それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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わしは、お主にそう考えてもらいたくはないのじゃ……!!

※一人称回


ワン・フォー・オール(私は皆のために)

その日、前日にペルシカから話があると聞かされたわしと指揮官は16Labへと足を運んでいた。

 

「そう言えば、本部に来ても大体ペルシカさんの所しか行かないよね私達」

 

「何を言う、ヘリアンの所も行くじゃろうが」

 

いや、そうだけど回数が圧倒的に少ないじゃん。うむ、言われると殆んど寄らぬな、いや、全く無いわけではないが書類とかは最近カリーナに頼んでそれっきりじゃな。

 

やはり年が変わったのだから一度は顔をだすべきではと考え込む、そうしよう、だがとりあえず今はペルシカだとラボのインターホンを鳴らせば何時ものような気怠げな声で

 

「開いてるよ」

 

「失礼します、ペルシカさん」

 

「失礼する……お主片付けるってことは少しはせぬのか?」

 

私が分かるから良いんだよといよいよ掃除しない宣言をしだしたペルシカにえぇと隣の指揮官が声を漏らす、わしも同じ気持ちじゃ。

 

さて、いつまでも世間話だけをしている場合ではないとペルシカに視線を送れば向こうも理解して一つ頷いてから

 

「今日は、君に伝えるべきことがあり来てもらったんだ、長くなると思うから座ってくれ」

 

「伝えることですか?」

 

「ああ、君の……『眼』についてだ」

 

それから、静かに説明がされる。まだペルシカも分かっていない部分があるので本当の意味での全てではないが今回何より必要だったのは眼が彼女の脳を侵食していると言うことと、それは使う度に進んでいること、記憶の改変すらも引き起こしていること、カルテまで使って行われ、指揮官はそれを黙って聞いていた。

 

「以上が、現状私達が分かっていることだよ、すまない、本来ならば判明したときには眼を少々無理にでも摘出して他の義眼をと言うのもできたのだけど……」

 

「でも、摘出しなかったのは私のため、何ですよね。多分、この眼の機能を使って指揮官として有能であることを示さなければ私は今こうやって皆と会えなかった、ですよね?」

 

「今の会話だけでそこまで気付くか、だけど君は真面目に機能を使って貢献した、それなりに大きな作戦もこなした、君はもう侵食に怯えながら指揮官を続けなくともいいくらいにね」

 

ペルシカが頭を掻く、もしかしたらこの辺りの勘の良さと頭の回転の速さは母親譲りかも知れぬなと思ってしまう。

 

だが今ならばペルシカの言う通り指揮官として働かずとも自由を約束されるほどの働きをしている、この眼の危険性が分かった以上、こやつをこれ以上働かすのは危険じゃ。

 

指揮官だってこの話を聞いたのならば理解してきっと、とその時までは思っていた、だからこそ

 

「指揮官、聞いての通りじゃ。流石にすぐにとは行かぬが平和な地区へと移転しそこでわしらと……」

 

「私は、今の所で指揮官を続けるよ」

 

彼女の言葉に一瞬理解が出来なかった。強がりでもない怖がってもない何時もの口調と声でそう告げる指揮官にわしは目を見開き驚いていた、何故じゃという言葉すら出そうになる。

 

「どうしてだい?」

 

「だって、皆のお陰で私は幸せに生きれた、だから返していかないと……この眼を使って皆の助けにならないと」

 

「何を、言っておるのじゃ?お主聞いておったのか、使えば使うほどあの時のような命の危機だってまた襲われるのかも知れぬのじゃぞ!?」

 

気付けば指揮官の前まで出て肩を掴み叫んでいた、皆の助け?何を言っておる、それでお主が命を投げ出して良いわけではなかろうと

 

「理解してる、でもそれで私が眼を使わなくなってそれで皆に何かある方が私は嫌だ」

 

戦術人形(わしら)は人間であるお主とは違う!それともなにか、自分がどうなろうと戦術人形(わしら)の方が大事だとでも言うのか!?」

 

「言うよ、私の眼が皆の無事に繋がるのなら私は言う。人形だからって理由で皆が傷つくのなんてどうかしてる、それを防げるなら、私は……ッ!?」

 

「ナガン!!」

 

やってしまったと認識したのは手を振り切りペルシカが叫んでからだった、だが耐えれなかった、笑顔でそんな事を言う指揮官に怒りが抑えられなかった。

 

次にどうすれば良いのかが分からない、殴っておいて大丈夫かなどと聞けるわけがない、だが今のまま説教を続けて良いのかすら分からない、何より自分で自分の行動に驚いている。

 

流れる沈黙、それを破ったのはペルシカ、彼女はわしと指揮官の間に入り指揮官と目線を合わせて

 

「ナガンの言うことは確かだ、君のその言葉は私としても見過ごせないな」

 

「でも」

 

「ああ、分かっている。君の意思がこれで変わるなら苦労しないよ、だけど知ってくれ君に何かあれば悲しむ者たちが居ることも」

 

「……はい」

 

今の間だけでも指揮官はあの部分を譲ったわけではないと言うのが分かってしまう。ああ、こんな頑固なところすらもアヤツに似ないでも良かったのじゃと何故この親子は他人のことを考えないのだと、自分を度外視してしまうのかと

 

わしはその為にお主を指揮官にしたのではないのじゃ、ただ、ただ人並みに笑い、泣き、幸せを感じてもらいたかっただけじゃ

 

それからペルシカはこの状況で更に話をするのは難しいと思ったのか、今日は此処で一旦解散にしようかと言い、わしらはG36が迎えに来る公園まで歩いていた、途中わしは思いを口にする、どうにか指揮官を止めたくて

 

「わしは、お主に幸せになってもらいたいだけじゃ……もうお主が苦しむ必要はないのじゃ」

 

「ナガン、大丈夫だよ、私は苦しんでなんかないよ」

 

微笑みを浮かべ、彼女がそう告げる。そこで気付いてしまった、否、気付いてはいたが目を背け続けていた事を直視させられてしまったというべきじゃろう。

 

彼女は何一つ苦しんでいない、寧ろ戦術人形(わしら)や一部の信頼できている人間が苦しむことを自分のことのように苦しんでしまう人間なのじゃと。

 

こやつはもしかして、自分が幸せになるべきではないという感情があるのではないのか、自分の幸せというものはなく他者の幸せを自分のにしているだけではないのかと、このままにしては母親のように手遅れになってしまう故にわしは

 

「頼む、もうわしに大切な者を失う痛みを味合わせないでくれ」

 

「え?」

 

「二度も、わしに大切な者を失うという苦痛を与えんでくれ……」

 

「ん、分かった」

 

困った感じに笑い言葉を返してくれた指揮官を見つめ、わしはただズルいやつじゃなと自嘲し彼女の後を追う、少しだけ頬を撫でる風が厳しい感じがした




指揮官ちゃん若干、某正義の味方が混じってる疑惑、9のために1を捨てるの1が自分になってる。

全て知った上でもこの考え、と言うより今回ペルシカがこれを話したのは少し悪手の可能性も否定できない、今後戦術人形達がピンチに陥れば確実に眼の拡張をしてしまうから。

次回、2ルートあるけど片方に行くとナガンおばあちゃんのメンタルがブレイク案件

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