それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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狩人は静かに怒れる


最悪の再会 Session 3

鳴り響く銃声、それは突然であり、イントゥルーダーも予想していなかった物だったようで伸ばしていた手を引き顔の前でクロスさせ飛び退く。

 

推定ワンマガジン程の銃声が収まり、防御を解いて見ればそこに居たのは

 

「いえ、悪魔はまだ此処まで外道では無いわね……詐欺師、それの手口と言ったほうが良いわね」

 

「副官、副官聴こえてる!?」

 

茫然自失しているM1895の前に立ち、リロードをしながらイントゥルーダーに睨みを効かせるVectorの姿、その目は怒りを灯しておきながら纏う雰囲気は冷静そのものであり、再装填を終えた銃を彼女の静かに向ける。

 

その後ろではグローザがM1895に声を掛け続けるが答えは返ってこず虚空を虚ろな瞳で見つめるだけの反応に舌打ちをしてVectorに静かに首を横に振る。

 

《何だよこれ、こっちが射撃管制システムで、えっとこれが言語?ああもう、ゴチャゴチャになり過ぎててどれが副官のメンタル部分なのか分からないぞ!?》

 

「かなり深くまで入り込まれたか、やってくれるわね腐れ外道」

 

FMG-9の悲鳴を聞きつつ、まるでイントゥルーダーが何をしようとしたか分かっている口振りで毒づき、それから即座に

 

「グローザ、どうせアイツには撃てないんだから副官を強制スリープにしてここから下がって」

 

「ええ、銃を向けれても銃爪は引けない、けど強制スリープ?」

 

「説明は後でする。とにかく今は彼女を寝かせてあげて」

 

「【おかしいわね、地下の扉は簡単には突破されない筈だし、そもそもオペレーターも潰したつもりだったのだけど?】」

 

イントゥルーダーにとってのまず1つ目の想定外、彼女達がこの地下実験室に到着するまでの時間、彼女の予測ではまだ掛かるはずだったのが既に目の前にいる。

 

2つ目はVectorが自身に発砲出来たこと、通常の戦術人形であれば先程のM1895にように銃爪を引けないはずだと言うのにVectorはそんな素振りを見せずに銃撃を浴びせてきた。

 

イントゥルーダーの混乱を的確に感じ取り、Vectorは挑発するように指を一つ立て

 

「1つ目、悪いわね。うちのは優秀なの」

 

《いやいやいや、Vectorのアドバイスがなければやられてましたよ!?ダミーと20層近くのプロテクトの八割が吹き飛ぶとかどんなカウンターですかあれ!?》

 

カウンター、それはM1895が入って早々にパソコンに通信機を接続した際に発動した罠、本来であればそれでFMG-9の機能は完全に殺せるはず、だったのだがVectorが作戦前にFMG-9にダミーに最初はやらせ、ついでにプロテクトを厳重にと伝えていたために本体は難を逃れ、結果的に電子ロックをされた地下への扉を早期に破ることが出来た。

 

「そして2つ目、これはもっと単純よ、私が特別製ってだけ」

 

そう告げながらイントゥルーダーに向け『何時ものように』銃爪を引く、事故でも何でも無い間違いなく相手は敵意を持ってこちらを撃っているだと言うのにシステムに止められない。

 

「そもそも、誰が貴女を殺したと思ってるのよ」

 

「【……そうだったわね、いや参ったわ。まさか見せたこと無いはずの手札を全て読まれているなんて、何者、貴女?】」

 

「答えるつもりはないわ、それとその声で口を開くな鉄屑、死者の冒涜は嫌いなのよ、今すぐ殺したくなるほどにね」

 

Vectorから発せられる空気がイントゥルーダーを突き刺す、声も表情も全てが平時と変わらないが彼女は静かにキレていた。

 

彼女は殺した相手は一部例外を除いて敬意を払う、それは彼女がかつて所属していた組織の理念であった、だからこそイントゥルーダーと言う存在が許せないと銃口を向ける。

 

一方、イントゥルーダーは先程までと違い一気に窮地に陥り、内心では毒づいていた、本当ならばこの時点でM1895は『洗脳』が完了し自分は悠々と撤退するだけだったのが今この状況だ。

 

グローザだけならばどうにかなったと思うが、あのVectorが居るとなると話が変わる、はっきり言えば、もう自分に勝ち筋はない、更に言えば

 

(これ以上、『こっち』に主導権を渡したくないのよね……)

 

仕方がないとイントゥルーダーは彼女の笑顔でニコリと笑う、それを見たVectorが更に殺意をぶつけて来るが何処吹く風といった感じの態度を取り

 

「【退くならば、貴女もですよVector】」

 

「学ばないわね、この鉄屑っ!?」

 

ゴゴゴと何かが起動した音が上から響く、流石にこれにはVectorも驚き周囲を警戒していればFMG-9の焦った通信が入る。

 

《マジかよおい!?》

 

「何が起きたの!?」

 

《報告、工場が再稼働、確かまだ資材は回収できてないはずだから……ああくっそ、もしラインまで動き出したら推定70以上の鉄血兵が量産される計算だぞこれ!?》

 

まだラインそのものは動いていない、その報告にVectorとグローザが勘付きイントゥルーダーを睨めば、向こうは微笑を絶やさず椅子に座ってから、パソコンにつなげられていた通信機を投げ渡す。

 

それをVectorは受け取る、つまりこれは脅しだ。この情報はくれてやる、だから私の事は今は見逃せ、さもなければ数を持って貴様らを潰すという。

 

「……退くわよ、グローザ」

 

「それしか選択肢は無さそうね、FMG-9、私達はこれより帰投するわ」

 

《了解……こっちは副官を診てもらえるようにペルシカに連絡を入れておきます》

 

「【また会いましょうね、ナガン】」

 

最後の最後まで彼女の声で口を開くイントゥルーダーに射殺さんばかりの視線を飛ばしつつVector達は撤退を開始、そして実験室から姿が消えた瞬間、彼女の身体が崩れ落ちる。

 

頭を抑え口からは苦悶の声を漏らし、激しい戦闘も何もしていないはずだと言うのに息は上がっており肩で呼吸をするほどだった。

 

「ハァ……ハァ……まだ、ここまで抵抗してくるなんてね……」

 

この言葉がどういう意味で何を示しているのかはイントゥルーダー本人しか分からない、だが決して彼女が絶対有利、と言う状況ではないようだ。




イントゥルーダーがM1895に何をしたかは次回。ただ言えるのは幾ら彼女の声でとは言えM1895が彼処まで簡単にはやられないということ。

真面目な話書きすぎて57がPPKと指揮官に遂に手を出して激しく攻め続けて最期は二人がアヘ顔ダブルピースするって話思いついたんですがどうですかね!!(書かない)(書くつもりはない)(書くとも言ってない)(そもそもこれ書いたらR指定物)

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