それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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迷い、それでも前へ


弔いは銃声で

M1895に何があったのかの指揮官への説明は流石に彼女も疲弊しているという理由で明日になり、彼女は現在、医務室にてヴァニラのメンテナンスを受けていた。

 

と言っても先程と同じように彼女が機械で操作しているだけなのでM1895はその間、いや、Vectorに言われてからその日一日それを考えていた。

 

自分でも流石に情けないのじゃと自嘲しつつ、どれだけ彼女の存在が自分の中で大きく、それでいて弱点となっているか思い知らされたとも言えるこの問題、未だに彼女の中でその銃爪をどうするかが決められずにいた。

 

「決めなくてはな」

 

「いいんじゃない、そんなきっぱり決めなくても」

 

ポツリと呟いた言葉にヴァニラがキーボードを打ちながら答える、そしてその言葉にM1895は驚いた顔で彼女を見つめる。

 

「だって、自立人形、まぁ第2世代だけど、貴方達は人に限りなく似せられて作られた存在、ならそういう問題に明確な答えが出ないで迷うのも仕方ないことよ」

 

そもそも人間でさえ毎回迷いながら決めて、それでも前に進んでるんだしとM1895の方を見ずに世間話でもするかの軽さで話していく、それを聞いてM1895は再度考え込むように横になり天井をボーと見つめる。

 

「しかし、選んだそれが正しい選択とは限らんじゃろ」

 

「何言ってるのよ副官、明確に正しい選択なんて無いわよ、自分がそれで正しいってのが正しい選択よ。じゃないとこの世界、選択なんてできなくなるって」

 

「自分がそれで正しい?」

 

「そう、副官は気負いすぎだと思うよ、そりゃ簡単な問題じゃないのは重々承知してるつもりだけど」

 

それだけ言って彼女は作業を一旦止めググッと伸びを挟む、それからM1895の方を見て

 

「とりあえず、ウィルスチェックは終わったけど、ごめん、まだ完全じゃないわ。もしかしたらまだ残ってる可能性があるから違和感等出たら直ぐ教えて」

 

「あ、ああ、分かったのじゃ」

 

「で、明日からはメンテナンスルームで本格的に修復作業、ついでにプロテクトとかに手を加えちゃうから、質問ある?」

 

「いや、特には無いのじゃ……ああ、屋上にタバコ吸いに行ってもよいか?」

 

「へ?まぁ良いけど、驚きね、副官って吸わないイメージだったけど」

 

「よく言われるのじゃ、では行ってくる」

 

はいはい、気いつけてねという声を背に医務室を出る、時間は23時を回っておりアヤツは何時寝るつもりなのじゃと思いながら自室からジッポライターとタバコを取り出して屋上のいつもの場所で火を付ける。

 

命日だけと決めていた喫煙、気付けば妙に回数が増えてしまったなと軽く笑みを浮かべつつ、先程のヴァニラの言葉を電脳で復唱する。

 

「自分が正しいと思った選択が、正しい選択、か……」

 

彼女は、M1895が何を悩んでいるのかを簡単にしかまだ聞かされていない、よもや指揮官の母親、自身の過去の指揮官のの脳を積んだ相手を撃てるか否かの悩みだとはまだ思っていない。

 

だが、不思議とその言葉にストンと何かが落ちた気がした、悩みが消えたわけではない、だが

 

(わしは、何かを難しくしすぎたような気がするな)

 

Vectorは言った、自分の目の前で息を引き取ったのは誰かと、あれは間違いなく彼女、レイラだ。

 

そして何より、レイラはM1895に死ぬというのに穏やかな笑みでこうも告げた、いや、信頼できる自分に託してきた

 

【あの娘は生きている、だからさ……会えたらよろしくお願いね】

 

あれは間違いなく彼女の本心からの願い、ならば自分が取るべき選択は自ずと決まっていたのかもしれない。

 

でなければ彼女の娘の副官を今日まで務め、厳しく、だが優しく、本当の祖母のように見守っていないだろう、そこまで思いゆっくりと紫煙を吐き出せば彼女の視界に女性が映る。

 

「っ!?……ったく、少しは出てくる場所を考えるのじゃ、って言っても仕方ないのだがな」

 

もう写真でしか見れなくなった彼女、レイラが映ったのは屋上の先、つまり空中に現れ思わずM1895は苦言を漏らす、がこれはイントゥルーダーのウィルスの残り香か、最低限の修復故に発生しているバグを自分が映しているだけか

 

故に、彼女は何も発しない、ただ穏やかな笑みで彼女を見るだけ、だがそれで良いのじゃとM1895は思う、ウィルスであろうとバグであろうと映っている彼女が言葉を話してもそれは自分の都合のいい言葉、ならばいっそ黙っててくれた方がまだいいと

 

「お主の意思があのイントゥルーダーと共にあるかは分からぬ、意思はなくあやつがお主の声で好き勝手言ってるだけかもしれぬ……考えたくはないがもしかしたらお主は本気で人間を憎み、それでいてわしにああやって誘ってきたのかもしれぬ」

 

幻影に語りかけながら、ゆっくりと銃を抜き構える。現在の彼女は戦闘面のシステムは全て停止されており、補助システムも何も無い完全な技量での射撃だが今は問題ない。

 

若干震える銃身、それを落ち着かせるように一呼吸置いてから幻影に照準を定め、見つめる、その目は穏やかであり、だが迷いはない瞳だった。

 

「……わしはお主の娘を、ユノをお主に託された。例えお主の考えが変わろうとわしはお主の、指揮官としての最期の言葉を絶対とする」

 

指に力が入り始める、その時やはり何かしらバグってるのかもしれないシステムが唯の幻影に味方識別を吐いた、無論唯のバグであり普通に撃てるだろうが、妙に粋な演出にフフッと笑いが溢れる。

 

「これが正しい選択かは分からぬ、だがイントゥルーダーの手を取るのは間違いだと断言できる、そこにお主の意思があろうとな」

 

今度はあの時のように目を閉じない、もう逃げない、これが自分の選択だと宣言するように

 

「もし恨み辛みがあるのならばあの世で酒の肴にしながら聞こう、それまで……さようならじゃ、レイラ、わしの最高のパートナー」

 

銃声が屋上に響き弾丸が幻影を貫き消える、それはM1895の決意を祝福するように、レイラへの弔いを告げるように、発砲してから少しして銃をホルスターに戻し

 

(覚悟せよ、イントゥルーダー。我が親友を利用し、侮辱した罪、重いと知れ)

 

もう彼女は迷わないだろう、纏う雰囲気が変わったM1895はそのまま屋上を後にしようとした時、屋上の扉が壊れるのではないかという勢いで開かれ、居たのは血相を変えた表情の指揮官、とその後ろにPPK

 

「なんじゃ、血相変えた顔して何か……」

 

「い゛き゛て゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」

 

「ぬおぉぉぉぉ!!???」

 

タックルを直撃し、M1895は後頭部を強く打ったらしい




指揮官視点は明日、ていうか23時まで何してたんですかねこの合法ロリ

ヒント
屋上 銃声 副官は思い詰めていた

雑だけど副官、復活、じゃけんギャグ時空にぶち込みましょうね~

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