それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
スプリングフィールドのカフェには当たり前だがその基地に居る者の大半が利用している、またその理由も様々だ、休憩のため、のんびり仲間と会話のため、朝食などの食事のため、とにかく様々だ。
そんな賑わうカフェに【キャリコM950A】とRO635の二人でお茶会をしていた、だが何というかそのお茶会は一言で言えば疲れていた、無論お茶会で疲れたのではない、この二人はこの基地でどの立ち位置に居るかと言えば常識人の枠、それもツッコミに近い存在であり、常識で考えるがゆえにごく少数の拗らせてる方々の狂気を目の辺りをし疲れやすいのだ。
「……いや、悪い基地じゃないよ、寧ろ心地良すぎるくらいだから」
「そうですね、指揮官含め皆さん良い人です、良い人なんですよ」
自身に、そして目の前の
「G3がさ、祈ってたんだよ……あれ、知ってるっけ」
「あ~、はい、一日に三回、祈ってますね」
「それね、毎回毎回方角が違って何に祈ってるんだろうって思ってたらさ、その方角から指揮官が現れたんだ……」
「……やめましょう、多分帰ってこれなくなります」
そうだね、世の中には触れなくていい闇が存在する、と言うか触れたくないと言うのが二人の本音、別にどう拗れようがそれは個人の自由であり自分たちがどうこう言うのも間違ってるしそもそもそれ以外は非常に良い人なのだから問題ない、そう言い聞かせる。
でもしなければ胃が悲鳴を上げる、人形のであるはずの自分たちの胃が悲鳴を上げるとかどんな事態だと思いつつケーキを一口、それから
「はぁ、なんか私、ROが居なかったらもっと疲れてたかも」
「はは、私もです……いえ、その、カリーナの話しします?」
「コレクションの話なら知ってる、い、いいお姉ちゃんじゃない、ええ」
違う、何で触れていくんだよと互いに思考をリセットする、何でカフェで癒やされるために来てるのに疲れなければならないのだと、今度はコーヒーを飲み息を吐く。
そんなカフェに似合わない若干どんよりした空気に一人の戦術人形が近づいてきた、この個性豊かな基地でも何時も変わらずノリの良さと関西弁と言われる話し方で場を上手くコントロールしているガリルだ。
「なんやなんや、二人して何を辛気臭い顔してるんや」
「ガリル、いえ、いい基地だなぁって」
「いい基地だなって会話でなしてこんな空気になるんや」
「個性的な人達が多いなって思ってさ」
その一言にそれは納得やと呟くガリルはそのまま二人の返事を聞いてから席に座り注文をしてから自分も会話に参加する。
「ま、確かにこの基地は中々個性的なのが仰山集まっとるな、でもそれは指揮官がいい娘やからなぁ、誰でもああやって受け入れるのはある種の才能やで」
「才能、確かに指揮官が纏う雰囲気のようなものは不思議とリラックスできて何というか安心感のようなものがありますよね」
「それに私達の会話に楽しげにしてくれるから話してるだけで自然と疲れが取れていくのよね」
先程までの少々どんよりした空気が指揮官の話題になれば打って変わって軽くなる、ただ指揮官を話題にするだけでこの穏やかにすると言うのも中々凄いことだが彼女達が特に気にする様子はない。
そうして幾分か場の空気が軽くなれば会話の話題はその個性豊かな仲間たちになる。
「AR-15って来た当初はあんなんじゃなかったってホント?」
「私は来た時にはあんな感じでしたので……ガリルはなにか知ってますか?」
「言われると当時は普通やな、AR小隊の一員って感じや、それが何か気付いたら指揮官の事をあそこまで思う人形になっとったなぁ」
「でもM4もM16もSOPも変わりないですし……」
何処かでピンク髪の戦術人形がくしゃみをしたらしい、因みに今挙げた三人の中で変わってないと言えるのはSOPくらいでありM4は静かに変な方向で覚醒しているしM16は最近そんな妹に彼女も胃を痛め始めていた。
他にもFive-seveNも最初は大人しかった筈、P38はあれでも当初は万能でもなく普通の戦術人形だった、等など上がり、会話が盛り上がり、そこでふとキャリコは気付いた、それは皆が当初はと頭に付くことにだ。
(つまり、皆指揮官と出会うことで個性が豊かになっている……?)
いや、考え過ぎかとマフィンを食べる、そもそも出会って過ごして会話してるだけで人形のメンタル部分に作用するとかそれはいくらなんでも指揮官を何だと思っているんだと自分で罪悪感に駆られる。
とそこでガヤガヤと何やら店内が騒がしくなり三人がその方向を見れば『何故か』同じテーブルで穏やかな笑みで白くなってるいつもの三人とクラシックメイドドレスに身を包みぴょこぴょこと両サイドで纏めた髪、所謂ツインテールの指揮官が居た、どうやら手伝いとして来たらしく側には同じくメイド服姿の9Aと保護者G36の姿もあった。
「おお、またオシャレさんになっとるやん指揮官」
「はぁ、ホントあの三人みたいにはならないけどさ、指揮官が可愛いのは分かるわ、小動物チックな可愛さよねあれ」
「え、妹的な……あ、いや、違います、私はそこまで深く踏み込んでないですからね!!」
ROも危ないかも知れない、キャリコはその思考を押し殺すために慌てて弁明したRO635に向け穏やかで優しい視線と笑みを浮かべる、もうこうしないとまた疲れてしまいそうだと感じたのだ。
キャリコM950A、この基地に来て指揮官という癒やしを見つけ、人形も色々居るんだなと知った人形である、彼女は思う。
(せめて、自分だけでもしっかりしよう)
「さらっとウチをしっかりしてない風にするのやめへん?」
「いや、だから私もしっかりしてますからね!?」
そうね、お願いだから心読むのは止めてね、怖いからと語る彼女の目は若干曇ってた。
キャリコちゃんめっちゃいい子なんですよ……ただその、お蔭で色々気疲れが、ね?
そもそも基地が個性の塊な不具合、そしてホイホイでもある。