METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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MSF、キャットファイト!! part2

 ひょんなことから始まったMSF戦術人形格闘技最強選手権、最初はエグゼと416の些細ないがみ合いから始まったこのイベントは、スコーピオンが我こそはMSF最強だと自負する戦術人形たちに呼びかけたことで何人かの戦術人形がこの戦いに参戦する意思を固めた。

 急遽始まったこのイベントに、副司令ミラーの副官であるジェリコが取り締まりをしようとするが、会場の熱狂はもはや止められない…。

 

「まあまあジェリコちゃん、こういう時は肩の力を抜いてリラックスリラックス! ほら、ここに座ってさ」

 

「え、なんなんだこの席は…?」

 

 スコーピオンに背中を押されながらリングサイドに配置されたテーブルには【実況席】の立て札に加え、そこにジェリコの名が連なっている。他には大隊長のMG5の名もあり、既に着座してマイクの位置を調整するなど、実況役をノリノリで演じている。

 こういったイベントに不慣れなジェリコは渋々着席するが、何かよからぬことがあればすぐにでもストップをかけるつもりであった。

 

 一方で、MSF最強戦術人形として呼び声が高いながらもこのイベント参戦を辞退したWA2000、会場の二階から一人の傍観者として退屈そうに見つめていた。スコーピオンからは参戦を勧められたが、あくまで実戦での強さを目指して訓練している彼女にとって、ルールに縛られたこのイベントは無意味なものとして映っていた。

 

「お前は参戦しないのか?」

 

 不意にかけられたその声にWA2000は咄嗟に振りかえる。

 そこにいたのはオセロットだ…まさかスコーピオンが勝手に開いたこのイベントを中止させに来たのでは、と思ったがどうやらそうではないらしい。むしろ、リングを特設し自らレフェリーをかって出てイベントをまとめているスコーピオンに感心している。

 

「私はあまりこういうの興味ないから」

 

「そうか?オレは興味があるぞ……ボクシング、柔道、プロレスリング、空手、最強を自負するチャンピオンたちは多いが、果たして総合格闘技において誰が一番強いのか。参戦しないならよく見ておくことだワルサー、無駄なことではないぞ」

 

「あなたがそういうのなら、オセロット」

 

 オセロットはそのまま二階に用意された椅子に座る…彼の言葉を聞いたWA2000もまた彼の隣に座り、先ほどまで抱いていた意識を変えて、このイベントを観戦することとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、第一試合を始めるよ~! 青コーナーより研究開発班のアーキテクトだー!」

 

 リング上でマイクを握るスコーピオンの呼びかけにより、会場に姿を現したアーキテクト。会場入りした彼女を集まった観客たちが歓声と拍手でもって迎え入れる。声援を送る観衆たちに笑顔で手を振りながらリングイン、アーキテクトは両手で投げキッスを送るのだった。

 

 呑気なアーキテクトの様子に、実況席のジェリコはあきれ顔を浮かべていた。

 

「アーキテクト、あれで戦う気があるのだろうか?」

 

「まああいつもバカではない、腕に自信があってのことだろう…だが対戦者は決して弱くないぞ?」

 

 あらかじめ、カードを知っているMG5はアーキテクトを見やりながら笑みを浮かべる。

 次にスコーピオンが名を呼んだのは、戦車大隊大隊長をつとめるFALだ。

 アーキテクトよりかは控えめな声援で迎え入れられたFALはなんと柔道着の姿で入場、それを見た観客たちは意外性に大喜びで、熱狂的な拍手でFALを迎え入れるのだった。

 

「おや? FALって柔道の心得があったのですか?」

 

「なんでもかじるぞ、アイツは。うちのチーム…ジャンクヤード組と言われている人形は半端な鍛え方はしていないからな。キャリコ、ネゲヴ、Vector、FAL。みんな相当な手練れだと自信をもって言えるさ」

 

「なるほど。ではあなたも強いのでしょう? 参戦を見送った理由は?」

 

「FALの意気込みを見てな…今日は傍観しよう」

 

