それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ああ、我が主よ……


崇拝する貴女のために

任務前の簡素なベッドだけがある部屋、彼女は任務前には決まって目を閉じて手を組み祈りを捧げる、何も祈る必要があるほどの大規模な作戦でも過酷な作戦でもない、普通の任務でも彼女は絶対にこれは欠かさない。

 

精神統一のようなものだろう、それが周りの考えだった、実際それもあるだろう、しかし真実は違う、彼女は真面目に祈りを捧げている、自身が崇拝する神に、

 

(今日も、私は貴女のためにこの手を汚します……どうか、お許しください)

 

彼女、【Gr G3】はごく普通の……のとは少々言えない、確かに普段の彼女を見る分にはどの基地にも居るG3なのは間違いない、だがその内面、そこが違った。

 

何が違うのか、彼女は信仰深いのだ、それも異常なまでに、だが決してバグではない、ヴァニラ曰く

 

「ありゃ、最初はバグだったよ、でも彼女はそれを『認めた』簡単に言えばバグを仕様にしたのさ、稀に居るよ、でも本当に稀だ、それを考えれば彼女凄いよ」

 

恐らくは民間の時は教会で働いていたのかもしれない彼女、戦術人形に仕様変更される時に浄化されその記憶はリセットされたはずのそれがこの基地の指揮官と出会った際に復元、しかしそれは想定外の復元だったためバグが起こりそれが異常なまでの信仰深さに変わったものだと彼女は言う。

 

だが別に実害があるわけじゃないしで放置された、とまぁこれは余談だ、では彼女は何を崇拝しているのか、神、と冒頭で語ったがその神とは?答えは既に出ている、基地の陽だまりである彼女のことだ。

 

この祈りは全て指揮官()の為に、この体も、思考も、銃も、その全てを彼女に捧ぐ、無論、指揮官はこの事を知らない、困らすのは本望ではないから。

 

「……そろそろ、ですかね」

 

呟きと同時に扉が開かれ一人の男性が現れる、基地の者でも味方でもない、この人物が彼女の任務の対象、ココ最近めっきり減ったと思われていた指揮官()に仇なす者、G3はこの者に裁きを下すためにここで待機していた。

 

男が下卑た笑みを浮かべながら彼女に近付き……気付けば天地がひっくり返っていた、何が起きたのかすら理解できず、見えたのはG3のスラッとした足、だがそれに見惚れる暇など男には存在しない。

 

ダンッ!ダンッ!と二発の単発射撃が部屋に響く、男が突如走った激痛に悲鳴を上げ見れば両足首を撃ち抜かれていた。

 

「な、にしやがるてめぇ!!」

 

「……」

 

睨みを効かせG3に叫ぶが彼女は答えない、否、既に彼の言葉は全てがノイズとして処理され言葉になっていないだけ、なので彼女は聞き流しつつ通信を開き

 

「こちらネニュファール、異教徒を捕らえましたが、どうしましょう。オーバー」

 

《こちらランセニュマン、大丈夫、酷いことされてないよね?まぁ、とりあえず何時もの手順で情報聞き出してから処理しちゃって、オーバー》

 

「分かりました、では(ダンッダンッ!!)ごめんなさい、少し邪魔が、アウト」

 

淡々とした通信を終え男の方を見る、右上腕部と手首から血を流し、手首の部分を左手で抑え悲鳴を上げている姿、先程の銃声は反撃しようと銃を握ったのでそれを阻止しようとした銃声である。

 

とりあえず左も撃とうかと思った時、ふと腕時計を見て、あっと声を上げ何かを探るように周囲を見渡し方角を決めてから、それから未だ叫ぶ男に

 

「あの、少し静かにしてもらっていいですかね?」

 

言い方も、声も子供に言い聞かすようなそれ、だが男はピタッと声が出なくなった。男は言われたから止めたのではない、口は開く、だ声帯が震えない、それは少しでも生き延びるために本能が止めたからだった。

 

声が聞こえなくなったのを確認してからG3は片膝を突いて目を閉じ両手を組んで祈りを捧げる、先程時計を見て声を上げたのは祈りを捧げる時間だから、一日に三回、指揮官()に祈りを捧ぐ、それは彼女がこの基地で彼女を見てからずっと続けていることであり、一日と欠かしたことはない。

 

その間も男は何も出来ない、理性では逃げろ、動け、隙きだらけのアイツを殺せと叫んでいるのに本能がそれを殺す、実際少しでもその行動をした時には眉間に穴が空いていたので正しい選択ではある……少しでも生きるという点に置いてだが、数分祈りを捧げた彼女はゆっくりと目を開けてから立ち上がり男に近づく

 

「すみません、祈りの時間は外せないもので」

 

「っは!?はぁ、はぁ、祈りだぁ!?人形が神でも崇めてんのかよ!」

 

「ええ、そうですよ、我が主に捧げています」

 

「主?はん、テメェの所の基地の指揮官は呪われたお姫様聞いてたが宗教の主もがぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

「……指揮官()を冒涜するな」

 

流れるように左手を蹴り払い右手首、銃創の部分をグリッと愛銃の銃口を押し付けそのまま沈める、グチャという鈍い音と男の悲鳴が響くが不思議とG3の言葉は男の耳に届いた。

 

否、届いてしまったと言うべきだろう、その声はなにか得体の知れない恐怖を孕んでいた、耳に入れた瞬間、男に抵抗の二文字が消え代わりに恐怖が生まれる。

 

「あ、あああ」

 

男の思考が狂い始める、今目の前に居るのは誰だ、先程まで映っていた戦術人形は何処に行った、目の前のがそう?冗談じゃない、あれは、あれはと正気が削り殺され、思考が死ぬ。

 

(何だ……なんなんだよこいつは)

 

「あの、とりあえず死ぬ前に全部話してもらえませんか?じゃないと、困ります」

 

気付けば全てを話していた、もう彼に自分を止める術は存在しない、まるでそれはシスターに懺悔をする光景にも見えた。

 

「こちらネニュファール、終わりました、あとで報告書を纏めます、オーバー」

 

《こちらランセニュマン、あいよ~、じゃあ帰還したら密談室で待ってるよ、アウト》

 

通信を切り、彼女は最後にまた祈りを捧げる、これは彼女に懺悔するための物、私は貴女のためと言いながらも手を汚してしまいましたという懺悔。

 

数分後、部屋には男の死体だけが残されていた、だがその顔は酷く恐怖に歪み、まるでこの世のものではない物を見てしまったという表情だった。




速報 指揮官、遂に信仰対象になる。そしてどんな状況でも祈りを捧げるのを忘れない信仰者の鏡

因みに途中で方角を探ったのは指揮官のいる方角を探してました、彼女何処にいようと指揮官の位置がわかるらしいっすよ?

Q なにこれ

A 私が知りたい(毎度おなじみキャラ暴走

Gr G3
ネニュファール フランス語でスイレン

こうやって軽率にキャラ付けすると困るのは自分だって言ってるのに何で生み出しちゃうかなこの作者……

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