それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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各々の準備回


その日に向けて

どうしようか、それが今の彼女、指揮官の頭の中だった、現在彼女はエプロンに三角巾で食堂の調理場で丸椅子に座りうーんと唸っていた。

 

その手には一冊の本、洋菓子のレシピ本がありところどころに付箋が貼られ何時でもそのページに飛べるようになっているがそのページを見て一通り唸り、また別のページと繰り返している。

 

(PPKに、何贈ろうかな)

 

彼女がこうして悩んでいる発端はその日のお昼、偶々カフェから出てきたスチェッキンに声を掛けたのが始まりだった、出てきた彼女はカフェに居ると思われるスチェッキンに

 

「んじゃ、当日楽しみにしてるよ~」

 

「スチェッキン、今日も何処かお仕事行ってたの?」

 

「お、指揮官じゃないか、まぁね~でも今日の分はこれで終わり後はのんびりライフだよ」

 

にっしっしと笑うスチェッキン、彼女のお陰で何やや最近は他の基地でもお礼の手紙が来たり、彼女宛に手紙が送られてきたりしておりこの地区で小さく有名人になりつつあるがそれは別のお話だ、今の指揮官は何故彼女がカフェから出てきて、更に当日の楽しみとはの二点に絞られている。

 

なので聞いてみれば、スチェッキンはいつものように両手を広げ

 

「バレンタインのお菓子に必要な材料を仕入れてきてたのさ、まぁスプリングフィールドは何かにつけてお菓子を配ってあげようってだけだと思うけどね~、んで私も当日にありがたくいただこうって言う話さ」

 

「ふぅん、ハロウィンみたいなイベントって事か」

 

「おろ、そうか、指揮官はバレンタインを知らないのか」

 

お菓子を配るイベント、という事で彼女の記憶にあるので近いのを口にすればスチェッキンがそう返してくる、どうやら自分が思っているのとはなにか違うようだとスチェッキンに解説を促してみれば

 

「ざっくり簡単に言えば親しい人、または恋人などに贈り物をする行事さ。無論、お菓子じゃなくても良い、花やメッセージを添えたカードもありだよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

直後、何かを思案する指揮官を見てスチェッキンは彼女が考えてることをすぐに理解する、というより彼女はその事を考えている時は非常にわかりやすいのだ、それはズバリ

 

「PPKに何送るか考えてるのかい?」

 

「うん、今からならやっぱりお菓子かな……」

 

「なら、材料を食堂に入れておこう、なにこれは指揮官へのサービスだから遠慮なく使ってよ~」

 

「え、あ、ありがとスチェッキンってもう行っちゃった」

 

それだけ言ってじゃあね~と彼女は去っていくがその時背中越しに手を降っていたのでお礼は聴こえていた模様、残された指揮官は図書室に向かいレシピ本を借りて、そして今に至る。

 

無難にチョコ、いや、ケーキにマフィンと読んでいけば行くほどどれにするべきかという壁にぶち当たる、とそれを眺めるM1895とAR小隊のゆかいな仲間たち。

 

「あれ、もう30分はああしとるぞ指揮官」

 

「やっぱ悩むんかね、そういやPPKもなにか悩んでたな」

 

「指揮官がお菓子作るから食べれるかと思ったけどそもそも作り出さない……私おなか空いたよー」

 

「カフェは……今日は臨時休業でしたね」

 

「何かあったのでしょう……かっ!」

 

「いったい!?い、良いじゃない少しアドバイスに行くくらい!」

 

「そうですね、その手に持ったカメラは置いていくなら許可します」

 

割と騒がしくなる食堂、だが指揮官の耳には届いてないのか、はたまたそれすらもBGMにして考え込んでいるのか反応なく、レシピ本と睨めっこをしている。

 

これは長くなりそうじゃなと微笑みつつ席を立ち唸る指揮官に近づく、背後では副官は良いの!?と叫ぶAR-15が居るがM4が手早く静かにする、今日も彼女はフルスロットル。

 

「候補は決まっておるのか?」

 

「ん、チョコかケーキかマフィン、これが私としても自信持って作れるから」

 

「……パンケーキでも良いのではないか?何も手渡しできるものでないといけないと言う話でもあるまいて」

 

その一言に盲点だったと目を向ける指揮官、M1895が言ったように別段手渡しが絶対とはスチェッキンも言ってない、まぁ贈り物と言われていたのでそう思い込んでしまったというのが本音だろう、それにもし贈り物が必要ならばそれとは別にカードか花、例えばそう

 

「向日葵、は流石に用意できないか……」

 

「雑貨屋、そこに造花があったな、向日葵もあるじゃろう」

 

更に輝く指揮官の瞳、どうやらPPKに贈り物は固まったようじゃなとニヤッと笑うM1895に大きく頷いてからとりあえず練習でパンケーキを焼き出してAR小隊とM1895に振る舞われた、こうして彼女は決まったのだが実は今この瞬間も悩んでいたものが居た。

 

PPK?いや、彼女は彼女で決めて既に準備も終えている、他の基地の渡すつもりの者も用意は済んでいる、では誰か。

 

(い、いや、違いますからね、これはその決して彼女を特別に思ってるわけではなくて)

 

カフェのキッチン、当日配るつもりの量の準備は完了している筈のそこでスプリングフィールドは一人そんな言い訳を並べていた。

 

彼女の目の前には一つの綺麗な包装をされているチョコ、配るつもりなのはマフィンなのでこれだけ別途で用意されたのは明白であり更に言えばカードにはヴァニラの文字

 

(そう、これは彼女のお陰で副官も救われ、私達のメンテも滞り無く済んでいるというお礼、お礼なんです)

 

と言い訳を重ねるが何故か顔が赤らみ思考がざわつく、熱くないはずのキッチンだというのの体温も上がっていく、いつもの余裕あるお姉さんという顔はそこになくまるで初めて恋をしたかのような少女の顔、そして自分でもそれが何なのかは理解してしまっているのだがブンブンと顔を震わせて

 

「だ、誰が恋してるって!!!」

 

つい口に出してしまい墓穴を掘るスプリングフィールド、ああああと両手で顔を覆い小さく唸る、冗談でいったはずのあの場面の言葉、それが今になって更に追い打ちをかけていく、彼女の前だから油断してしまう、そうあれは冗談のつもりだったが本当だったのだ。

 

「うぅ、ふぅ、大丈夫よ私、あっちは冗談で言ったのだから真に受けないで……冗談、だったのかなって」

 

あああああ、だから!!!暴走する思考、抑えようとする理性、その後スプリングフィールドが冷静を取り戻すのはあと一時間は必要だった。




(やべぇ、このスプリングフィールドさん書いてるのすっげー楽しい)

一段落の着地地点に突如、捕虜アーキテクトちゃん爆☆誕!!

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