来たのだからと二人はバイクを押してたまたま見つけた湖畔のほとりに簡単なキャンプを張り、迎えを呼ぶのは明日にしようということで一夜をそこで明かすこととした。

 持参した小型のガスコンロでお湯を沸かし、同じく持ってきたマグカップにコーヒーを注ぐ…。

 

 ハンターはブラック派であるが、エグゼはシュガーを入れまくる。

 

「毎回思うんだが、シュガー入れ過ぎじゃないか? そこにミルクもいれるんだろう?」

 

「おうよ。オレ様は甘党だからな、それに毎日鍛えてるからデブにはならねえよ」

 

「まあ、ほどほどにな」

 

「とりあえず乾杯?」

 

「ん」

 

 酒の代わりにコーヒーで乾杯だ。

 安物のインスタントコーヒーではあるが、大自然の中で淹れたコーヒーは何故だかいつもより美味しく感じられた。夏が近付いているとはいえ、夜になると肌寒い…暖かいコーヒーはそんな寒さを和らげてくれる。

 たき火の前に座って、コーヒーを飲みながら他愛のない会話をする……下らないことや、最近の出来事などを話しあい、時に笑い合う。日頃冷静沈着なハンターもエグゼの下らないネタに声を出して笑った…。

 

 やがて二人は話題が尽きたのか、たき火の火をぼんやりと見つめたり、夜空の星を見上げたりする…。

 

「コーヒー飲んだせいか、全然眠くねえな」

 

「そうだな……お、流れ星だ」

 

「おぉ……オレ初めて見たかも。ちくしょう、望遠鏡も持って来れば良かったか?」

 

「それにしても綺麗な星空だ……知ってるかエグゼ? 私たちが今見ている星の光は、その光が発せられて何百年、何千年…気が遠くなるような年月をかけてこの地球に届く光なんだ。もしもあの星が爆発して消えてなくなったとしても、それを知れるのは何千年も先のことなんだよな」

 

「いきなり何言いだすかと思えば、最近覚えた知識を語りたいタイプか?」

 

「ふん、お前みたいな野蛮人には知的な会話などできないだろうな」

 

「なーにが、野山駆けまわってハンティングしてる奴に言われたかねーよ」

 

「もうお前とは二度と喋るものか」

 

 茶化したエグゼは笑いながら詫び、ハンターもそこまで怒っていないのですぐに仲直りだ。

 

 消えかかったたき火に薪をくべ、エグゼは横になって夜空を見上げる…横になっていればそのうち眠くなるだろう、ということでハンターも同じように横になって空を見上げていた。

 ぱちぱちと、たき火が爆ぜる音を聞きながら二人は黙って空を何気なく見上げていた。

 

「なあ、お前誰か好きなやつとかいねーの?」

 

 沈黙を破ったのはエグゼだ。

 ただ、予想していなかった言葉にハンターはエグゼの顔を見るが、相変わらずエグゼは空を見上げたままだった。ハンターは視線を夜空に戻すと、エグゼが投げかけた問いについて考えた。

 

「さあな、正直なところお前がスネークに対して抱くような想いはよく分からないよ。誰か一人を特別に好きって考えたりしたこともない……みんな、平等に好きだと思ってるよ」

 

「そっか……そうだよな」

 

「なんでそんなことを聞いてきた?」

 

「大したことじゃない。ふとよ、こうして夜空見上げたら昔のこと思い出したんだ……オレとお前、姉貴にデストロイヤーとで……それから忘れちゃいけない、サクヤさんも一緒になって研究所の屋上で天体観測したことがあってな……あの時は曇り空でよ、雲の隙間から月を見ようとして……思いだすだけでも笑っちまうぜ」

 

「なんだそれは?」

 

「デストロイヤーの奴、望遠鏡抱えたまま空を見上げるもんだから屋上から落ちかけてよ…姉貴が咄嗟に手を伸ばしてなかったら今頃死んでたぜ? 死ぬかと思ったなんて、泣きべそかいて酷い顔でな」

 

「それは笑えるな……」

 

 一度記憶を失くしたハンターには、ただその思い出話を想像することしか出来ない。

 ただ、記憶を失っても親友とまたこうして下らない事で笑い合い、楽しい時間を共有することが出来る……きっとまた記憶を失くしたとしても、それがエグゼの方であったとしても、二人はまたこうして親友に戻ることが出来るだろう。

 

 

 いつまでも、ともだち。

 

 夜の湖畔に、二人の笑い声が響き渡っていた…。




たまにはいーよね、こういうのさ…。

この二人については、恋だとか愛だとか百合だとか挟む余地がない、完璧な友情だと思っている。
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