あれから5年の歳月が流れ。
ネタバレの嵐と、クリアした方でないと分からない事も多いので、プレイ済みの方対象のSSです。
今から30年前、地球に悪魔が突如として現れた。
無限発電炉ヤマト、東京全てのエネルギーをまかなう、文字通り無限の電力を生み出す夢の様な設備。
だが運命の日、その夢の設備により世界は悪魔で溢れかえった。
本来はブラックホールを生み出す粒子加速器だったヤマトは、ワームホールを生み出し、悪魔の世界と地球とを繋げてしまったのだ。
そして悪魔により混乱に陥った人間の社会は、最悪の暴挙である核兵器の使用により崩壊した。
だが東京に落ちるはずだった1発の大陸間弾道ミサイル。
それは東京の守護神、大地霊マサカド公により防がれた。
マサカド公がその身を巨大な岩塊へと変じ、東京を覆う天蓋となったその身でミサイルを受け止めたのである。
東のミカド国はそのマサカド公の岩塊を大地として築き上げられた国だった。
そして如何なる作用か、東京の20年程の時間は、東のミカド国では約1500年という時を刻んでいた。
もはや自らのルーツも忘れてしまった彼らは、あの日、東京へと降り立った。
東のミカド国から来た1人のサムライにより、神の世界でもない、悪魔の世界でもない、人間の世界、かつての東京が生き返ったのである。
復活したマサカド公によって、東京の天蓋が外れ、25年ぶりに太陽の光が降り注いだ。
それはまさに希望の光だった。
青い海が、白い雲が、東京に蘇ったのだ。
あれから5年、東のミカド国から持ち込まれた豚等の家畜も、麦等の作物も順調に育っている。
悪魔の肉を喰らい、陽の光が差さない中で、僅かに取れる貧しい作物すら高級品だったかつての食糧事情は大幅に改善されていた。
東京が蘇り、人間の世界も蘇ろうとしているのだ。
今でも思い出す。
あの日、スカイタワーから見た東京の、夜天に輝く星のような光。
そして降り立った東京の、ひどく寂しげな光景を。
全てはここから始まったのだ。
「あれ、サムライくん。じゃなかったチャンピオンじゃない、こんなところで会えるとは思わなかったな。元気してた?」
この東京で出会った、ハンターのノゾミ。
共同して幾度も依頼をこなし、悪魔と戦ってきた女傑であり、ハンターとカメラの師匠だ。
今はブラックマリアとなった女神ダヌーから、彼女の眷属だったダーナ神族の妖精たちを託され、彼らの安住の地を作るために活動していたはずだ。
「何かね、天照様とか日本の神様が割と協力的でさ。妖精たちも昔、似たような事があったって、神武東征とかいう話で盛り上がっててね。結構気が合うみたいね」
妖精郷作りは順調のようだ。
それと思いがけない話を聞けた。
必殺の霊的国防兵器シリーズのオモイカネも、妖精郷作りに知恵を活用しているそうだ。
国防のために召喚された彼らは、東京の復興に力を貸してくれるというので自由行動をさせているが、まさかオモイカネが妖精郷作りに参加しているとは意外だった。
「あはははは! 結構ちゃっかりしてるけどね、さすが知恵の神様だ。妖精たちを日本の神様に取り込んじゃう気満々だよ」
力でも秩序でもない中庸を選んだ自分。
そして蘇ったかつての東京。
彼らも自分たちのように中庸と融和を選択したのかもしれないな。
他愛ない世間話をし、ノゾミと別れて、上野へと向かう。
あちこちで街々を復興するために人々が行き交い、活気に溢れている。
自分を見かけるとチャンピオン、チャンピオンと呼ばれ、少しむず痒い。
「やあチャンピオン、散歩かい? 今日はお日様が心地よいからね。生き返るような気がするよ」
上野駅前で子供たちの面倒を見ている男性だ。
お日様を見るのは間に合わないかもしれないと言っていたが、25年ぶりの太陽の光を見て、まだまだ死ねないと持ち直した。
「あー、ちゃんぴおんだー!!」
遊んでいた子供たちが一斉に自分に向かってくる。
子供というのは本当に元気だ。
