それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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スペシャリスト(万能少女)


やるからには全力系戦術人形

バサッと屋上に白い大きなシーツが広げられ、設置されている物干し竿に丁寧に干されていく、本日は晴天なり、絶好の洗濯日和であることは間違いない。

 

そしてこの空間に彼女【ネゲブ】は居た、当の本人は戦闘のスペシャリストと名乗っているはずなのだがある日、家事をやらした時、この基地での立ち位置が固められた。

 

「そこ、干す前にきちんとシワ伸ばさないと後が面倒になるでしょ!」

 

「わわわ、ごめんなしゃい」

 

全くと溢しながら自身も丁寧に、だが手早く洗濯物を干していく、その手付きは異様なまでに慣れてるもので周りと比較しても倍くらいの早さでかごの洗濯物が干されていってるのがよく分かる。

 

ダミーフル稼働の総勢30体による洗濯物干しを終え、自身のダミーと共に彼女は次に向かったのはロッカールームと書かれた部屋、そこに入り少ししてから出てきた彼女の格好は三角巾を頭に巻き、エプロン、両手には雑巾がかかっているバケツとモップ、見れば背中に箒とちりとりも装着されており電脳で基地のマップを開けば

 

(……西側の廊下とああ、今日は一度プールも掃除しましょう)

 

とその前にと通信をとある人物に繋げる、指揮官のお付きのメイドにして基地の清掃隊長であるG36だ。

 

「こちらネゲブ、今どの辺り?」

 

《現在は東側です、もしかしてこちらへ?》

 

「なら良いわ、西側とプールは私がやるから」

 

《そうですか?ではお任せしますね》

 

そんな短い通信でのやり取りを終えたネゲブは気合を入れ直し、先ほど決めた清掃場所へとダミーをゾロゾロ引き連れて向かい、現場に到着するや、ダミーに持たせていた清掃道具一式を並べ、次に現場の状態を確認、それから使う道具や清掃方法を電脳内で整理してからダミーにプログラムを組んで清掃を開始する。

 

最近ではペットとして迎える動物が増えたのでその影響で基地内の汚れが現れやすくなっているので清掃にはそれなりに神経を使って行っている、特に物陰などは特に溜まりやすいので念入りに、こうして少しずつ清掃していき……

 

「って違う!!!!」

 

急に正気に戻ったかの如くな雄叫びを上げるネゲブにビクンッと近くに居たOTs-12が驚き彼女を見ればいや、違わないんだけどと何やら混乱している感じだったので

 

「ど、どうかしたのですかネゲブ」

 

「え、あ、居たのティス……いや、確かにスペシャリストたる私は洗濯も掃除も出来るわ、ええ、スペシャリストだもの、だけど違うのよ、私これでも戦術人形で戦闘のスペシャリストなのよ!?」

 

「つまり戦場に出たいと」

 

「そうね、そう言えるわ」

 

ふむととりあえず彼女の悩みを察したOTs-12だったが聞いた所でなにか力に成れるというわけではない、残念ながら出撃等は指揮官と副官の決定なのだからどうこうできても問題なのだが。

 

だがネゲブもネゲブでそんな相談をしておきながら掃除の手は決して緩ませない、単に一回やりだしたのだからと言うのもあるのだろうが時より楽しげに笑うこともあるので多分本人は満足していると思われる。

 

「現状に不満はあるのですか?」

 

「不満?まぁ、出撃が少ないくらいね……それ以外は特に浮かばない」

 

「掃除や洗濯は不満じゃないんですか……」

 

その呟きにネゲブが小首をかしげればOTs-12は更に頭を抱えつつ今の話を整理を行う、つまり戦場に出たいのだがかと言って今の待遇に不満があるわけではなく、だが戦術人形なので戦場で戦果を上げたいということ、なるほど我儘ですねそうですねとヤケクソじみた結論がはじき出される。

 

じゃあ何で叫んだんだと言う次の疑問にぶち当たるがそこで思い出す、そう言えば整備士のヴァニラが彼女は修復してみたけど電脳が一部故障していて今でも後遺症が残っていると

 

(じゃあ、あれはその後遺症の癇癪って感じでしょうか)

 

そうすればさきほど叫んだと思えば今は冷静に掃除をしこちらとも会話してくれてることに合点がいく、と言うかそうじゃなかったらこの同僚がものすごく面倒な奴に変わってしまう、彼女としてはそれは避けたい、仲間外れは寂しいのだから

 

「と言いますか、それ言ったら私も戦場に出ること少ないですよ、もっぱら警備と警邏ですし」

 

「外に出れるだけ良いじゃない?」

 

「あ、そこからですか」

 

キョトンとした表情でネゲブが言い放ったその言葉で今、前提が覆った、この少女ただ単に外に出たいだけなのではと、それをいい感じに言い換えて結果ああいう言い方になったのではとOTs-12は思い今度は軽い頭痛が彼女を襲う。

 

「頭を抑えてどうしたのよ、頭痛いならペーシャの所行きなさい」

 

「誰が原因だと……ネゲブ、街に出たいのならば指揮官に言ってみるなりしてみたらどうですか」

 

「だ、誰が外に遊びに行きたいってことよ」

 

「誰もそこまで言ってませんからね?」

 

語るに落ちるとはこの事か、指摘されたネゲブの顔がみるみる赤くなりが本人はそれに気づかず、取り繕うとして咳払いをしてから

 

「わた、私は戦術人形で、戦闘のスペシャリスト、遊ぶということにうつつを抜かす暇は無いの、ええ、無いのよ」

 

「……(面倒くせぇ)」

 

もう此処で会話切ってしまうかと考えがよぎるがいや此処まで聞いておきながらそれはどうなのだと真面目な部分がそれを止め、何か案はないかと考え始める、暫く考え、それからポンっと閃いた。

 

何も遊びに行くという言葉を使わずともこいつのことだ、街に出れば遊ぶだろう、知らないがそんな気がすると思った彼女が切ったカードは

 

「そう言えば、指揮官が街に出る用事があるとか言ってましたよ」

 

「ふ、ふぅん、良いことじゃない」

 

「ええ、良いことですよね、ですが副官も今日はどうやら手が外せない用事があるみたいで今、一緒に街に出てくれる護衛を探してるらしいですよ?」

 

「……へぇ、そうなの、ふぅん」

 

何故か掃除の速度が格段に上昇するネゲブ、これは食い付いたなと確認してから彼女に別れを告げ見えなくなった所で

 

「あ、副官ですが、先程のお話、私じゃなくて……」

 

一時間後、指揮官の護衛にネゲブが付いて行き、帰ってくれば満足げな表情でOTs-12に礼を言う姿が目撃された、それに対してOTs-12はただ一言

 

「不器用すぎるでしょ……」

 

手渡された星型のキーホルダーを眺めながらそう呟く彼女の顔はどことなく嬉しそうだった。




ネゲブちゃんってこう、色んな方面でやれること多そうだなって、戦闘のスペシャリストが本業だけど。

今日出たドルフロアンソロ買いましたがM16姉貴の取り締まりの時間で腹筋の装甲ぶち抜かれました、現場からは以上です。

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