それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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補助輪、保護者あり


エンジョイ、サイクリング

基地、屋上、徹底的に雪かきが行われ地面が見えているその場所は現在、妙な緊張感に包まれていた

 

その場にいるのはいつもの表情のG36とM1895、ハラハラしているがどうすればいいのかと迷っているPPK、それを見て落ち着けにゃと伝えるIDW、そして

 

膝当て、肘当て、ヘルメットとフル装備の漸くPPSh-41から右手のほぼ完治を告げられた指揮官、彼女が跨っているのは磨かれたシルバーのフレーム、空気圧バッチリの前後に付いてるタイヤ、当初は破損していたが修理され彼女の足に合わせられたペダルと同じく彼女に合わせ作り直されたサドル、そうご存知自転車である

 

因みにフレームの側面、そこには私が修理、点検、整備を完ぺきにこなしましたという印のP38マークのシールが張られている、いつの間にかそんな物を作っていたらしい。此処までならば保護者二人のGOサインは出ない、なのでこの自転車にはもう一つパーツが追加されている。それは後輪の側面、両サイドに小さな車輪が装着されている、まぁ言ってしまえば補助輪である。これは92式が発掘しP38が修理したものである、またお前か

 

という訳で彼女は今、人生で初の自転車に挑戦しようとしているのだが、何故か彼女の顔は少々不満げだった、何かが違うと告げている

 

「ねぇ、G36」

 

「はい、何でしょうかお嬢様」

 

「……これ自転車だよね」

 

「自転車ですが、如何なされましたか?」

 

彼女の不満に気付く素振りを見せないG36に頬を膨らます指揮官、それからじっと補助輪を見つめる、それから再度G36の方を見て

 

「これ、必要なの?」

 

「無ければ怪我をする可能性が跳ね上がります故、ご理解下さい」

 

「でも街の人はこれついてないよ」

 

「それは練習を重ね、自在に操縦できるからでございます」

 

正論である、それは理解できた、出来たがむぅと不満を顔に表してしまう、自分だってあれくらい出来るかもしれないじゃんといういつもの根拠のない自信である。なのでM1895の視線を向ければ返ってきたのは何言ってるのじゃお主と言う視線と

 

「外す訳なかろう、それとも何か?治った右手をフイにしたいのかお主は?」

 

「あ~、指揮官、頼むから今回と言うか完璧に乗れるまで出来るだけ補助輪の装着はお願いするにゃ」

 

来たのはIDW、頭を掻きながらそう告げ、それからじゃないとあいつが居ても立っても居られない感じで見てられないのにゃと視線を送り、指揮官も釣られ見てみれば

 

本当に大丈夫なのか、補助輪があっても倒れるのではないか、そもそも自転車に乗る必要があるのかと言葉にしなくても分かるほどにアワアワしているPPKの姿、これで補助輪を外したとかなった時にはいの一番に中止を言い渡しそうな勢いまであるそれに流石の彼女も強くは出れない、M1895達もそうだがPPKを心配させたくて乗ってるわけではないのだから

 

「それに、クリスマス前に怪我するのは良くないにゃ、指揮官だって怪我した状態でクリスマスやらその後のイベントを過ごしたくは無いだろうにゃ?」

 

「た、確かに……うん、ごめん、今回はこれで我慢するよ」

 

「まぁ我慢も何もド素人指揮官が補助輪無しで漕いだら少しも進めずに転けるのがオチにゃ」

 

にゃっはっはと笑うIDWに何時か絶対に見返してやると闘志を燃やした指揮官だがPPKやM1895、G36の心配も分かるので大人しくしていることに

 

一方、先程の位置まで下がったIDWにM1895が感心したように声を掛ける

 

「すまぬな、どうにも最近わしらの言葉には反論が多くなってのう」

 

「それはあれにゃ、反抗期にゃ、そういう時は別の何かを引き合いに出すと手早いにゃ」

 

「なるほど、勉強になる」

 

「だ、大丈夫ですのよね、あれが付いていれば転けはしないのですよね」

 

「口調が安定しないほど心配で仕方ないのなら喋らないで大人しくしているにゃ」

 

ではでは行くよ~と掛け声が屋上に響く、見ればG36が同伴で指揮官が漕ぎ出してノロノロと進み出していた、なのだが先程までの余裕というか私なら出来るでしょという表情がそこにはなく、何故か若干の恐怖が混じっていた

 

と言うのもいざ漕いでみたら急に怖くなったのだ、得も言われぬこの感覚、歩くとも走るとも違う移動の感覚に動かしてはいるのだが恐怖してしまっている

 

「お嬢様?ご無理はなさらないほうが」

 

「もう少し、慣れれば多分大丈夫だから」

 

同伴していたG36も心配になるほどの顔なのだが指揮官はきっとこれは慣れてないからだなと判断、それに車とかこんな感じだったなと思い出せば幾分かの恐怖は和らぐ、そうなればペダルを漕ぐ足にも力が入り、自転車の速度が上がった

 

補助輪ありとは言え、少しは速度が乗れば風を感じる、季節相応のひんやりとした風が頬を撫でれば何が面白かったのかへへへと笑みが溢れる

 

「たーのしー」

 

「大変にゃ、指揮官のIQが著しく低下してるにゃ」

 

「え、自転車にはそんな作用が!?」

 

「あ、いや、すまん、冗談にゃ」

 

心配が行き過ぎて思考が暴走してるPPKの言葉と気迫にIDWが怯む、恋する乙女強すぎるにゃ、それが彼女が素直に思ったことだった

 

「ええい、冷静にならぬか、G36が側に居るし万が一があれば即座にペーシャが駆けつけられるようにしてある、あやつを大事に思ってくるのはよいが行き過ぎは良くないのじゃ」

 

「うう、そうですわね……ふぅ、もう大丈夫ですわ」

 

(目が大丈夫じゃないって伝えたら振り出しに戻るのかにゃ)

 

そんな三人の気持ちを知らぬ指揮官はその後も屋上を何周も周り、そして出た一言が

 

「何時か補助輪無しで自在に動かしてみたいよね!」

 

「副官、何年かかるか賭けてみるにゃ」

 

「呵々、流石に年単位ではないじゃろうて、数カ月は必要じゃ」

 

「れ、練習する際は絶対に、絶対にあたくし等に声を掛けて下さいまし!?」

 

「PPK、心配せずとも自転車を乗る際は私に声を掛けなければ出しませんのでご安心を」

 

今日も基地は平和です




指揮官がなにか初めてをするたびに騒ぎになるなこの基地

正月スキンが完璧に殺しにかかってる不具合、あんなんガチャりたくなるんだよなぁ……

あ、今日はドッタンバッタンは更新無いです。流石にお仕事がある日の二本更新は辛いのじゃ

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