「はは、流石にチャンピオンの人気には勝てないか」
子供たちと遊んでいたコウガサブロウが戯けた調子で笑っている。
子供好きのようで、復興作業の合間に護衛も兼ねてよくこうして子供たちと遊んでいる。
子供のうちから誇りと憂いってのをしっかり教えておかないとな、というのはコウガサブロウの言だ。
怖がられるかと思ったが、子供からの人気はかなり高い。
子守の男性は「ヒーローみたいな姿だからね」と言う。
ヒーローというのはよく分からないが東京の子供受けする姿なのだろう。
ヒーローといえばヤマトタケルも子供人気が高いのだが、力加減を間違えると怖いと言って子供にはあまり近づこうとせず、今は池袋の辺りで復興を手伝っていたはずだ。
子供たちと軽く遊んだ後、市ヶ谷を抜け新宿へと向かう。
かつてはケルピーたちに橋になってもらい、霞ヶ関北の川から船を使って、さらに毒の沼地を越えていかなければならなかったが、復興も進み今は徒歩でいけるようになった。
市ヶ谷ではミチザネが無限発電炉ヤマトの警備に付いている。
後で知ったのだが、学問の神にして雷の神という凄い悪魔だったようだ。
たまにテンカイと交代して人々に学問を教えているそうだ。
東のミカド国の修道院たちも、魔法の遺物、いや科学に関して教えを請うているそうだ。
様子を見に行ったらヤマトの前でミチザネとテンカイが、碁と呼ばれる遊戯をしているシュールな光景が目に入ってきた。
見なかったことにして新宿へと向かう。
新宿駅ではサムライ衆とハンターたちが集まっていた。
「貴様か・・・吉祥寺の方で悪魔による被害が出たと聞いてな。今から出立するところだ、こちらの方は頼むぞ」
「ホープさん! こっちの準備はOKですよ」
「分かった、では行くぞ」
東のミカド国のサムライ頭だったホープ。
かつてと同じように東京でも治安維持に悪魔討伐にと東奔西走している。
厳しいながら人情身があり実直な人柄に、今ではサムライ衆だけでなく東京のハンター達からの信頼も厚く、皆から慕われている。
「ホープ様、お気を付けて下さいね」
「う、うむ」
東のミカド国の支配階級だったラグジュアリーズ出身の女性が、ホープの身を案じ声をかけていた。
以前からホープに懸想していた彼女は、東京に降りた後、その想いを告げたようで、その猛攻に歳の差を気にしたホープも、最近では態度が軟化しつつあるようだ。
ホープ達を見送った後、喫茶フロリダへ足を運ぶ。
ドアベルの音が響くと同時に、店内の視線が入り口に集まってくる。
フジワラ、ツギハギ、そしてウーゴにKといったいつもの面子だ。
「やあ、君か。ちょうどいいところに来たね」
「これも神のお導きというものでしょうかね」
結局ウーゴのこの常套句は直ることがなかった。
「今年の新作ワインが出来てな。今から試飲会と洒落込むところだ」
「ちゃんぴおん様も今日はゆっくりできるだろう、ツマミもできたとこだ食べてきな」
最初のワインは酷く渋いものだった。
だがその渋さは何故か希望の味に満ちているように感じたものだ。
そして年々、味が向上していくワインは復興の象徴そのもののようにも思える。
「ほう、今年のはなかなかだな」
「いやぁ、まだまだロマネには及びませんねぇ」
「そりゃあそうさ、世界中で愛好家がいた垂涎の逸品だからね。簡単にはいかないさ」
「そろそろ早飲みのワインではなく、熟成させるワインにも挑戦してみましょうかね」
「俺としちゃ日本酒が恋しいとこだがな」
「水田の方は今のところ順調なようですからね、何年かすればお酒に回せるだけの余裕もできるでしょう」
こうしてみんなで集まって、色んな話をする。
お酒の話、東京の話、科学の話、外の世界、この星の歴史。
フランスという国が本当にあった国だと聞いた時、イザボーは驚いていたっけ。
フロリダで一時を過ごし、酔い覚ましも兼ねて散歩に出る。
新宿御苑では畑仕事をする、かつての東のミカド国の人たちと、東京の人たちが見える。
