*すみません どなたですか   作:

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2.遺跡の進み方

 

部屋を出てみると、人っ子一人いない。

 

『え、置いてかれた?私1人で遺跡を進めと?』

 

Torielさんは私を見捨てたの…?

妙に蛇行している白い模様に目を凝らして考え込んでいると、少々人間味の薄い少年が現れた。顔つきが…心なしかカエル似かも?

 

視界が黒く塗り替わり、独りでに私の足が止まる。

 

『なっ!?』

 

見回してみるが周囲には誰もいない…目の前にいる少年以外は一寸の先も見えない深い闇だ。

私の胸の前にはオレンジ色に光るハートが浮かんでいた。

 

「げこっげこっ」

 

『……もしかして、これ、戦闘中?』

 

Friskの戦闘時には流れていたアナウンスは流れてないし、相手の名前やコメントの書かれたボードも出て来ない。MERCYやFIGHTのコマンドもない。

真っ暗な空間で、私はたいして身動きの取れないままに少年と向かい合い…浮かぶ、オレンジ色に光るハートを眺めていた。

 

おそらくこれは…私のソウルだ。

 

ソウルはその名の通り魂、血の流れていない心臓のようなものだったはず。普段は肋骨や肉で守られているが外に出たらガードはない。つまり私は今、無防備にも心臓を晒している。

危険度はモンスターの体の脆さとあまり変わらないだろうが、魔法を使えるだけ相手の方が有利に思える。

その不利を覆すため、Friskの場合は"決意"が力の源になっているようだけど…オレンジ色のソウルは決意じゃない。

 

…なんだったっけ?

 

「げこげこ」

 

急かすような声がする…どうやら私が行動するまで相手も何もできないみたいだ。ていうか普通に少年の声で擬音語を言われると変な気分になる。なんでゲコゲコ言っているのだろう?

 

不思議パワーが働いているのか逃げることもできなかったので、とりあえず話しかけてみることにした。先にFriskが見逃(MERCY)しているだろうから私を見逃してもらえる可能性はあるし、そもそも武器がないので戦う選択肢はまだない。

 

『えーっと、こんにちは』

 

話しかけても少年は首を傾げるだけだった。

Floweyの"なかよしカプセル"よりも小さい白い粒が飛んでくる。

身動きの取れない私は避けれな…どうやらコマンドがなくても、自分で何かしらの行動を起こせば次の行動ができるようになるらしい。私は動けるようになっていた。

 

身体を捻り、自分のソウルを引っ掴んで粒を転がるように避けた。ソウルを掴んだ瞬間、ぞわりと奇妙な感覚が背筋を走る…ソウルはあまり強く掴まないほうがいいかも。

私に避けられた粒が暗闇の中に溶けていく。どうやら攻撃は終わったようだ。

 

『この攻撃、もしかしてFrog…なんだっけ?Froggy?違うな…あっ、Froggit?』

 

「げこっ!…ぷろギッと!」

 

明らかにさっきとは違う反応。見た目の雰囲気からFroggitかもしれないとは思ってたけど…よかった、名前は通じてるみたいだ…て言うか今普通に喋らなかった⁈

 

『私は、Risky。よろしくね』

 

自分を指差して名乗ってみる。ついでに手も差し伸べて。

 

「リスくィ?」

 

『リスキー』

 

「るすキー」

 

『…リズ』

 

「リす」

 

『リスキー』

 

「げこげこっ」

 

名前の発音は諦めることにした。というか相手が諦めた。

ちなみに差し出した手はガン無視。Froggitに握手の文化はないのか?

Froggitが、げこげこ言っている。よく聞くとアクセントに違いがあって、微妙に間延びしてる時もあるので、もしかしたらFroggit語のようなものかもしれない。出会って数分で意味を理解することはできなかったけど。

 

会話したのに攻撃がこないのでちらりと周囲を伺うと、いつの間にか周囲は暗闇から元の遺跡の景色に戻っていて、私の前にあったソウルも消え去っていた。

 

『MERCYできたんだ…』

 

「げこっ」

 

『…えっと、見逃してやるから先に行け的な?』

 

先に進む道を指差すFroggit。

ジェスチャーから推測して、別れを告げて針だらけの道に進もうとしてみたが、どうやら違ったらしい。

Froggitは私の手を引っ張り、針の道へと進んで行った。先導するFroggitの後に恐る恐る足を踏み出し、針が引っ込んだことに安堵する。正解のルートを教えてくれるみたいだ。

そのまま引っ張られて渡り切り…私はわざと間違えたルートの針をつついて見た。

 

『…硬い』

 

足で踏んでいたら危なかったかもしれないけど、つつくぶんには特に影響はなさそうだ。トラップでもあるかと思ったが、これなら木の枝かなにかで足場を確認しながら行けば問題はないかもしれない。手持ちに木の枝はないけど。

 

考え込んでいると突然Froggitに白い粒で攻撃された。全然痛くはないが驚いた。どうやらFroggitは私が針山をつついたことを怒っているようだ。

謝って先へ進む。

Froggitは針の道を引き返して行った。

 

え、着いて来てくれないの!?

