好きな子と混合ダブルス組むために全国トップを要求された 作:小賢しいバドミントン
というのも今日ははねバドの最終回なので。
世界戦もやるのかなとも思ってましたが、いいタイミングだとも思います。
ただ想像以上にコニー戦が終わるのが早かった…。
あとやっぱり三強と綾乃+なぎさの団体戦とかもあったら楽しそうだったな~。
因みにまだ最終話読んでないです。田舎には当日届かない。
今回の話は団体戦開始からです。
なぎさが団体戦を離脱する事となり、一気に理子への体力・精神面での負担が増えることとなった。元々プレッシャーに弱く、更に弟と妹の世話もあり練習時間が人より取れない理子は、一度綾乃の家に訪れて話した。
自分が不安を抱えていることを。練習したいという意欲はあるが、これ以上時間は増やせないと。
二つ年上というのを忘れる程弱っている理子に綾乃はこういった。
“コートでの事は私に任せておいて”
そして団体戦当日。
『ゲーム! マッチワンバイ羽咲・泉!
個人シングルス準優勝、混合ダブルス優勝に恥じぬ圧倒的な差を見せつけて初戦の勝利を飾った。
ダブルスにおいてあからさまに実力差のある者同士がペアを組む場合、当然弱い方を狙うのがセオリーである。綾乃と理子の場合は理子が確実に狙われる。
だがその状況が望ましく無いかと言われると、意外とそうでもない。と言うのも、綾乃が前衛で理子が後衛のトップアンドバックの状態の場合で、後衛の理子に球が集まるということは、すなわち相手はロブに球が限られてしまう。勿論決め球を打てずに左右に振られ続けた場合苦しいのは理子になるが、理子は逃げたい時にクリアーを打っても問題なかった。仮にクリアーに対しスマッシュを打たれても綾乃が拾ってくれるので、結局相手の球の多くがクリアーとなる。
サイドバイサイドの状態のまま勝てるペアなど、レシーブの上手さと精神面での粘り強さ、選球眼などが必要となり、少なくともこのレベル帯に存在しない。
ただサイドバイサイドの状態で理子が一方的に狙われた場合、こうなると綾乃もフォローが困難になるので望ましい展開とはいえない。
その為可能な限り、綾乃が後衛になろうともフォローのしやすいトップアンドバックを維持した方がこの二人の場合は強い。
北小町女子の団体戦初戦は無事、D1・D2・S1でストレート勝ちを飾った。
「おめでとう藤沢」
「いい試合だったよ」
動きやすい私服で来ている弦羽早と、ジャージ姿のなぎさの二人が勝利を飾ったエレナと軽くハイタッチを交わす。特になぎさはエレナにマンツーマンで教えていたので、彼女の勝利には人一倍喜んでいた。
個人シングルス優勝の二人とハイタッチを交わす初心者の姿は、どれ程の人脈の持ち主なのかと他校の生徒から奇異な目で見られていた。
「弦羽早、私と理子ちゃんの試合どうだった?」
「良かったよ。綾乃のフォローのタイミングも良かったし、泉先輩も無理せず攻め急がなくて、落ち着いていました。体力的にも問題なさそうですか?」
「うん。やっぱりクリアー打って逃げられるのは大きいな」
後衛の方が体力の消費の激しいオーバーアームでのショット打つ為疲れやすいが、理子の言う通り無理して低く打つのを維持しなくて良いのは体力の温存に繋がる。滞空時間が長い球が打てると単純にその間だけ呼吸を置けるので、ハイペースになりにくい。
「あとは綾乃の
「任せてよ」
「ほ、ほんとに頼りになるなぁ~」
これまでも中学や、部員が減る前の北小町でもダブルスをやっていた理子だが、未だかつてここまで戦いやすいダブルスペアというのはいなかった。
パートナーが自分より遥かに強いのだから当然なのかもしれないが、それでも彼女に勝ったなぎさと組んでいた時もここまで試合が楽に感じたことがない。
前衛の圧が違うと後衛にとって何がやりやすいかというと、のびのびと自分の好きな球を打てるようになる。
もし前衛が低い球を通してしまうような選手だった場合、後衛としてはまずカウンターが飛んでくる可能性のあるコースに打ちにくい。だから多少無理な体勢からでも相手の逆を狙い、それが結果ネットや浮き易くなったりしたりとミスショットに繋がってしまう。
「(この二人が強い理由が改めて分かったかも)」
とにかく綾乃を警戒してロブを上げ続ける先程の対戦相手を思い出して、やや苦笑気味に理子は頬を緩めた。
しかも綾乃がミドルコート付近まで下がってくれたおかげで、バック側へのハーフ球もほとんど来ずに、上がってくる球を好きなところに打つノック練習のような試合内容だった。
団体戦というものは個人戦とは大きく異なり、出場チームは高校の数より多いことはないので試合数が少なく、そして休憩時間がかなり長い。元々バドミントンは一つの試合に短くてニ十分弱、長くて一時間は掛かる(高校では一時間越えはほとんどないが)。そして団体戦は先に三勝した方が勝ちなので、最大五試合行われる。その為拮抗した試合が全試合で行われたら、五時間近く掛かる可能性もゼロではない。もっとも限りなくゼロに近いが。
そして一試合が長く試合数も少ないので個人戦のような大規模な会場を使う必要もなく、試合は県内のとある普通の高校で行われている。当然普通高校の体育館に、神奈川県の男女合わせたバドミントン部員が入るスペースがある訳が無く、体育館の外でレジャーシートを敷いて各々時間を潰している。
「あっ、羽咲と秦野だ」
「マジだ。普通に外なんだな」
特別室でも用意されているのかと考えていたのか、通りかかった他校の生徒が意外そうに語尾を僅かに上げる。