 

 リングインしたFALは、いまだ観客たちに愛嬌を振りまくアーキテクトを忌々しそうに見つめている。

 スコーピオンの指示でアーキテクトがFALの前に立つが、その顔にはまだ笑みが残っており、それがまたFALを苛立たせていた。

 

「あんた、これからなにするか分かってんでしょうね?」

 

「ぶっちゃけノリで来た!」

 

 サムズアップで応えたアーキテクトに、FALは完全にキレてしまったようだ……額に青筋を浮かべて今にも目の前のアーキテクトをぶちのめさんとしていた。以前まではそこそこ仲が良かったはずの二人…しかし、愛車の戦車をアーキテクトに任せた際、砲塔が旋回できないようへんてこ改造をされて以来決別してしまった。

 アーキテクトも素直に謝ればそれでよかったのに…"駆逐戦車ってかっこいいよね!"などと言ってしまったがために、FALを完全にキレさせた。

 

 そして何より……髪型が被ってる、許されることではない!

 

「アーキテクト、私が勝ったらその髪型止めてもらうよ」

 

「いいよ! それじゃあ私が勝ったら、FALの戦車もっと改造させてね!」

 

 試合を行う前に互いの要件をつきつけ合い、両者一定の距離まで引き下がる。

 そして試合開始のゴングが鳴らされた…その瞬間、アーキテクトが跳び出し、強烈な跳び膝蹴りをFALの額に叩き込んだ。試合開始すぐに繰り出されたアーキテクトの奇襲戦法は見事決まり、蹴り飛ばされたFALは勢いよくコーナーポストに叩きつけられたのだった。

 

「えへへへ、こう見えて私は結構強いんだよ?」

 

 額をおさえてうずくまるFALへ向かってピースサイン、いやこの場合はVサインと言った方がいいだろう。

 アーキテクトの予想に反した攻撃を目の当たりにした観衆たちは大喜び、会場にはアーキテクトの名をコールする声が広がった。

 

「アーキテクトも普段おちゃらけていますがハイエンドモデル。弱いわけがないですね…MG5、この場合FALが追い込まれたと見てもいいのでは?」

 

「いや、まだまだ試合は始まったばかりさ。うちのチームを甘く見てもらっては困るぞ」

 

 MG5の言葉通り、FALは10カウントが取られる前に立ちあがる。

 跳び膝蹴りが命中した額が切れて流血しているが試合続行に問題はない、むしろFALの慢心が消え、鋭い目つきでアーキテクトを見据えている。リングサイドではひたすら大きな声でFALに声援を送るVectorの姿がある…相棒の声援に振りかえらず、サムズアップで応える。

 

 リング中央で再び睨みあう両者…アーキテクトはまだ余裕の表情を浮かべつつも、FALの組み技を警戒し一定の距離を保ちながら、時にキックを放ち間合いを取っていた。最初に強烈な一撃を与えてはいるものの、時間の経過と共にダメージは回復してしまう、まだダメージが残っているうちにアーキテクトは仕掛けるのだ。

 

「ていっ!」

 

 しなやかな鞭のように放たれたアーキテクトの足刀を、FALは上体をのけぞらせて躱したが、アーキテクトはそこから身を翻して後ろ回し蹴りを放つ。常人では反応しきれないような速さで繰り出された蹴り技を頸部に受け、FALはたまらず膝をつく。

 膝をつくFALに追い打ちをかけるべく、アーキテクトはサッカーボールキックを繰り出した…が、FALはアーキテクトの蹴りを受け止めると、彼女の足を掴み立ち上がる。

 

「よくもやりやがったわね、この鉄血のクズがッ!」

 

 足を掴んでアーキテクトの身体を引き寄せ、彼女の頭部に自らの額をぶつけていく。

 スコーピオン程石頭ではないが、FALの頭突きを受けたアーキテクトは大きくよろめいた…そこへFALが詰め寄ると同時に体落の技を仕掛けてアーキテクトをリングへと叩きつけた。すかさず倒れ込んだアーキテクトに寝技を仕掛けようとするも、アーキテクトがロープブレイクすることでレフェリーのスコーピオンが二人を引き離す…。

