1.遺跡の歩き方
Torielさんに着いて、遺跡へと向かう。
遺跡の前に何かあったようでFriskが手を伸ばしているけど、よく目を凝らしても、何も見ることはできなかった。セーブポイントでもあったのだろうか?
どこからか決意を抱いたと声が聞こえた気がする。
「Ruinsの歩き方を教えてあげるわね。ここにはパズルがたくさんあるの、昔ながらの気晴らしと鍵の合わせ技」
『気晴らしって…』
「当時は今より娯楽がなかったものだから。それに、侵入者を撃退する昔からの技術でもあるのよ。移動する時は解かないといけないから、よく見て慣れていってね」
そういうとスイッチを踏んでパズルを解いてみせるTorielさん。
それを見たFriskは何やら考え込んでいるようだ。
「1個目は、左前から順番に右、上、左…うーん。全部覚えなきゃダメなのかな」
いや、確かどこかにパズルのヒントがあったはず…
『あっ、見てFri!壁に看板か何かがあるみたい』
「ほんとだ!えっと、
"先へ進みたくば迷いを捨てよ。真の勇者も愚か者も真ん中の道は歩まず"
ってことは…真ん中を歩くなってことだ!!やった、解けたよ!」
『これなら覚えずに済むね。多分これから先もこんなヒントが書いてあるんじゃないかな』
「あら、気づいた?実は私たちが間違えた選択をしないように書いてあるの。しっかり考えればちゃんと解けるようにね」
「へぇ〜面白い!普段はやらないけど、パズル結構好きになったかも」
「そう言ってもらえると嬉しいわ!さあ、次の部屋に向かいましょう」
さて、日が暮れる前に遺跡を抜けられるだろうか…とは言っても、基本地下に日は差し込まないから日がくれてもわからないけど。
◇◇◇◇
1つ目のパズルから数分後。私たちの目の前には子供がいた。
また人間…?
「ここでは、出会った相手があなた達を襲ってくることもあるの」
『Flowey…あの黄色い花のように?』
「…そう。その時のために準備をしておかないと」
「でも武器も持ってないし、戦えないよ」
「心配しないで、あなた達は武器を持つ必要はないの。ただ、相手とおしゃべりすればいいのよ。時間を稼いでくれたら私が仲裁しにいくわ」
まさかこの言葉が後に響くとは、初見じゃわからなかったよ…。
ところでこの子は誰?なんで人間がここに…。
「この子はDummy。この子と練習してみましょうか」
え。
Dummyって確か日本語訳でマネキンだよね。だがどうみても人間だ。贔屓目に見ても人間だ。しかしながら人間だ…この世界の住人は、人間になっている?
Floweyは花だったのに。ハブり?仲間はずれ?ドンマイ黄色い花。
FriskがDummyに近づき、視界が黒く染まる。
《…Dummyに遭遇した》
どうやら音声形式でアナウンスが流れるようで、どこからか声が聞こえる。いきなり視界が黒く染まり、声が聞こえたので思わず周りを見回してしまった。
「Ris?何かいたの?」
『…いや、なにも。それよりその、ソウルまた出ちゃってるね』
何も浮かばない私とは別に、Friskの胸の前には真っ赤に輝くハートが浮かんでいた。あれがソウル…画面の中の景色はこう見えるのか。
「なんか勝手に出てきちゃうの…ねぇ、どうにか出ないようにできないのかな」
私は知らない。もしかしたら原作でそんな話があったかもしれないが、あいにく何年も前の記憶なので覚えていなかった。TorielさんもFriskのソウルが出ないようにする方法を知らないようだ。無言で首を傾げている。
「そっか…ところで、"Dummy?"って、何でハテナがついてるんだろう?」
『ん?Friskには何か字が見えるの?』
宙を指差すFrisk。その場には何もなかった。
「あれ、Risには見えないの?よくわかんないけど、文字が書かれた板が浮かんでるよ。ゲームみたい!」
FIGHTとかACT, ITEM, MERCYも書いてある…と左の方から指差している。それじゃあゲームみたいじゃなくて、ゲームそのものじゃないか。
確か原作でも同じようなボタンがあったはずだ。
もしかしたら、Friskはゲームと同じように世界を見ているのかもしれない。ボタンとかセリフとか…昔Friが描いた絵は綺麗な流線だったので、流石に見えている世界はドット絵じゃないとは思うけど。
『じゃあ、声も聞こえる?』
「声って、当たり前じゃん。聞こえなかったらRisと会話できないよ!」
『他の声は?』
「え?他に誰か話してた?聞こえなかった…どうしよう、耳悪くなったのかも」
…アナウンスはFriskに聞こえていない?
