「どうした小娘、かかってこないのか?」
漆黒のアーマーに身を包むフェリックスの表情は見えず、ただ目の前の反抗者を虫けら以下の存在と嘲り笑うかのように見下している。
彼の姿からは圧倒的強者の余裕というものを感じる。
いつでもお前らなどひねり潰せる、死にたければいつでもかかってこい…そう言わんばかりのセリフに、闘争心の強いスコーピオンの尊厳は酷く傷つけられる。
身をかがめ、両足にありったけの力を込めて地面を蹴るかのように踏み込む。
処刑人、エグゼが得意とする力強い踏み込みからの強襲戦法、幾度となくエグゼと手合せと訓練を行い身に付けた戦法だ。
だがスコーピオンは選ぶ手段を間違えてしまった。
重厚で大きすぎる巨体から、フェリックスは小回りが利かずスピードで翻弄すれば容易く背後をとれると踏んで仕掛けに行ったが、目の前の怪物はその図体に見合わない速さでスコーピオンの動きを捉える。
振りぬかれた拳がスコーピオンの腹部を抉り、彼女の小柄な身体は十数メートル以上も吹き飛び積まれていた木箱にぶちあたる。
打たれ強さに自信のあったスコーピオンだが、殴られた衝撃で足腰が思うように動かせないばかりか意識を保つのすらやっとの状態であった。
なんとか這いつくばりながらも体勢を整えようとしたところで、腹部に受けた強烈なダメージに屈し、その場に崩れ落ちる。
胃の内容物を全て吐きだし、今や消えかけの闘志でなんとか目の前の怪物を睨みつける。
フェリックスは墜落したヘリのドアガンとして取り付けられていたガトリング砲を引きちぎると、その凶悪な銃口をスコーピオンへと向ける。
ガトリング砲の銃身が回転し、射撃体勢をとる。
万事休す…そう思ったその時、数発の弾丸がフェリックスの身体を撃ち、微かに彼の巨体が揺らぐ。
『逃げなさいスコーピオンッ!』
通信に、WA2000の声が入る。
遠距離からの狙撃でフェリックスの気を引き、その隙に身を隠していた9A91とキッドが駆け寄り、負傷したスコーピオンを塹壕の中に引き込む。
『嘘でしょ、マンティコアの装甲も貫く徹甲弾が効かない…!』
「SFにもほどがあるぜ!オレのマシンガンの徹甲弾も効かねぇし、RPGの弾頭は止めるし…あいつなんなんだ!?」
スコーピオンの傷を労わりながら、思わずキッドはそう叫ぶ。
塹壕から顔を覗かせて見れば、フェリックスは自身に放たれる弾丸の雨をも意に介さず遠くの景色でも見るかのように狙撃手を捜している。
やがてある一点を凝視したかと思えば、背負っていた巨大な盾とミサイルランチャーを肩に担ぎ姿勢を落とす。
その動きを、照準器越しに見ていたWA2000はその狙いが真っ直ぐ自分に向けられていることに驚愕し、すぐさまその場を離れだす。
巨大な盾を文字通り地面に突き刺し、両手でミサイルランチャーを構える。
そして放たれたミサイルはWA2000が戦場を俯瞰していた狙撃位置に向けて真っ直ぐに飛んでいき、次の瞬間眩い光が戦場にいた兵士たちの視界を真っ白に染める。
強烈な光の後に、凄まじい爆風が戦場を吹き抜ける…。
砂塵は巻き上げられ、脆い木箱などは爆発の衝撃波で吹き飛ばされる。
爆風をやり過ごし頭をあげた兵士たちが見たものは、爆炎と黒煙によって形作られたキノコ雲であった。
「あの野郎…マジかよ」
遠方に生まれたキノコ雲をキッドは呆然と見つめる。
しかしWA2000の事を思い出し、すぐさま連絡をとろうとしたが通信は繋がらない…悪い予感がキッドの脳裏に過る。