今ではすっかり打ち解けた間柄だ。
散歩を続けていると、不意に名前を呼ばれた気がした。
「なんだそんなとこにいたのか? おーい、こっちへこいよ」
懐かしい声がする。
「やぁ来てくれたんだね」
懐かしい2人が。
「よぉ、久しぶり。そっちの調子はどうだ?」
ワルター・・・・・・
「東京と東のミカド国の民が一つになったそうだね。難しいと思っていたけれど、何とかなるものなんだね」
ヨナタン・・・・・・
「ま、取り敢えずパンでも食おうぜ、パン屋の親父の新作だ。ちょっと待てよ、今飲み物を」
だがそんなワルターをよそに、ヨナタンがパンを頬張り始める。
「あー!! 待てといったはずだぞヨナタン!!」
「早い者勝ちさワルター」
張り合ってワルターもパンをかき込み始める。
自分も2人に倣ってパンを口に運んでいく。
「甘いパンってのもイケるもんだな」
「菓子パン、というらしい。昔は東京でよく食べられていたそうだ」
「こういうのが食べられるなら、平和と平等ってのも悪くないのかもな」
ミカド湖の湖畔で、みんなでパンを食べた時のことを思い出す。
そんなことを考えていたら、パンを喉につまらせてしまった。
慌てて、コーヒーで流しこむ。
「ふふ、パンの活きが良かったかな?」
それを聞いて、吹き出すワルター。
「ははははは! そうだな活きが良いパンだな!!」
3人でひとしきり笑ったあと、色々なことを話した。
「お前、イザボーと付き合ってんの!?」
「いや、僕はなんとなくそうなる気がしてたな」
「へー、むっつりはそういうとこよく見てるもんだな」
「だ、誰がむっつりだ!!」
「しっかし、あのイザボーがな」
イザボーはちゃんと可愛いところがたくさんある、そう言うと苦笑された。
「惚気けるねえ」
「ごちそうさま」
・・・・・・何を言ってるんだ自分は。
冷静になると、途端に恥ずかしくなった。
冷静に・・・・・・そうだ、冷静に考えれば、俺は、俺は。
「・・・・・・君、別に思い悩むことなどないんだよ」
「へへ、イザボーに倣って、俺も東京で漫画ってのをちょっと読んだんだけどよ、それにこう書いてあったんだ。誰に強いられずとも自分の生きるわけは自分で決める、そして夢を阻む者は全身全霊をかけて立ち向かう対等な存在、それが友・・・・・・だったかな? だいたいそんな感じのこと言ってたぜ」
「そうだな、僕もワルターも君も、別に憎みあっていたわけじゃない。ただ自分で行くべき道を決めて、それを信じて行動し貫き通した」
「そして全力でぶつかり合った。俺達は対等なダチだったってことさ」
だけど、だけど、俺はお前たちを。
「君はかつての安寧を取り戻したんだ、何も悲観することなどないさ」
「力あるものが望むだけ変えられる、お前は東京をかつての東京に変えたんだ」
2人の姿が白い闇の中に薄らいでいく。
待ってくれ、俺は、俺はまだ、話したいことがたくさんあるんだ。
「名残惜しいけど、時間切れさ」
「ほら、お前を呼んでる声が聞えるだろ。なーに、またどこかで会えることもあるさ」
呼んでいる声?
ああ、そうだ、この声は・・・・・・
「ねえ、起きて。あなた、起きて」
気付けば目の前にイザボーがいた。
自分は、眠っていたのか?
「なんでこんなところで寝ていたの?」
辺りを見回せば、そこは悪魔討伐隊基地だった。
砂漠の東京、爆炎の東京、あの時のように目覚めればここだった。
だけど、もうワルターもヨナタンもいないのだ。
「たまの散歩もいいけど、まだ人を襲う悪魔がいなくなったわけじゃないんだから気を付けないと。それで、その、泣いていたようだけど、悪い夢でも見たの?」
「悪い夢?・・・・・・いや、いい夢だったよ」
衝動的に書き殴ったので、ちょっと地の文が少なくおざなりですが。
本当は夢のなかにイサカルさんやアキラさん達の事も登場させたかったのですが、どうもキャラが動いてくれませんでした。
メガテンSSはもう1本、書く予定があります。