Torielさんの方に顔を向けても、怪訝な顔をされただけだった。私は幻聴でも聞いているのかな…?
「とりあえず何か選ばなきゃ!えっと…どうしよう」
『さっきTorielさんが行ってた通りにすればいいんだよ』
「さっきの……そっか、おしゃべり!てことはACT‼︎」
《…ATK 0、DEF 0 》
Friskが選択したことでアナウンスは続いていく。幻聴とは思えない…まるで隣から声が聞こえてるかのようにリアルだ。周囲は誰も反応してないけど。
《綿の心臓とボタンの目…だったはず。目に入れても痛くないくらい可愛い》
ACTで"調べる"を選択したようで、Dummyの詳細の音声が聞こえる。
…にしても、アナウンスの声も戸惑っているようだけど、どう見ても綿とボタンでできているようには見えない。目なんか、本物をそっくりそのまま入れたんじゃないかってくらいだ。ガラス玉でもはめ込んだんだろうか。
《Dummyは今にも倒れそうだ》
「えっと、お元気ですか!」
「…」
Dummyは黙り込んでいる。
「きょ、今日はいい天気だね」
《あなたはDummyに話しかけた…ちぐはぐな会話だ》
会話が続いていない…Friskはちょっと落ち込んでいるように見えた。
落ち込むFriskとは対照的に背後でTorielさんが喜んでいる。話しかけたことを喜んでるんだよね…?Friskが落ち込んでるから喜んでるんじゃないよね?
《あなたは勝利した!0 XPと0 GOLDを得た》
「えっくすぴー?なんだろう、これ」
「!それは…あなたにはきっと関係ないことよ、ぼうや。さぁ次へ進みましょう」
TorielさんはEXPを知っている?でも教えたくないようだ。たしか、どれだけ相手を傷つけたかの数値だった気がする…あっているかはわからないけど、とりあえずFriskのEXPが増えないことを祈ろう。
急かすようにして部屋を出て行くTorielさんとそれにつれられ出て行くFrisk。私は1人、部屋に残っていた子供…Dummyと思わしき子供に話しかけていた。
『ねえ、Dummy…さん?』
性別も年齢もわからないのでさん付けでよんでみる。
ちなみに私がFriskに初めて会った時、男の子だと思って「くん」付けで対応したら女の子で平謝りした過去がある。本人は怒るどころか楽しそうに笑っていたが…ごめんねFrisk!あんなに可愛いのに間違えて!!私の目は節穴です。
「…」
『キミってモンスターじゃないの?』
「…」
無言だ。話す必要性を感じていないのだろうか。まあ、それでも勝手に続けさせてもらうけど。
『さっきFriskが"調べる"を使った時の話じゃ、綿とボタンでできたマネキンのはずなのに…どうみても人間だ。Torielさんだって、たしかヤギか何かのモンスターのはずなのに人間にしか見えない』
「!」
『できれば、理由を知っているなら教えて欲しいんだけど…』
「……」
『無理かな…?』
「……」
少し待ってみたが、教えてはくれないようだ。残念だけど2人を待たせると悪いのであまり追求する時間はない。部屋を出ようと歩きだすと、後ろから小さく声が聞こえた。
「…突然ニンゲンみたいになっただけ。何があったかなんてしらない」
Dummyだ。
振り返って見たもののこれ以上話す気は無いようで、そっぽを向いていた。
『突然、人間
もともとは違う姿だったということはわかる。果たしてそれが私の知る、ゲームでのモンスター姿だとは限らないけど。
でも、これの言い方だと、人間じゃないみたいだ。
「…」
返事はない。
私は次の部屋へ進んだ。
*人間にしか見えないDummyを振り返り、あなたは胸に疑問を抱いた。