 

「うぅ…背中が痛い…」

 

 FALの攻撃でアーキテクトも余裕の表情を消したが、背中に受けた痛みに呻いている。流れがFALに向いてしまう前にたたみかける、アーキテクトは得意の足技を繰り出す。先ほどのように大ぶりな一撃は控え、素早いキックでダメージを稼ぐ。

 アーキテクトが放ったソバットを受けてよろめいたFAL、そこへアーキテクトのパンチが放たれるが、よろめいたのはFALのブラフだった。

 ニヤリと笑ったFALはアーキテクトのパンチを躱して腕を掴むと、一本背負いの要領でアーキテクトをコーナーポストめがけ投げ飛ばす。背中からコーナーポストに叩きつけられたアーキテクトはリングに倒れ、素早くFALは裸絞めに持ちこんだ。

 うつ伏せのアーキテクトは首とFALの腕の間に手を差し込んで何とか耐えようとする…が、一瞬の隙をつかれて完全に頸部を絞めあげられてしまった。

 

 その瞬間、スコーピオンは勝負ありと判断、FALの技を強制的に解除させた瞬間試合終了を告げるゴングが鳴らされた。

 

「勝者! FALだよ!おめでとう!」

 

 試合に勝ったFALの手を掴んで掲げさせると、観衆たちが拍手や声援を送るのだった。

 一方のアーキテクトは悔しそうに指をかじりながら、涙目でFALを見ていた…敗者のアーキテクトは約束通り、FALとかぶっているサイドテールの髪型が永久禁止されてしまうのだった。

 しかし、試合に負けてしおらしくなっている姿と、綺麗な黒髪をおろしている姿が普段とのギャップの差を感じさせ別な意味で観衆たちを熱狂させてしまうのであった…。

 

 

 

 

「ほいじゃ、次の試合行くよ~! 青コーナーより、ゲーガーの登場だー!」

 

 スコーピオンの声でゲーガーが入場した瞬間、観衆たちの声に混じって多数の無人機たちのけたたましい作動音が会場に鳴り響く。リング周辺をフェンリルが駆けまわり、月光が唸り、メタルギアRAYが窓の外で大はしゃぎしている。無人機たちの応援は強烈だが、ゲーガーは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。

 だがそんなことをやっている場合ではない、何故ならこれからくる相手はMSF最強の一角なのだから…。

 

「赤コーナー! 来ました、ご存知FOXHOUND! スペツナズ部隊長の9A91だァッ!!」

 

 9A91の登場により会場は一瞬ざわついた。

 実況席のMG5は参戦を知っていたので驚きはしなかったが、会場の人々はほとんど誰が出てくるかなど知らないのだから。

 

「9A91さんですか…どういう戦いになるのか気になりますね」

 

「これまでの選手と比べて、一番落ち着いた雰囲気だ。彼女を応援するメンバーもな」

 

 見れば、観客席の中にグローザらスペツナズの隊員の姿もあるが、彼女たちは声援を送るでもなくただ静かに隊長の姿を見つめている。まるで、9A91の勝利以外に結果はないと言わんばかりの様子だ。

 

 リング中央で向かい合い、ゴングが鳴らされる…先ほどのアーキテクト同様、ゲーガーは開始と同時に一気に詰め寄っていき拳を放つ。それを見切った9A91が素早くしゃがみ込み水面蹴りを放ち、ゲーガーの足元を崩す。倒れ込んだゲーガーの腕を取って極めると同時に、スコーピオンが止めに入った……試合は一瞬で決まってしまった。

 スコーピオンが勝者である9A91の手を取るが、あまりの展開の速さに観客はおろか、敗者であるゲーガーもわけが分からないと言った表情であった。

 

「え? いくらなんでも強すぎじゃ…」

 

「あれがMSF最強の風格だよジェリコ。WA2000が参戦しなかったのが惜しいくらいだ。まあ、興業的にはちょっと盛り上がりに欠けるがな」

 

