それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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自覚できたなら後は歩く


届けたい想い

S09地区にあるとある廃墟の街、そこで彼女達【第5部隊】は警戒任務に携わっていた、警戒とは銘打っているが緊迫した状況でも何でも無く、ただ単にこの地に鉄血が流れてこないか、もしくは軍勢を率いて再制圧をしてこないかの監視、隊長であるスプリングフィールドと【ドラグノフ狙撃銃】がそれぞれの位置で警戒し、M16、PPK、IDWの三人は正直暇を持て余している

 

そんな、特に変わりのない任務に勤しむ12月がまだ始まったばかりという今日、だが気温は急激に下がっていき気温調整がされる彼女達ですらつい手をこすり寒さを耐え忍ぶ場面が見られる

 

「……寒いにゃ」

 

「そう、ですわね。戦闘中や移動中ならまだしもこうしてじっとしていると特に寒くなりますわね」

 

「らしいっちゃ、らしい気温だがな。まぁ下がるにしてももう少し穏やかに下がってもらいたかったが」

 

暇組がそれぞれ好きに言い合う、それくらいに今日の任務は暇なのだ、そしてそれは監視を担っているライフル組も同じであり、彼女達も通信で三人の会話に参加を始める

 

《此処数日で急にですからね、指揮官やカリーナが風邪を引かないかと少し不安になります》

 

《まぁ指揮官もカリーナも妙に丈夫だし引きそうにないけどな、だがこの寒さじゃ指揮官はアーミーコートだけじゃ外出るのは辛くなりそうだな》

 

ドラグノフの言葉にあ~と全員が納得する、ただでさえ外に出るのを好まない彼女ならばこの寒さとなれば更に出ないだろう、無論、本部に呼ばれたとかなら渋々と行動を起こすことはするだろうが

 

またドラグノフはふと思った、そう言えば指揮官はマフラーとかを持っているのかと。最近、カリーナと出掛け色々買ってはいたが防寒対策になりうる物があったかまでは知らない。彼女のことだから購入しているとは思うが絶対ではないので、ならばと思い立つ

 

《仕方ないな、指揮官にマフラーとか編んでみるか》

 

「編む、ですか?」

 

(食いつきが早すぎるにゃ)

 

(まぁまぁ、いいじゃないの。積極的な娘はいいと思うよ私は)

 

うわぁ、女誑しっぽい事言ってるにゃとIDWがジトッとした視線をM16に送れば、彼女は彼女で何だよ悪いかよと笑みを浮かべながらIDWの額を指で突……こうとした時、指を掴まれIDWがにやりと笑う

 

そうして始まった二人の暇つぶしバトルをBGMにPPKはドラグノフから話を聞いていた

 

《そう、毛糸でマフラーとか手袋とかの防寒具を編んでやるのさ。私達でこの寒さならやっぱり人間である指揮官やカリーナには辛いものがあるだろうしな》

 

《確かにそうですね。それに今後も下がっていくと考えれば備えておいても損にはならないでしょうし》

 

「なるほど、確かにそうですわね……あ、あのドラグノフ」

 

《教えてくれ、だろ?いいよ、任務から帰ってきたら早速教えてやるよ。ふふ、愛されてるねぇ指揮官》

 

愛されてる、その一言で顔を急激に赤くしなななな、何をと慌てふためくPPKにじゃれ合っていた二人も手を止め、互いにニヤリと笑ってから

 

「いいね~、愛しの指揮官にプレゼント、最高じゃないか」

 

「PPKも最近は中々に積極的になってきて嬉しい限りにゃ」

 

「お二人とも!!!」

 

《あらあら、見えなくても三人の様子がよくわかりますね》

 

スプリングフィールドの呆れとも取れる声に反応する余裕もなく顔を真っ赤にし茶化す二人に叫ぶも当の二人は酔っ払いかと思わんばかりに笑うだけである、無駄だとわかったPPKはもうとふくれっ面で二人に背を向けてそれから考える

 

(指揮官、もしこの想いを告げたら、貴女はどんな反応をしますか、困りますか?それとも照れてくれますか?あたくしは出来れば笑って……笑って)

 

我儘かもしれませんが受け入れてほしいですわ。着実に彼女の指揮官への想いは膨らみ、ギュッと右手で胸を握りしめるほどに抑えられなくなりつつあった

 

尚、その乙女な顔と行動に後ろの野次馬二人も流石に茶化せず

 

「思ったより症状が進んでたにゃ」

 

「だがまぁ、実る気がするがな、勘、だけど」

 

「おぉう、AR小隊の勘とかシャレにならない的中率にゃ」

 

この日の任務はそのまま何事のなく終了して、部隊は帰投、今は休憩室にてPPKは約束通りにドラグノフから編み物を習っていた

 

ドラグノフの編み物はこの司令部に来てからだったが休日等でよくやっておりマフラーに手袋は勿論、ぬいぐるみ等も作ったりと一部戦術人形からは好評である、そんな彼女からPPKは教わりながら慣れないことに悪戦苦闘しつつ奮闘しているとドラグノフから質問が来る

 

「なぁPPK、作るのはマフラーだけでいいのかい?」

 

「え、と言いますと?」

 

「折角なんだからペアルックな感じで手袋とマフラー二つ編んでみないかい?あんたは筋がいいし増やしてもクリスマスまでには余裕で間に合うよ?」

 

「ぺ、ペアルック!?い、いえ、あたくしと指揮官はまだそんな仲では」

 

おうおう顔赤くして可愛い反応することだと思いつつも、何時までも一歩が踏み出せない彼女の背中を押すつもりで

 

「だがな、あんまり奥手だと誰かに取られるかもしれないよ、指揮官だって恋って感情を知らないわけじゃないと思うし、もしかしたら他の戦術人形がそんな感情を持って、しかもあんたよりもグイグイ行く感じだったらどうなるか分からないしさ」

 

「っ!?あ、あたくしは指揮官が幸せに笑えるのであれば……あ、あれ?」

 

少し前だったら『それでいい』、と出せたであろうその言葉、それが今は出てこなかった。いや、出したくなかった、認めたくなかった、諦めたくないと最近の彼女にはそんな感情が生まれていた

 

PPKの反応にだろ?とドラグノフは彼女に近付きポンっと胸を叩く、それから

 

「もうあんたの中じゃ、指揮官の隣は自分だってのが生まれてるんだ、それを無視できるのかい?」

 

「……出来ませんわ、出来るわけありませんわ」

 

「ふふ、その意気だ、でどうするんだい?」

 

彼女の迷いの消えた瞳に満足そうに笑ってから先程の質問を再度投げかける、そして返ってきた答えにドラグノフは

 

「ああ、任せな、あんたが完璧に納得できる出来を作れるように私が指導してやるよ」

 

こうして更に熱が入った編み物教室が始まった休憩室前、一つの影がしゃがみ込みながら

 

「~~~~!!???」

 

胸に小さく芽を出したその感情に戸惑い、顔を赤くしていた




PPKちゃんをメインに添えるたびにヒロインムーブ始めるし、12月に入ったからって全力でポイントを稼ぎに来たから作者遂に折れる

まぁ、ほら、リアル司令部でも彼女と誓約したんでね、この作品でもそういうことよ……やはりBGMを『君にふれて』にしてるとやべぇな

え、最後の?誰やろなぁ

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