それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
その日の業務も終えルンルン気分の指揮官が向かったのは浴場、未だ寒い、というより今日になってまた数度下がった気温、コタツもいいがやはりお風呂もいいのでここ最近の彼女は早めに来て長く入るというのがスタイルになっていた。
脱衣所に付いた彼女はそそくさと服を脱いで一式を持って扉を開ければ、何と先客が居た、しかもこの時間帯には滅多にレベルじゃない人物、それは
「G36だ、え、今日は早いんだね」
「お嬢様!?あ、いえ、今日はその、暇が少し早く出来たので……」
珍しくワタワタするG36が何処かおかしくつい笑ってしまう指揮官、それを見て彼女は少し顔を赤くしつつ微笑み返す、この辺りの余裕が彼女らしい所だろう。
先程もG36が言った通り、今日は思ったよりも作業が早く片付き、暇になるのが早かったのだ、と言うのもここ最近はネゲブが目覚ましい活躍を見せ基地内の雑務を淡々とこなしていってしまうのだ、お蔭で今まではG36が動きっぱなしだったのがこうして暇が生まれるほどになっている、因みにネゲブは現在食堂にて
「……おかしい、私は何でこれで馴染んでるのってMG3、使った食器はせめて水に浸かるくらいはして!!」
彼女は今日も(基地雑務の)最前線で戦っている、とにかくせっかく出来た暇、ならば偶にはのんびりとお風呂でもとなりこうして指揮官とばったり会って今に至る。
それを聞いた指揮官は体を洗いつつ、にへらと笑顔で
「G36って働きすぎてる時があると思うし、丁度いいんじゃないかな」
「お嬢様がそれを言いますか……」
「え、あ、ははは」
鋭いツッコミに視線を泳がしながら誤魔化すように笑う、彼女のワーカーホリック疑惑は気付けば基地中に広まり、ここ最近はペルシカから働きすぎは良くないからしっかり休むんだよと保護者か己はとM1895がツッコミを入れるほどの通信が突然送られてきたりと内からも外からも矯正されつつある、尚まだ自分でもそうなのかなぁと疑問的な模様、まだまだ完全矯正までは時間がかかりそうだ。
だが今はそんな話を持ち込む場ではないのでそこでこの話題は打ち切り、ふと見るのは指揮官の髪の毛、来た当初まだ痛みがところどころに見えたがPPKとStG44の教育の結果、きちんとした髪の洗い方とケアを覚え続けたので今では側まで見てもサラッとした綺麗な髪に蘇っている。
「二人には感謝しないといけませんね」
「ん?」
「髪の毛ですよ、PPKとStG44から色々教わったと聞いていますから」
「覚えるの大変だったけどね……ちょっとパンクしたし」
ザバーと髪を洗いつつ疲れた感じにボヤく、が言いつけを守っているのが彼女らしいところである、これ以上の会話はとりあえず入浴してからにしましょうかとなり頭も身体も洗い終えてからお風呂に入る。
丁度よい湯加減のお湯、入りふぅと息を吐きリラックスするだけで身体が心まで温まるのが分かる、それは隣のG36も同じで気持ちよさそうに目を閉じ腕を伸ばしていた、しばしの無言の時間のあとG36から
「PPKとは上手くやれていますか、お嬢様」
「え、どうしたの突然、やれてるよ、今日もお弁当作ってあげたからね」
「ふふ、もう完全に奥様みたいですね」
そうかな?ととぼけるように指揮官が言うがその顔は赤い、のぼせたとかにはまだ早いので照れていることがよく分かる、しかしここまでデレデレなカップル、ならばいっそと考えてしまうG36はその考えを口にする。
「お嬢様、PPKと同じ部屋で生活する、というのは考えていませんか?」
「PPKと同じ部屋……?え、あ、いや、それはその、えっと……」
ん?と指揮官の反応に引っかかりを覚える、添い寝だって初めてじゃないというのに何をそんなに戸惑っているのだろうかと、まさか相部屋は嫌だとかではないとは思うがと思考を巡らせているG36の様子になにか誤解を与えてるのではと思った指揮官がしどろもどろになりつつ
「あ~っと別に嫌ってわけじゃないよ、うん、いや、嬉しい、かなって」
「では、どうして?」
「それはその、何ていうか、こ、心の準備がというか」
G36、余計に分からなくなる、そもそも心の準備とはとそこで閃きが走る、確か新年の時に酔ったPPKに部屋に連れて行かれてたなと、いやまさかとそこで思考をリセットしようとするが今の指揮官の様子、あの時のPPK、そして翌日の彼女たちの様子、それらを総合した時、辿り着いてしまう。
「……Herzlichen Glückwunsch zu Eurer Verlobung und alles Gute für Eure gemeinsame Zukunft」
「え、なんて?」
さらっと出されたドイツ語に彼女が反応できるわけもなく間の抜けた顔でG36に聞くが彼女は彼女でおぉうと言った感じの表情で指揮官を見つめ、それから静かに頷き
「まぁ、お嬢様がそういうのでしたら無理強いはいたしません、ですがもし相部屋になさいたいというのでしたら一言下さいませ、直ぐに準備をいたしますから」
「あ、う、うん、その時になったらお願いね」
(まさか、階段を昇ってるとは思いませんでした……PPKにも後で聞きますか)
手を緩めるつもりはないのでお覚悟をと決意した時、自室で5日後に迫った例の日にどうするべきかと真剣に悩んでいたPPKは突如背中に悪寒が走り、あたくしなにかしましたっけと冷や汗を流していた。
勿論だがそれに対して別段彼女は怒っているわけではない、とりあえず相部屋に関しての意見が知りたいだけである、別に指揮官がどんな反応をしたのかとか言うのを知りたいというわけでは決して無い。
(ええ、無いです57じゃあるまいし)
「G36?」
「はい、如何なさいましたかお嬢sきゃっ!?」
「へへへ、成功~」
呼ばれて彼女の方に顔を向けたG36を襲ったのはお湯、見れば指揮官が両手を合わせ手で水鉄砲を作り飛ばしたようで不意打ちに成功した彼女の顔は楽しげだった。
「お嬢様?」
「だってこうして二人で入ったの初めてなのに難しい顔してるんだもん」
「あっ、そうでしたね。いろいろ考えるのは後にします、ですが……えい」
「ふにゃ!?」
「お返しです」
したり顔のG36、指揮官と同じように両手を合わせ水鉄砲のようにお湯を飛ばせば回避できるわけもなく顔にかかる、G36は意外と茶目っ気も持ち合わせているメイドでありその後二人はワイワイと入浴を楽しむのであった。
G36ってこう、抜けてたり茶目っ気あったりすると思う、思わない?そうか……
PPKと指揮官を相部屋にする計画実行中、どうなるかは分からん