ただ通信障害はすぐそばの9A91にも起こっているようで、まだ彼女がやられたとは限らなかった……それでも、フェリックスの放った携行用小型核兵器の威力を見せつけられた今、不安を払拭させることはできないでいた。
「くっ、撤退するぞ。あんな化物の相手をしてたら全滅してしまう」
キッドなりに状況を判断してのことであったが、そんな彼をスコーピオンは掴み引き留める。
「ここで逃げちゃダメだ、アタシたちが戦えばスネークとエグゼの別動隊が補足されちゃう。あたしたちが戦えば奴の目をこっちに向けられる、キッド、あたしらの任務は上手く行ってるんだよ!」
「ばか、そんな身体で言えたセリフかよ!」
「この程度の傷はいつものこと…へっちゃらだよ…。スネークはあたしたちを信じてる、あたしはそれに応えたい。キッド、アンタはどうなの? あたしらより付き合いの長いあんたが、スネークの期待に応えないはずないでしょ?」
「お前を心配して言ってやってるのに、このおてんば娘め。いいだろうスコーピオン、やってやろうじゃないか」
「そうこなくっちゃね…!」
キッドとスコーピオンは互いに笑みを浮かべ合い、拳をつき合わせる。
それに9A91も呼応する。
「あの化物用に用意したわけじゃないが、オレ様の新兵器だ。どこまで通用するか知らんが、こいつでぶちのめしてやるさ」
キッドが用意したのは、普段彼が持ち歩いている軽機関銃の類ではなく高威力で重量のある重機関銃だ。
時々使っているM2ブローニングとも違うその重機関銃は、PMCのプレイング・マンティス社の技術提供によってMSFの研究開発班が造り上げた"Kord重機関銃"だ。
M2ブローニングでは重すぎるため、キッドの要求で持ち運べる重機関銃を用意しろ、という要望のために開発されたが、並みの兵士には扱い切れないキッド専用の装備と言っても過言ではない。
12.7x108mm、対装甲用の徹甲弾を装填し重い重機関銃を持ち上げる。
「キッド、あたしと9A91があいつの注意を引く。さっき少し見えたけど、背中の装甲が薄いのかもしれない。盾を背中に付けてたのにはそれも理由があるのかも」
「よし、その手で行くか。期待してるぞ二人とも」
「あんたもね、キッド。スネークとエグゼがウラヌスを破壊するまで時間を稼げればいい! あのデカブツに一矢報いてやろうじゃん!」
すっかり立ち直ったスコーピオンは流石と言ったところか。
塹壕から這い出たスコーピオンと9A91は、フェリックスの姿を見るなり銃撃し手榴弾を投げつける。
不意を突いた形だが、手榴弾の爆発を至近距離で浴びてなお一歩後ずさりしたのみでビクともしない。
赤い眼光が二人の姿を捉え、核弾頭を搭載したランチャーを背に格納しガトリング砲を携える。
「出てきたかドブネズミめ。そのまま隠れていれば良かったものを…自ら死を懇願しに来たか? まあ、どうでもいい。既にウラヌスの発射体勢は整った、間もなく忌々しい異民族の巣窟であるサラエボは焼き払われるだろう」
「あそこには非戦闘員もいるんでしょ、よくもやれるね…!」
「異民族が何千、何万と死のうが知ったことか。この国にはクロアチア人しか住むことは許されん、異教を信じる異民族の血はこのわたしが自ら絶やし尽くしてくれよう。たとえそれが無垢な子どもであっても、穢れた異民族の血が流れる限り浄化しなくてはならんのだ」
「イかれた殺戮者め! あんたと話してると虫唾がはしるわ!」
「では死ね」
フェリックスの持つガトリング砲の銃身が回りだした時、スコーピオンと9A91は二手に別れ走りだす。