 そのことは主催者であるスコーピオンもそう想っているようで、もっと試合が長くなると思っていたのか困惑している様子。いまだリング上できょとんとしているゲーガーを追い払うと、彼女はフェンリルら無人機たちによってどこかへ連れていかれてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 戦術人形たちの戦いはその後も続き、数々の名勝負を繰り広げ会場に集まった観衆たちは最後までその熱狂が冷め止むことは無かった。最後の組み合わせが終了すると、このイベントを立ちあげたスコーピオンが最後にリングの上に立って、イベントのために集まってくれた人たちに対し感謝の言葉を述べるのであった。

 観戦料のことなどすっかり忘れ、スコーピオンはただこの楽しい一時をみんなと共有できた喜びを伝える…それはみんなにとっても同じこと、会場にいるすべての者が、このイベントを企画したスコーピオンに惜しみない拍手を送る。

 

 みんなからの拍手に両手を振って応え、イベントを閉幕させようとした時…一人の人形がリングに上がり込む、エグゼだ。

 

 突然のエグゼの行動にスコーピオンは呆気にとられるが、観衆たちはまだ何か面白いことが起こるのではという予感を感じ、期待に胸を膨らませながらリングの上を見つめる。

 

 

「今日のイベントは間違いなく楽しいイベントだった、それは間違いないぜ。ルールに則ったものだが、強さを見せつける格好の舞台だった。オレからも礼を言うぜ?」

 

「えへへへ、照れくさいなもう。そんなに褒めても何もでないよ?」

 

「だがよ、なんか忘れてねえか? なあみんな、何か物足りねえよな? こういうイベントに関して、欠かせない奴が参戦してねえ……誰のことか分かるか、オイ!」

 

 

 マイクを握りながら、エグゼは会場のみんなに向かって呼びかけた。

 エグゼの意図を察した観衆たちは、誰にともなく口々に彼女の名を叫ぶのだった。

 

 

『スコーピオンッ!』『スコーピオンッッ!!』『スコーピオンッッッ!!!』

 

 

 観衆たちのスコーピオンの戦いを求める声は最高潮に達する。

 レフェリーとして試合に関わっていたために、このイベントで戦うことは出来なかったのだが、親友であるエグゼはスコーピオン不在の試合を物足りないと断言する。

 

「聞いてるかよスコーピオン、お前の戦いを見たい奴がこんなにもいるんだぜ? だったら応えるしかないだろ? なぁ、久しぶりにやり合おうぜ?」

 

「はぁ…ったく、なんだよなんだよ、こういうことされちゃうと嬉しくなっちゃうでしょうが! よっしゃ、やったろうじゃんか!」

 

「へへ、そうこなくっちゃな! そうなると、もう一人見てくれてなきゃならない人がいるよな?」

 

「だね……最強の男の嫁は、最強の女じゃなきゃ! スネークが見てる前でお互い正々堂々決着つけようじゃないか! どっちがスネークのお嫁さんに相応しいか、勝負だ!」

 

「盛り上がってきたな! 恨みっこなし、本気でやろうぜ!」

 

 エグゼとスコーピオンが全力でぶつかり合う。

 思えばお互い過去に因縁があった間柄、今では仲良しコンビで知られているが、どちらが強いのかということに関してはお互いに譲り合ったりはしない。互いのプライドをかけた試合を約束し、この日のイベントは終結。

 観衆たちは二人の激突に期待感を膨らませながら会場を後にするのであった…。




トーナメント全部やるのは死ぬからね、しょうがないね…。

なに?ゲーガーが噛ませ犬だと?9A91が強すぎるからね、しょうがないね…。

ん?この手の戦いに欠かせないリベルタがいないって?リベルタは範馬裕次郎ポジだからね、しょうがないね…。


エグゼとスコーピオンを戦わせると、大変なことになるので今度やる時に持ち越しですw
ボクシングスタイルのエグゼと、プロレススタイルのスコーピオン……ん?既視感が…(猪木アリ)
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