こういった反応はもう珍しいものでもなく、二人ともチラリとそちらを振り向くものの特別会釈もしない。最初弦羽早は軽く会釈をしていたが、あまりに多かったので面倒になってそれも辞めた。
ルックス的にも目立たない方ではないので、顔も覚えられやすく、またバドラッシュの影響もあってか注目度は高い。綾乃も個人シングル優勝のなぎさ以上に今は目立っている。
「綾乃ちゃんと弦羽早君もすっかり有名人だね」
「でも前みたいに握手はなくなったんじゃない?」
エレナは、地区大会で他校の女子何人かから握手を求められていた光景を思い出す。
「まあね。悪い気はしないけど、やっぱり落ち着ける方がいいや」
「…握手って?」
少しだけ声の低くなった綾乃の問いかけにエレナは一瞬口元を上がらせて。
「他校の可愛い女の子に握手してって頼まれたんだよね~秦野?」
「可愛いを強調するの止めてくれない? 下心あるみたいじゃん」
これが綾乃への揺さぶりと気づいていない弦羽早は自分が責められているようで、やや不満げに唇を尖らせて抗弁した。
しかし彼の発言をさほど気にせずに、目的である綾乃の顔の動きをジッと観察する。
その表情に大きな変化はなく、数回ほど瞬きをした後。
「ふ~ん? まあ弦羽早、カッコいいからね」
ケロリとした様子から普段の彼女らしからぬ発言に周囲が一瞬目をぱちくりさせた。そして本人は特に気にした様子も無く淡々としている。
弦羽早は照れくさそうに頬を掻くと、周りの生暖かい目線に耐え切れなくなって適当な言い訳をして一度離脱し、そんな背中を綾乃がひらひらと気怠そうに手を振って見送る。
「(…やっぱ綾乃って変わってる)」
綾乃が男子をカッコいいと評すること自体がおそらくエレナ自身初めて耳にした。少なくとも今期のドラマに出る芸能人の誰々がカッコいいなど話さず、イケメンの写真を見せても“そうかもね”ぐらいで終わる。
しかしそのカッコいい男子を前にするには、今の綾乃の態度はあまりにも大きすぎる。
両手はジャージのポケットの中、背凭れに寄りかかり肩甲骨から上だけ体を起こしており、寝そべった足は組んで手も使わずにエネルギーゼリーを吸う。
カッコいい男子を前にした場合身だしなみや挙動に気を付けるようなものだが、そんな気配は一ミリも感じられなかった。
「(最近の綾乃にはふとした瞬間にドキドキさせられるな)」
安心する、好きな声、カッコいい。他にもいい匂いと言って貰ったこともあったか。あの時はシチュエーションも相まってかなり危なかったのは記憶に新しい。
冷たい水道水で顔を洗い熱を冷ますと、ハンカチで顔を拭いてふぅと一息つく。
「(普通の子なら、とっくに告白してるんだけどな)」
ここまで仲良くなって尚周りから、“早く告白しろよ”と言われないのが羽咲綾乃だ。もっともそう言われたところで、今は告白する気も無い。
「む、そこにいるのは秦野か?」
「その声は…やっぱり相模原さん」
彼の低い熊の唸り声のような声は特徴的だ。彼の周りには数人の男子生徒がおり、彼らが逗子総合でのレギュラーメンバーである事は、先ほど体育館にいた時に見かけたので知っていた。まるで学校に入って来た犬猫でも見るような視線に弦羽早が小さく笑うと、相模原が部員達を先に帰るようにとそれとなく促した。
「…なんだか久しぶりな気がするな」
「いや、まだ一週間ぶりですよ」
「そうか。いや、そうだな…」
何か話題を切り出そうとしているのは分かるが、にしても口下手な父親かと言いたくなるほどに話題作りが下手くそだ。ただ彼としても弦羽早にはシングルス、混合ダブルス共に決勝で負けているので必ずしも善意だけで接する事が出来る相手ではないのは確かだ。
弦羽早から見ても少しばかり気まずい空気を感じない事もない。
「…そうだ。家からの手土産があるが、食うか?」
「はぁ、ではいただきます」
男二人が並んで洋菓子を食う。なんだこの光景はと思いながらも、口に含んだシュークリームの甘さに張っていた頬も自然と緩む。
相模原が持って来たクーラーボックスをチラリとみると、洋菓子店のロゴが張ってあり、店用であるのが伺える。
「こないだお店に行きましたよ。その時はケーキを買いましたがとても美味しかったです。帰ってくる度に母がまた買って来いとうるさくて」
「ああ、両親から聞いた。母君は普段家には居られないのか?」
母君。本格的にこの人は戦国時代からタイムスリップしてきたのではないかと弦羽早は思えてくる。
「ええ、父共々多忙な人で」
「そうか。大変だな」
「いえ、案外気楽ですよ。うるさい人なんで」
そこで話が途切れ、また二人の間に逃げ場のない咳払いの一つでもしたくなるかのような静けさが流れる。
適当な話題でも出そうかと思ったが、相模原が触れたいことの内容は分かり切っていたので、多少勇気は必要だったが素直にそちらに持って行く。
「今年インターハイに出る選手で、注目している人はいますか?」
「ああ、インターハイか。うむ、そうだな」
やはりバドミントンの話題をしたかったのか、弦羽早が話題を振ると露骨に声のトーンが上がって口が速くなった。
因みに現在の執筆段階ですが、インターハイ編の綾乃対唯華戦が終わり、弦羽早のシングルの終盤書いている途中なのですが、終盤でモチベが鎮火してしまいました…。
削る話とかもありますが、90話弱だったかな?
いやほんとあともうちょいなんですが、やっぱり創作ってエネルギー使うって改めて実感しました。