同時に走りだすことでどちらかに狙いをつける思考の隙を生じさせる、しかしフェリックスは迷うこともなくスコーピオンにのみ狙いを定め、ガトリング砲の猛烈な火力が彼女に襲い掛かる。
薙ぎ払うような掃射にスコーピオンはおもわず冷や汗を流す。
咄嗟に砲弾で抉られた穴の中へと飛び込むと、無数の弾丸が地面を抉りだす。
「こっちですッ!」
側面を周り込んだ9A91ががら空きの側方から銃弾を叩き込む。
しかし強固なアーマーによって弾は阻まれ、フェリックスも9A91が大した脅威ではないと判断したのか見向きもせずに、スコーピオンの隠れる穴へと猛烈な弾幕をはる。
徐々に表面の土が削り取られ、スコーピオンが撃ち抜かれるのも時間の問題だ。
そんな時、月光が一機フェリックスの前に着地すると同時に、強靭な脚を振りぬき蹴り飛ばす。
さしものフェリックスも、月光の強烈な蹴りを受けた衝撃でガトリング砲を手放した。
立ち上がったフェリックスが怒りの咆哮をあげた時、それまで好機を伺っていたキッドが塹壕から飛び出し、フェリックスのがら空きの背中へありったけの弾丸を叩き込む。
高威力の12.7x108mmに徹甲弾の貫通力、猛烈な連撃がフェリックスの背部装甲を削っていきやがて体組織を流れている血液が吹きだした。
垂れ出たのは、緑色の液体…それがE.L.I.Dになり果て、異形化した彼の体内を循環する血液だ。
粉砕されたアーマーから流れる緑色の血液に手ごたえを感じたが、フェリックスは苦しみの声もあげずキッドに振り返る。
一目で激烈な怒りを宿していることが分かる、その恐ろしい姿にキッドは気圧されたが、視界の端で動き出した9A91に笑みを浮かべる。
9A91はRPG-7をフェリックスに向けて撃ちこむ。
取るにたらない存在と無視した9A91はフェリックスの慢心を見事ついて見せた。
戦車を貫く弾頭は彼の身体に直撃し、大きな爆発を起こし吹き飛ばした。
「や、やりました…!」
吹き飛んだフェリックスはピクリとも動かない。
緊張感から解き放たれた9A91はへたり込み、大きく息を吸い込み、吐いていく。
「流石9A91! とどめの一撃見事だね!」
「危ない場面でした…」
「まったくだぜ。最後のはオレも冷や汗をかいた…そうだ、ワルサーは?」
『聞こえてるわよ…見事だったわね』
「ワルサー、無事だったんだね!?」
『全然無事じゃないわ……ちょっと、休ませて…離脱するわ』
「分かった。気をつけてね…」
さておき、見事な連携でフェリックスを退けることができた、そう思っていた最中に、月光が威嚇するように唸りをあげる。
まさかと思い、一同は咄嗟に振り返る。
「今のは効いたぞ虫けらども。久々に痛みというものを感じた、さあ殺し合いを続けようか」
12.7mm弾の連射とRPG-7の直撃を受けたのにも関わらず、奴は、フェリックスは起き上がって見せる。
盾を回収し背負い、打ち砕かれた背面装甲をカバーし、RPG-7が崩したかに見えた正面のアーマーも亀裂が入ったのみで健在だった。
「なんで立っていられるんだ…! 不死身かお前は!?」
「貴様ら下等な虫けらと同列に語るな。我が双肩には祖国の未来がかかっているのだ、貴様ら傭兵や人形どもには分かるまい…この崇高な意志こそが我が力の源である」
「イかれた殺人鬼が崇高な意志とは言ってくれるね」
「我が名誉は祖国へ仇なす者への激烈なる復讐、我が誇りは祖国への揺るぎ無き忠誠!
戦いを戦わぬ者に神の祝福は与えられん! 縛られた祖国、蹂躙された故郷は流血と英雄的な闘争をもって解放されるのだ!