 

「げこ」

 

Froggitは元いた場所からこっちを見ている。持ち場を離れるわけにはいかないようだ。

別れを惜しみつつ私は先へ進んだ。

 

 

◇◇◇◇

 

 

長い廊下が続いている。何もない廊下だ。

廊下の端まで行くと、一本だけ不自然に立つ柱の真横にFriskがいた。1人で。

 

「すぐに来るかと思って待ってたけど、遅すぎだよ!やっぱり置いて行って先に進んでおけばよかったかなー」

 

『なんてこった、私の親愛なる従妹がこんなに冷たい…!ところでTorielさんは?』

 

「ママならここで待っててって言って先に進んじゃった。何か用事があるみたい」

 

『…ママ?』

 

「あ、Toriがママって呼びたいって言ったらいいって言ってくれたの」

 

すごい軽いノリで従妹に新しいママが出来てました。

軽いな!

 

「なんかすごく嬉しそうだったよ」

 

『じゃあ私も呼んでみようかな!』

 

「うーん…喜ぶといいけど」

 

『それは暗に私が言っても喜ばないかもしれないと…?』

 

「よし、先に行こう!」

 

Friskはとてもいい笑顔で前を向いている。え、ちょ、Friskさん?

 

『否定して⁉︎ていうか待っててって言われたんじゃなかった?』

 

「いいのいいの、さぁ、行くぞー!」

 

いいのかそれで…お姉ちゃんちょっとキミの未来が不安だよ。

 

 

廊下の続く部屋を出ると、Torielさんから電話がかかってきた。

偶然渡された携帯が気になって弄ってたところだったので私が出ると…Torielさんが、もしかして部屋から出たりしてないわよねって…出ちゃったよ。勘が良いなぁ、実はカメラで監視してたりしないだろうか。

 

「あ、Froggitがいる。こんにちはー」

 

私が電話で対応している間にFriskがカエル似の…Froggitに話しかけていた。

 

『Friskは電話にでんわってか…』

 

電話の向こうでTorielさんがクスクス笑っている。ごめんなさい、寒いですよね!

くっ、私はこんなジョークを言うタイプだっただろうか…?

よく考えてみれば……ジョークは昔から割と好きだった。Friskを笑わせようと引き取った当初はダジャレの連発。懐かしい。どうやら私はジョークを言うタイプだった。

 

Froggitはやはり人間にみえる。今度のFroggitは先ほどの少年Froggitよりは年上そうだが…少年Froggitと背丈がほとんど変わらない。そう言う種族なのかな?

げこげこと言っている…ジェスチャー的には「ねぇねぇ」と話しかけている感じだ。

 

《ちょっと良いかな、人間さん》

 

今度はアナウンスキターーーーッ!

Friskと別れる前に流れた声とと同じ声だ!翻訳してくれているらしい、正直助かる。きっと今頃Friskの目には同じ内容の書かれたボードが見えていることだろう。相変わらず私には見えないが。

ところでこのアナウンス…さっきは聞こえなかったのに今は割と近くから聞こえるんだけど、どこから聞こえているんだろう?

 

ACTで特定の行動をとるか FIGHTで相手を弱らせたら、相手はそれ以上バトルをしたがらなくなるだろう。もしモンスターが戦いを望まなくなったら、どうか……MERCY、で停戦しておくれ》

 

「ACTって、さっき出て来た相手についての情報とか話せるやつだよね…FIGHTはまだ選んだことないなぁ」

 

『選ぶの?』

 

「ちょっと気になってるけど…まあ、できる限り話してみようかな」

 

『そっか』

 

皆殺しとか言わなくてホッとしたよ。

 

「ねぇ、さっきから何やってるの」

 

『スピーカーを探してる』

 

アナウンスがどこから聞こえるのか気になって仕方なくて…。

結局、Friskに怒られてスピーカーは見つからぬままに渋々やめた。Friskのいる方から聞こえるんだけどな。

 

《*戯けてカサカサと木の葉の上を通り あなたは決意で満たされた》

 

Friskが何を決意したかはわからないけど、私はFriskにバレないようにアナウンスの音源を見つけ出すことを決意したよ!

 

「セーブ、っと。よし、次はこっちの部屋に行ってみよう!」

 

お、アメの部屋だ。

 

《「おひとつどうぞ」とある。キャンディーをとる?》

 

「キャンディー!1個持って行こうっ」

 

Friskは歓喜に満ち溢れている。

 

『じゃあ私は2個もらおう』

 

「え、おひとつって書いてあるよ?」

 

『お1つだけ(・・)とは書いてないからね〜』

 

「屁理屈言わないで…って、取っちゃった!チョコレートもまだ残ってるのに…ずるい」

 

『Friskも取ったら?』

 

「おひとつって書いてあるから1つでいいもん」

 

今日も従妹が可愛い。

 

 

*嬉しそうな従妹をみて あなたは慈愛で満たされた。

 

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