それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

163 / 794
(タイトル繋がりで例のBGM)


社長、襲来

カリカリと書類を片付ける音だけが響く執務室、今日も今日とて変わりなく業務を進め、昼休みどうしようかとか、業務後は何しようかとか若干思考が横道にそれ始めれば

 

「指揮官、考え事もいいがしっかり読んで書けよ?」

 

「わ、分かってるよ?」

 

少々キョドった反応に今間違いなく思考が逸れておった癖にのうと思いつつ、自分も不備が出ないように書類に目を通して記入していく、まぁこの調子なら何時も通り終わるか、そう考えた矢先、それは脆くも崩れ去った。

 

廊下から慌ただしく誰かが駆けてくる足音が聴こえ、執務室の扉はノックもそこそこに開け放たれれば、動転した様子のカリーナの姿、あまり見たこと無いような表情の彼女に驚き目を丸くしていた指揮官も怒ろうとしたM1895も何事かあという思考になり

 

「どうしたカリーナ、そんなに慌ててお主らしくもない」

 

「もしかして何かあったのカリンちゃん?」

 

「はぁ、はぁ、く、来るんです」

 

「誰がじゃ」

 

「く、クルーガー社長が、今日此処にいらっしゃいます」

 

刹那、執務室に爆弾が爆発したような騒ぎになったのは言うまでもないだろう、それも当然だ、此処に来る理由が皆目検討が全くつかない。

 

戦果だって十分稼いでる、任務もこなしてる、何だったら他で手が回らないと言われ流れてきたのもこなした、書類に関しても全て本部に送るものは送っている、え、じゃあ何で、次第に指揮官の顔から余裕は消え、M1895も若干の混乱が生まれ始める。

 

「分からぬ、ええい、指揮官、とりあえず迎える準備じゃ」

 

「ふぇっ!?あ、う、うんそうだよね」

 

「私もなにかお手伝いしますわ!」

 

こうしてバタバタと準備は進められ、何とか時間までに終わらせた彼女達は現在正門前にて、グリフォン&クルーガー社の社長【クルーガー】と付き添いのヘリアンを前に……

 

「あ、え、あああ、えっと」

 

「ええい、こんな時に、すまぬクルーガー、ほれしっかりせい!」

 

「いや、問題ない。彼女ことは私もよく聞いているからな」

 

「ご、ごめんなさい、そ、えっと」

 

分かってはいたがやはりこうなるかと思わず頭を抱えそうになるM1895、クルーガーとは良くも悪くも初対面のインパクトが大きすぎた人物である、更に言えばその初対面以降、会ってないのでイメージはそれしか無くそれが現状を引き起こしている。

 

しかし、しかしだ、社長を前にこれは些か不味すぎるじゃろと顔面蒼白になるM1895、だが当のクルーガーは彼女のそんな様子を見ても怒りもせず嫌な顔もせず、片手を上げそう告げてから

 

「急な訪問すまない。何もこの基地に問題があるという訳ではないから安心してくれていい」

 

「それは良いのじゃが、では尚の事なぜここに?」

 

あ、いや、先に執務室に案内したほうが良いかと思い指揮官を見れば息を詰まらせていた、え、嘘じゃろお前と固まる思考、それを見たヘリアンが側まで行き彼女の状況をよく観察してから

 

「クルーガーさん、すみません、もう二歩ほど下がって貰ってよろしいでしょうか、ええ、はいありがとうございます。平気か?そう、ゆっくり深呼吸だ」

 

「ふぅ、あ、大丈夫です、落ち着きました」

 

ごめんなさい、と蚊の鳴くような声で呟く指揮官だが立ち直りは早くなってるのですぐに次の行動を頭の中で復唱して二人を執務室に案内することには成功する。

 

執務室にはカリーナが既に準備を済ませており、全員にコーヒーと茶菓子が出されとりあえず一息、それから

 

「して、何故急に訪問、いや、監査じゃな?」

 

「監査?え、何か、不備がございましたか?」

 

「いや、不備などは無い、寧ろこの基地はよくやってくれている……が、社内ではここをよく思っておらず、終いには戦果は金で買っているだなんだと言う輩が少々多くてな」

 

「ふん、馬鹿馬鹿しい、新米共か」

 

クルーガーの言葉にM1895があからさまに機嫌を悪くする、彼女の何を知ってるわけでもなく唯、少女が基地を大きくし戦果も上げているということが気に食わない連中か、それか自分は優秀だと自意識が高い新米が決まった彼女を見れば口にする言葉だという感じを顔の表せばヘリアンも軽くため息をついてから

 

「ああ、まぁ17の少女がここまで戦果を上げている、と聞いても奴らは信じられんだろうな、いや、認めたくないと言ったほうが正しいか」

 

「えっと、何か私がご迷惑をかけてるみたい、ですかね?」

 

三人の会話をいまいち理解しきれない指揮官、というのも彼女はそう言われてもどういう意味だと本気で考えるほどのある種、鈍感な部分が強い、特に嫉妬や妬みと言ったものには特にそれが働きやすい。

 

なのでこの話を聞いて彼女なりに考えた結果が自分が二人に迷惑をかけたということでは?というあまりに曲がってしまっている結論だった。

 

「何故そうなるのじゃ、お主は何の問題もないという話じゃよ」

 

「彼女の言う通りだ、先も言ったがここはよくやってくれている、特に君の働きも大きい、安心してくれ」

 

「それなら、良かったです」

 

「もう、指揮官さまは少々自身を卑下しすぎですわ、こと貢献に関しては高いほうなのですから自信を持ってくださいませ」

 

「まぁ、今回それが、いや、言う必要もないか」

 

ヘリアンがなにか一言言いそうになるがカリーナがニコリと笑えば逃げるようにコーヒーを一口、その後は、後日のカリーナ曰く

 

「祖父に慣れなくて会話の糸口が掴めない孫娘とそんな孫娘とどう接していいか分からないお祖父ちゃんみたいでしたわ」

 

しかもヘリアンとは普通に会話ができるものだから、やれやれ怖がられてるかと笑いながら呟き更に指揮官がどうすればいいのこれと目を回したりもしたが特に何かがあった訳でもなく、監査と言うなの本人たちからすればもしかしたら息抜きもあったかもしれないそれは終わりを告げ、自分たちが乗ってきた車に乗り、最後にクルーガーが

 

「……君は今、幸せか?」

 

「え、は、はい、皆と一緒で、幸せです」

 

「そうか、出してくれ」

 

「了解、ではな」

 

ヘリアンが運転する車は護衛の装甲車を引き連れ去っていく、車が見えなくなるまで見送り、それから同時に息を吐き出す

 

「はぁ、流石に堪えるわい」

 

「う、うん、疲れたね」

 

一方、クルーガー達が乗る車の車内で彼は先程まで緊張で本来の彼女ではないとは言え本来であればまだ遊び盛りであり、親と過ごすべき少女の姿を思い出しながら

 

「我々は、彼女のような少女にすら戦いを強いているのだな」

 

誰にでもなく呟く、その声は重く、聞いてたヘリアンは何も言えず、ただ運転に集中するしか無かった。




ぶっちゃけコーナー

実はレイラはクルーガーの娘で指揮官は孫に当たるという設定にしようと思ってた時期もあった、でもそうなるともう収集つかない現状が更にカオスになるため破棄。

なのでクルーガーが妙に彼女に優しい感じなのはそれの名残、まぁ彼女の過去全て知ってるからってのもある、多分

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。