下等な虫けら共に神の進軍は止められん! 我こそは神罰の執行者! 跪き泣いて許しを乞うがいい、貴様らの審判はこのわたしが下してやろう!」
次の瞬間、彼らの周囲に無数の砲弾が着弾し猛烈な爆風が襲い掛かる。
それはMSF側の砲撃部隊からではない、MSFは味方を巻きこむほど愚かではないし仲間の命を粗末にもしない。
無数の砲撃が降り注ぐ中で、フェリックスは高らかに笑う。
彼はあろうことか味方の砲撃部隊に対し、己ごと敵を砲撃するよう指示を出していたのだ。
「正気かテメェ!?」
「正気だ。祖国の勝利が約束されるまでわたしは死なん、神の祝福を受けたわたしに砲弾は当たらんよ」
猛烈な爆撃の中に悠然とたたずみ、爆風を逃れ散り散りになるスコーピオンらをあざ笑う。
爆発で地面が吹き飛び、榴弾の破片がまき散らされる中フェリックスは先ほど自身にRPG-7を撃ちこんだ9A91に狙いを定める。
爆撃で逃げ場を失う9A91を塹壕の中に駆り立て、ついには塹壕の端の行き止まりにまで追い詰める。
「死ぬのが怖いか人形め、安心しろ、それは単なるプログラムにすぎん。本当の貴様は単なる鉄とコードの集合体にすぎん、人を模した傀儡にすぎんのだよ」
「わたしは、違う…! わたしは―――っ!」
彼女の言葉は、フェリックスに首を掴みあげられたために遮られる。
彼女の足は地を離れ、フェリックスと同じ視線にまで持ちあげられる…首を絞めつけられる苦しみにもがき、足をばたつかせる。
「自分が勇敢な戦士だとでも思っていたか? 人形であるお前らは単なる消耗品、道具にすぎんのだ。貴様らをいくら破壊しようと、我が良心は微塵も傷つかん。異民族以下の下劣な存在め、このまま死んでいけ」
首を絞めつける力が強まり、9A91は薄れいく意識の中でも目の前の怪物へ睨むことを止めず手を伸ばし反抗の意思を示す…だが彼女のような人形を見下すフェリックスはどこまでも無機的に、冷酷に彼女の命を奪おうとする。
締め付けられる力にやがてばたつかせていた足も力を失い、伸ばした腕も力なく垂れ下がる…虚ろな意識の中、9A91は内なる闘志すらも徐々に消え行くことを感じていた…。
「おう、コラ。死ぬのはまだ早いんだぜ?」
そんな、聞きなれた声が聞こえた。
ふと、9A91は支えを失い地面に倒れ込む…首の圧迫感が無くなったと思うと、激しくせき込み意識が回復していく。
そうしていると、誰かに抱え上げられ目に映る景色が塹壕から広い戦場へと変わる。
まだ覚めきらない意識の中、9A91は息を整え顔をあげる。
そこには、見慣れた赤い瞳で見下ろし笑みを浮かべる仲間の姿があった。
「エグゼ…!」
「ヘヘ、処刑人様参上ってな。よく頑張ったな、後は任せな」
最高のタイミングの良さだ。
頼れる仲間の助けに9A91はおもわず嬉しさのあまりエグゼに抱き付く。
よしよしと彼女の背中を撫でつつ、塹壕から姿を見せた怪物を鋭く睨みつける…。
傍にいたヘイブン・トルーパーに9A91を預け、エグゼはブレードを構える。
「よう、よくもオレの仲間を痛めつけてくれたな。ぶち殺してやるから覚悟しろよテメェ」
「貴様…人形風情が、調子に乗るな」
見れば、フェリックスの右手は手首の辺りから斬り落とされ血を垂れ流していた。
だが彼は斬り落とされた右手に杭を刺し込み、それを切り落とされた手首に突き刺し固定する…E.L.I.Dに犯された彼の身体は驚異的な回復力で組織を癒着させ、ゆっくりと右手を動かしてみせる。
「クズが、わたしを傷つけたことを後悔させてやろう」
「そうか? ならテメエにはオレらにケンカ売ったこと後悔する時間を数えてやるぜ?」
そう言うと、エグゼは手のひらを広げてかざす。
そのうち、親指を折り曲げる。
次いで小指を…それが何かの時間を数えているのだと悟り、何らかの仕掛けに警戒するフェリックス。
その姿に笑みを浮かべ、指を二つ…勝利のVサインとも、ピースサインとも思える形をとる。
「腕っぷしは強くても、頭の方は悪そうだなお前……ドカーン」
