それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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年変わるって言われてもそっか、としか反応できない指揮官の図


大晦日

12月31日、今年の終わりであり一〇〇式達、日本組は大晦日と呼んでいるその日、やはり祭り好きな彼女達が何もしないわけもなく食堂やらカフェやらでそれぞれ各々に盛り上がりを見せていた

 

まぁかと言って何か特別なことをしているわけでは無く、指揮官も業務をせっせと終わらせ盛り上がってる場所に顔を出して楽しみ、現在は食堂にて一〇〇式達が用意した蕎麦を啜りつつ一〇〇式の解説を聞いていた

 

「これは年越しそばと言いまして、色々ありますが語ると確実に伸びてしまいますので手短に言えば、今年一年の災厄を断ち切る、それにつきます。特にこの司令部では主に指揮官にそういった事が多々あったので是非とも断ち切ってくださいね」

 

「それに蕎麦は細く長いことから延命・長寿を願った、とも言われているわ」

 

「ほう、どれも此奴には必要なことじゃのう、美味いか?」

 

「(チュルチュル、ゴクン)うん!」

 

「ああ、指揮官、口が汚れてますわよ」

 

続けて64式自の解説にM1895がそう反応して美味しそうに食べる指揮官にそう聞けば返ってきたのは輝かしい笑顔の肯定、その隣で甲斐甲斐しく指揮官の口を拭くのはPPK、そして更に隣には

 

「ぐぬぬ、あっ!!むぅ……」

 

「フォーク持ってこようか、P7」

 

「いらないわ、おかんっん!指揮官が出来て私ができない理由はないんだから」

 

「私ってどんな基準?」

 

P7が慣れない箸で食べようと悪戦苦闘していた、因みにだが指揮官は普通に扱える、最初こそは箸も、蕎麦を啜るということも出来なかったが数分と要らずに出来るようになった。

 

この習得速度には教えていた一〇〇式も驚いた、今では豆だって箸でスイスイと運べるくらいには上達している。

 

なので指揮官が出来たからと言うのは少々当てにならない、寧ろ直ぐにできなくて当然なのだから、しかしP7は戦術人形としての己がそれを許さないのでめげずに挑戦を続ける。

 

それを見ながら微笑む指揮官は一〇〇式と64式自が自分たちも年越しそばを食べに行ったのを確認してから食堂を見渡せば皆が楽しげに笑い、新たな年を迎えようと盛り上がっている、少し前まではこんな光景を想像できないくらいに人数も少なく、基地もそこまで大きくなかったのにねと着任当初を思い出すように目を細める

 

「なんだか、色々ありすぎてあっという間だったねぇ」

 

「そうさな、ほんの少し前まではこんな季節ごとの祭りをすることもなかったというのに、今では恒例行事じゃ」

 

「でも、お蔭で毎日が楽しいし頑張ろうって思えるよ」

 

むぅと遂に頬を膨らまし始めたP7の頭を撫でながら呟く、元々は戦力強化の一環で戦場に放棄、或いは動けなくなっていた彼女達を保護したり、本部から打診されたのを積極的に迎えたりしていたのが気付けば家族を迎えるような感覚で増えていった仲間たち、誰一人欠けてもならない存在。

 

そんな彼女達が笑い、楽しみ、幸せそうにしているからこそ指揮官も頑張ろうと努力を積み貸せねていた、それが少し行き過ぎ過労で倒れたこともあるがとその事を話せば

 

「思えばあれが今年最初の肝が冷える出来事じゃったな……」

 

「ごめんて、頑張れるって思い込みすぎてたからね」

 

「指揮官、倒れたの?」

 

「うん、少し前にね。皆が頑張ってるのに私が手を抜く訳にはいかないって、結果が過労だけど」

 

「あたくしも、あの時は気が来ではありませんでしたわ……」

 

扉前でヘタれておったと聞いたが?とM1895が言えば、あ、あれはそのと顔を赤くしてどもる。

 

だが今度は指揮官がしどろもどろになる番だったとはこのとき、露とも思ってなかった、今年最初の肝が冷えるで何を思い出したのかM1895は箸をおいて

 

「そう、あれが今年最初の、ならば次は何じゃと思う?」

 

「え、な、何かな……」

 

「お主、銃を握ったら吐いてるじゃろうが、あれだって十分に肝が冷えたのだからな?」

 

うっと言葉に詰まる指揮官、しかもあれはM1895には一言も言ってなかったのでM9とカリーナから報告されそこで彼女は初めて知り驚くどころの騒ぎではなかった。

 

「指揮官って、もしかして私達以上に色々危ない橋渡ってない?」

 

「そ、そんな事無いよ」

 

「ですが、ノエルさん達が来た時の作戦のときなんかは、あたくしももう本当に……本当に胸が張り裂けそうになりましたわ」

 

「うん、私も死んじゃうんじゃないかって思っちゃうくらいだった……」

 

二人のその言葉が胸に容赦なく突き刺さる、だがあれは私が悪いって訳じゃないのではと思うがそれを口に出せないのが彼女の優しさか。

 

指揮官からしてみればあれは自分でも命の危機という出来事だった、もしPPSh-41が居なかったらと思うと少し身体が震えるくらいには怖かったし起きて右腕が上手く動かないのがこんなに衝撃的なのかとも思った

 

だがそこでM1895がゴホンと咳払い、自分でそんな話題にしたのだがまさか此処までどんよりするとは思わなかったようで軽く誤りながら

 

「まぁ、ともかく今宵はそういった事があった程度で良いじゃろう、それに悪いことばかりではあるまい?PPKの事、P7の事、それに外部との人間とも繋がりができた、ほれ、まだまだあるじゃろう」

 

「これからもお世話になりそうな人たちばっかりだよね、F小隊の所とか一度行ってみたいし、牧場の牛とか触ってみたい」

 

「私も私も!」

 

「その時はご一緒しますわ」

 

それから四人は楽しげに今年の出来事を振り返っていく、こうしてみればどれだけ濃い一年だったかと思いつつも来年もきっと濃くて楽しい一年になると、指揮官はそう願いつつ、M1895を見る。

 

「む?なんじゃ急に見つめて」

 

「へへへ、来年も宜しくね!もちろん、皆もだよ?」

 

どうやら今の言葉は食堂に入る仲間たちにも聞こえたらしくそれぞれが笑い、そして同じくこちらこそ宜しくと返してくる、こうして時は進み、日付が変わるまで後五分という所で

 

「す~……す~……」

 

「ありゃりゃ、指揮官さま寝てしまいましたわ」

 

「まぁ、何となしには予想してたのじゃ」

 

「あたくし、お部屋に運んできますわね」

 

「え、食べるの?」

 

「食べませんわ!!」

 

何ともこの基地らしい、オチが付いたとM1895は笑っているとVectorが隣に座り

 

「一つ良いかしら」

 

「良くないのじゃ」

 

流石に新年ギリギリに寒くなるようなのは許さない副官であった




一年振り返ると人形より指揮官の方が生命に危機に瀕する自体が多いとか不思議な基地やなぁ

という訳でこれが今年最後の書き納めでございます、日刊で走り続け今日まで走れてるのもひとえに皆様の感想などのお陰でございます、では良いお年を。

……じゃあ、0時に会おうな!!

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