それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ちょっと想いを吐き出すには丁度いい


お酒は言葉を滑らせる

その日、G36は珍しくBARのカウンター席で一人呑んでいた、その顔はどことなく寂しげであり、何時もの凛々しい感じとは程遠いもので同じくBARに居る他の戦術人形達も声をかけることも出来ずに見ている。

 

カランとグラスの氷が転がる音が響く、それを聞いた彼女ははぁと一つ溜息をついてからグラスのお酒を飲み切り、マスターに

 

「もう一杯、貰えるかしら」

 

「畏まりました、それにしてもどうしたのですかG36、貴女がこんなに呑むなんて」

 

「……そういう日もあるだけです」

 

そうですかとそれ以上は聞かずに先ほどと同じ物を注ぐ、それをまた彼女は一口飲み、肘を付き手に顎を乗せてまた軽く息を吐く

 

お酒が入ったからなのか、それとも指揮官と何かあったのか、珍しく仕事で失敗でもしたのか?等など憶測がBARを飛び交うが本人に聞けないので真相がわからない、いい加減誰か相談に乗ってみるべきではと言う考えがよぎるがあの状況のG36の相談に乗れるやつって誰よとなり、結局誰も行かない。

 

その状況を打破したのはカランカランと入店してきた【OTs-14】彼女は入って早々に何時もと雰囲気が全く違うG36を見つけそれから店内を見れば行くべきかどうかで議論を交わす仲間たち、何が起きているのかを大体理解した彼女は特に迷いなくG36の側まで行き

 

「隣、いいかしら?」

 

「え、ああ、どうぞ」

 

「ありがと、マスター、ウォッカを」

 

注文を済ませたグローザはG36の隣に座る、一方彼女は誰か座ったからと言って何かが変わるわけもなくさっきと同じような顔と目でグラスを見つめながらチョビチョビと呑んでいる。

 

そのあまりにらしくもないG36にグローザはウォッカを呑みながら

 

「で、何があれば貴女がそんな顔してBARで呑むような事態になるのよ」

 

(ちゅ、躊躇なく切り込んだ!?)

 

騒然とする仲間たち、だがそれを声に出すことはしない、彼女達だって気になっているので変に話の腰を折ったら意味がないと思っているからだ。

 

だが聞き耳は立てる、それはもう全力で立てる、そしてG36がゆっくりと口を開けば場は更に驚愕に包まれた

 

「私、どうやらお嬢様が好きだったみたい」

 

「へぇ……え?」

 

(え?!)

 

BARに居たG36とスプリングフィールドを除く全員の気持ちが今一つになった、マジかよという声が漏れたのも仕方のないことだろう。

 

だがグローザ、即座に意識を戻して冷静に事を処理してから、落ち着かせるために一口飲んで

 

「でもPPKの背中を押したのは貴女だって聞いたけど?」

 

「はい、言ってしまえば自分のこれが家族愛の方か、一人の女性としてなのかが判断付かず、この微妙な感情に踏ん切りを付けたいが為に彼女の背中を押したのです」

 

「それで晴れてクリスマスに結ばれたわけだけど、今の貴女を見るに踏ん切りが着いたようには見えないのだけど?」

 

自分でも容赦ないし意地悪よねこれと思いつつも聞いてあげないと明日にも影響出そうだと思ったグローザの言葉に、話したことで少し気が楽になったのか幾分か軽くなった声でそうなんですよねと漏らしてから

 

「それを聞いて、祝福もありましたが後悔、と言いますか、ちょっと悔しいなんて思ってしまったのですよ」

 

「ふふ、なるほどね。ん?でも貴女いつだったか指揮官の事は娘で妹のようなものだって言ってなかったかしら?」

 

「言いましたよ、そしてそれも正しいです。メイドとしての私はお嬢様をそう見てます、ですが個人としての私はお嬢様を一人の特別な女性として見てた、そういうことです」

 

そこまで言ってからグイッと飲み干し、再度おかわりを要求、グローザも釣られるように残っていた分を呑み同じようにおかわりを要求、にしても今夜は妙に饒舌ねなどと思いG36を見れば酔いが回っているらしく顔が赤らみ始めていた。

 

彼女は元々強い方の人形であり、酔うなんて珍しいと思いスプリングフィールドに何杯目なのかと聞いてみれば

 

「今入れたので10ですね、余程思いつめていたようですよ」

 

「あらあら、それにしても恋ねぇ、私は経験がないから何とも言えないのよね……」

 

「恋ですか~?いいですよ~わたしがしてあげますよ~」

 

今の今まで静かだった外野組の一人、PPSh-41がG36以上に顔を真っ赤にして絡んでくる、明らかに酔っているそれに思わず苦笑を浮かべるグローザ

 

「医者がそんなに飲んで良いのかしらね……ほら、酔ってるなら座りなさいよ」

 

「酔ってないで~す」

 

「それで、ペーシャ、貴女の話はなんですか?」

 

酔っぱらいの常套句を口にしながらカウンター席に座ったPPSh-41にG36が聞けば、グラスを差し出される、どうやら奢れとのことなので彼女はスプリングフィールドに目で頼めば陽気に笑いながら

 

「わたしも、恋をしたことあるんですよ~、まぁ実る余地のない恋でしたけど~」

 

「初耳ね、その口ぶりからすると指揮官じゃないわね、誰なのかしら?」

 

「ここに来る前にお世話になってた病院のドクターでっす、わたしに色々教えてくれてそれで惚れちゃったんですよ~」

 

まさかのネタ提供にFMG-9のペンが走る、他の面々も気になるので黙って続きを待つ、注目されていることに気付いてないPPSh-41はグイッと呑んでから

 

「でも……でもぉグスッ、ドクター妻帯者だったんですよぉぉぉぉ!!ひぐっえぐっ、それにわたしのことは娘みたいにしかみてなかったし~」

 

吐き出すように叫び、最後には泣き出した、場の空気がかなり和らぎ何故かその後は仲間たちの中で誰か恋バナ持ってないのかという話題で盛り上がる。

 

それを聞き流しつつ、グローザはG36に今はどうなのかしらと聞けば

 

「そうですね、スッキリしました。もう大丈夫ですよ、まぁ元より私はお嬢様のメイド、これからも仕えるだけでございます」

 

「ならいいわ、でもまぁ、また溜め込んだら聞いてあげるわ。好きなのよ、こういった事を聞いてあげるの」

 

意外と良い酒の肴になるのよ?と笑みを浮かべる彼女に結構いい趣味してますねと思いつつ今日の最後に呑んだのはマルガリータ、それを軽く眺めゆっくりと口を付けた




尚、記事は無事、PPSh-41に検問され記事にはならなかった模様

年の終わりに何こんな話書いてんだオメェ?(グルグル目

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