0…すべての指を折りたたんだと同時に、凄まじい爆音が戦場に鳴り響く。
咄嗟に振り返ったフェリックスが見たものは、遥か後方の連邦軍のウラヌス砲台基地で起こる巨大な爆発であった。
巨大な戦術核兵器ウラヌスは爆発によって崩壊していき、その他の弾薬や爆薬に火が飛びうつり凄まじい爆発を起こす。
「おいデカブツ、誰にケンカ吹っ掛けたか理解したか?」
エグゼの嘲笑に、彼はゆっくりと振り返る。
相変わらず無機的な鋼鉄のマスクからその表情はうかがいしれない。
先ほどまでその場に降り注いでいた砲撃の嵐も、エグゼの部隊が攻撃を仕掛けたことで停止している。
勝敗は決したかに見えた…。
だが、目の前の怪物が今だその闘志を衰えさせていないことをエグゼは見抜く。
「敗因があるとすれば、わたしの慢心か。認めざるをえまい、貴様らは単なる傭兵ではないことを」
「おう、当たり前だクソボケ。少しは敬意を払いな」
「黙れ、貴様が下等な人形であることは変わりない! 容赦はしない、皆殺しにしてやろう!」
「やってみろよデカブツがよ!」
好戦的な笑みを浮かべ走りだす、スコーピオン以上の踏み込みの速さで猛然と突進していく。
だがそこに、二人の間を阻むかのように鉛色の機械的な外見の人形が突如として立ちふさがり、エグゼのブレードを防ぐ。
見慣れない戦術人形に一瞬戸惑ったエグゼだが、空いた手で拳銃をとり目の前の人形の頭部に弾丸を撃ちこむ。
その人形は撃たれてもなお活動を止めず、力で強引にエグゼを突き放す。
「なんだこいつ…鉄血でもIOPでもねえぞ?」
世にあふれる第2世代の人形と違い、鉛色の装甲を持った人形はどちらかというと装甲人形の姿形に近い。
だが装甲人形を取り扱ったことのあるエグゼにも、目の前の人形は初めて見る存在だった…強固な装甲と俊敏性、そしてパワーは装甲人形アイギス以上の性能を持つ。
それが、戦場のあちこちから姿を現す。
「連邦製戦術人形チェルノボーグ、疑似的感情や無駄な外見などを省き徹底的に戦闘能力を求めた戦術人形のあるべき姿だ。さて、ことここに至ってはもう手加減などしない」
フェリックスは己のアーマーに手をかけると、装甲の一部が剥脱されそこから高温の蒸気が吹きだす。
全身を覆っていたパワードスーツは一部の装甲と内部の人工筋肉を残し剥がれ落ち、ところどころ彼の変異した肉体が見え隠れする。
「このアーマーは防具としての役割だけではない。わたしの持つ力を制御する拘束具としての役割の方が大きい…ただでは殺さんぞ人形、地獄を味わわせてやる」
「上等だよ、返り討ちにしてやるぜ」
エグゼが身構えると、一斉に連邦軍の人形たちが動きだす。
人形たちの武装はガトリング砲やキャノン砲といった高火力の兵器、それらがエグゼを狙い一斉に放たれる。
戦場を走り抜け人形たちに狙いを絞らせないよう接近し、ブレードで斬りかかる。
それを人形は咄嗟に手首に装着したブレードを展開し防ぐのだ。
小さく舌打ちし、ブレードを弾き腰の部位を両断。
高周波ブレードの斬れ味は防ぎきれない、なんとかなると勝機を見出し次なる獲物に向けて走りだそうとした瞬間、足を何かに捕まれ前のめりに転倒する。
見れば、いましがた斬り倒したはずの人形が上半身だけで動きエグゼの足を掴んでいたのだ。
「クソ、離しやがれ!」
人形の頭に何度も弾を撃ちこみ、最後にブレードを突き刺したところで活動を停止する。
足を掴む手をはらい立ち上がったと同時に、フェリックスが一気にエグゼへと詰め寄り振りかぶった拳を叩きつける。
咄嗟に両腕を交差させて防ぐが、その衝撃でエグゼの身体は宙を舞い大きく吹き飛ばされる。
「痛ッ…! なんて馬鹿力だよ…!」
防御したにもかかわらず、巨大な車両にぶつかったかのような衝撃がエグゼの身体にダメージを与え、拳を防いだ両腕は痺れて思うように動かせない。
「エグゼ、大丈夫か!」
「スネーク…! ちょっと、ヤバいかも」
戦場に駆けつけたスネークの肩を借りて立ち上がるも、相手の力を思い知らされたエグゼはおもわず弱音を吐いてしまう。
