「僕の
悲痛の叫びもむなしく、船は下水道へ繋がる穴に落ちてしまった。
ジョージは穴を覗くが、とても暗くて入れそうもない。
(明日も憂鬱だ…)
だがしかし、しょうがないとジョージが諦めてその場を去ろうと立ち上がったとき。
「はい、調子良い?」
特徴的な声が聞こえてきたのだ。ジョージは思わず振り返る。
振り返ると、ついさっきまで何も居なかったはずの下水道の穴から、ぬるりとピエロが顔を出した。
ピエロの名前はペニーワイズだ。
ペニーワイズはおかしなヤツだ。
いつもこうやって変な場所から急に現れては、ジョージにやたらと何かをオススメしてくる。
そしてジョージは毎回オススメに釣られてしまい、毎回精神が死んでしまう。
だからジョージにとってはとっても恐ろしいピエロなのである。
毎回釣られるジョージもどうかと思うが。
下水道から現れたペニーワイズは気さくに尋ねた。
「やぁ、また会ったね。元気かい?」
ジョージは首を横に振って答えた。
それを見たペニーワイズは『それはとても残念だ』とでも言いたげな顔をした。
「えーっ、それはお気の毒に。それじゃあ元気の出る
そうやって取り出したのは
ジョージは日々の疲れた体に一杯と、おもわずそれに釣られて手を伸ばすが、思いとどまる。
思い出されるのは過去の自分。
(
ジョージは手を引っ込めて、しかめっ面の顔になる。
「そう言って実はASMRはヤバイ沼で引きずり込む気なんやろ。騙されんぞ」
「いや、ヤバくなんかないよ。ASMRは日々の生活で疲れた体と心に凄く効くんだ。例えば布が擦れる音、雨の音、焚き火の音みたいなね。気持ちのいい音を聞くだけだから安心、まさに癒しの音なんだぜ。今の君はぴったりだろ?」
「へぇ、興味深いね!」
ジョージの騙されないと言う発言に心外だと、ペニーワイズは巧みな話術でASMRの良いところをオススメする。
だがジョージは流されない。
「音MAD見てくるわ」 「待てやッ?!!?」
皮肉の笑顔で答えてそのまま帰ろうとするジョージ。
ジョージを引き留めようと焦って声を荒げるペニーワイズ。
これ以上はマズイと感じたペニーワイズは、ついに禁断の切り札を使うことにした。
「それじゃあいいのかな…コレは…?」
それを見たジョージは驚いた。
「僕の
そう。取り出したのはジョージが先ほど下水道に落とした船。
どうやら船を拾ってくれたようだが、それを持ったままペニーワイズはニヤニヤと語りかけてくる。
「その通り!ASMRを聴けばコレも…戻ってくるぞ」
ペニーワイズは返す気がさらさらないようだ。
ジョージにASMRを聴かせる為だけに船を奪うとは、なんてピエロなのだ。
「………」
「おーぅ……そんなに嫌な顔する必要はないだろ」
そんな事を考えていたジョージは、まさに嫌そうな顔をしていた。
ペニーワイズの必死さが伝わってくるのだ。
「うわっ、マジで疑ってる顔だね。だがヤバイ沼かどうかで言ったら音MADの方もヤバいと思うぜ?」
「それにだ…ASMRも同じ音だろ?ここは一つ、騙されたと思って聴いてみようぜ」
確かに言われてみるとそうだ。
「ヤバい沼だったりしない?」
「えっ、うん」
ペニーワイズは焦っていたせいでぎこちない生返事をしてしまった。
だがジョージはペニーワイズの子供に言い聞かせるような誘いの言葉に手が伸びてしまう。
「……ASMRはいいぞ、ジョージ。快適な睡眠もお手の物だ」
「ホントに凄く良いからな…ジョージ」
「だからお前も…」
「ASMRの沼にハマるんだよ!」
「KYAAAAAAAAA!!!!!!」
ジョージは死んだ。
イヤホンがスマホから外れた拍子にASMRの耳舐め音が大音量で親に聞かれてしまったのだ。
ASMRの中には内容がアレでとてもR18未満の人には聞かせられないようなモノもある。
だからASMRを聴くときは周りに人がいないリラックスできる場所で聴こう。
まあ言うて私のオススメは耳舐めや息の吹きかけみたいなゾクゾクするヤツだけど、中毒性が高いからほどほどにね。
でないと私みたいに手放せ無くなるよ。
これ好き。