連邦軍の戦術人形チェルノボーグは先ほどよりも姿を増やし、MSFの部隊と激しい銃撃戦を繰り広げている。
一体のチェルノボーグに対し精鋭兵士数人がかりで戦闘し、それでようやく互角の戦いだ。
今はまだ指揮をとるフェリックスの注意がMSFの部隊に向いていないが、もし彼が戦いに加われば戦況は不利になる。
こんな化物の足止めをしていたスコーピオンらの活躍に称賛したい、そう思えるほどの脅威をスネークは戦いを交えずとも感じ取る。
「貴様…貴様がMSFの司令官、ビッグボスか? フハハハハ、会えて光栄だよ。お前の話しは聞いていたからな、そしていつか我々の祖国の前に立ちはだかると確信していた」
「お前たちのウラヌスは破壊した、お前たちの目論見は失敗に終わった。大人しく退いたらどうだ」
「それがどうした。ウラヌスは所詮兵器、造り直せばいい。だがお前という存在は? お前をここで殺せばお前という存在は世界から消え失せる…祖国のために、今ここで果たす使命は貴様を殺すことに他ならんのだよ!」
剥き出しの敵意を隠そうともせず、フェリックスは走りだす。
ダメージの残るエグゼを塹壕に隠し、連邦最強の兵士と対峙する。
得意のCQCもこうも体格と力の差があると通じはしない、一体どうやってこんな化物とやり合っていたのか…思わず通信でスコーピオンに助言を求めたくなるほどだ。
走りながら、フェリックスは地面に転がるガトリング砲を拾い上げ、それを鈍器のように横薙ぎに振る。
間一髪のところで避けたスネークだが、再び振るわれた一撃を避けることはできなかった。
咄嗟に受け身をとったが、ガトリングの銃身で殴りつけられ肋骨の何本かは折れたようだ…激痛に苦悶の表情を浮かべる。
フェリックスのガトリング砲が回転し始めた時、すぐに回避行動をとろうとした際、チェルノボーグが立ちはだかり逃げ場を塞ぐ。
万事休す、そう思った次の瞬間、目の前のチェルノボーグは真っ二つに斬り裂かれ活動を停止させる。
何事かと思っていると、今にも銃弾の雨を降らせようと回転していたフェリックスのガトリング砲もまた銃身を鋭利な刃に斬り裂かれる。
スネークもフェリックスも、何が起こったか分からないでいた。
しかし、目の前の風景が霞のように揺れたかと思うと、ゆっくりと姿を現す。
「見ていられないな、スネーク…いや、ビッグボス」
「お前は…!」
霞を払い現われた彼は、外骨格に身を包み、エグゼの持つ高周波ブレードと同じような刀を握っていた。
そっと振り返り、彼はバイザーを開く。
そこから覗かせた顔に、スネークはハッとする。
「フランク・イェーガー…!」
「久しぶりだな、ビッグボス。あなたに受けた恩を返しに来た、手を貸そう」
「お前もこの世界に?」
「話しは後だ、手を抜いて戦える相手ではない」
バイザーを閉ざし、ブレードを手に身構える。
彼の言う通りフェリックスは手を抜いて戦える相手ではない、聞きたいことは山ほどあったが目の前の脅威をどうにかすることの方が優先だ。
「ちょっと待ったーッ!」
そんな時、茂みの中から声がしたかと思うと何人かの少女が戦場に転がり込んできたではないか。
「もー、45姉がモタモタしてるから絶好の機会を奪われちゃったじゃない!」
「ほんと、かっこ悪いタイミングね」
「慎重になりすぎて絶好の機会を逃したのは謝るわ。でも、結果オーライよ」
「うー…怖い怖い怖い…!」
「しっかりしなさいG11! さてお初にお目にかかるMSFのビッグボスさん、噂の404小隊、これよりMSFに加勢するわね!」
なんか第三章で全員のレベルカンストするんじゃないかってくらい難易度高くなります。
それはさておき、グレイ・フォックスさんと404小隊参上ッ!
でも404小隊はともかく、グレイ・フォックスさんの救援は一時的なものになりますね…今はもう一人の蛇姉さんのところに居ますから。
あー敵の強化やり過ぎた(白目)
オリジナル戦術人形チェルノボーグ…SWのマグナガードかT800ターミネーターでお願いします(ニッコリ)