それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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グリフィンきっての火種だけどこの基地じゃ別にそんなものではない


指輪が届きました

バレンタイン前日と言ってはいるが特になにか騒がしくなるわけでもなく過ぎる平日の基地、データベースのカリーナから指揮官宛に機密性の高い書類が送られてきたということで出向いてきた彼女は受け取った書類から出てきた小さな箱に小首をかしげていた。

 

「なにこれ?」

 

「どうしました指揮官さま?」

 

「何か箱が入ってた、えっと書類には……」

 

見ればそこに書いてあったのは【誓約システム】と書かれて文面、内容はそれについての説明であり、ふむふむと読んでいく傍らでカリーナもそのシステムには聞き覚えがあるというより

 

「誓約システムの指輪、もう届いたのですか」

 

「え、知ってるの?」

 

「あら、指揮官さま、ヘリアンさんとの座学で学びませんでしたか?」

 

言われ当時を思い出してみるがそんな重要な言葉は一欠片も出た記憶はなく、だがもしかしたら自分が忘れているだけなのかもとうーんと唸り更に考えるが、出た結論はやはり聞いていないに落ち着く。

 

それを聞いたカリーナはなるほど必要になるとは思わずに教えませんでしたねあの人と呆れつつ

 

「誓約システムは、書類につらつら長く細かく書かれていますが早い話、人形と結婚するみたいな……指揮官さま、流石に」

 

「結婚は分かるよ、本で読んだし、でもそうか結婚……えへへ、結婚かぁ」

 

結婚と言う単語を聞いて指揮官の脳内はフルスロットルでその光景が映し出され頬を赤らめ両手を顔に当て幸せそうに笑う、どうやら相当トリップしてるらしい

 

彼女、指揮官はPPKと恋仲になり随分と変わった、具体的には事あることに彼女を思い浮かべ少しネジが飛ぶ、まるでどこぞの三人衆に近い感じに飛ぶ。

 

「カリーナ、戦術データってあらあら、どうしちゃったの指揮官は」

 

「本部から誓約システムの指輪が届いてそれについて説明したらああなっちゃいましたわ、可愛らしいですよね」

 

「へぇ、届いたの、他の基地じゃこれ一つで相当揉めるみたいよ」

 

と指輪が収められている箱を片手にFALが呟く、彼女の言う通り他の基地では割りと騒動の種になるこの指輪、だがこの基地においてはそんなことはないと断言できてしまう、指揮官が渡す相手は一人しか居ないのだから。

 

なのでFALも眺めるだけ眺めてから箱を書類の上に置き未だPPKとのそんな関係に妄想を咲かせてウキウキな指揮官に近づいて

 

「ほぉら、帰ってきなさい指揮官」

 

「わわっ、あ、FAL来てたんだ」

 

「そ、相当、妄想に花を咲かせてたようね……」

 

驚いたように目をパチクリさせてる指揮官、それを見て引きつった笑みを浮かべつつこの娘本当に変わったわねぇと感傷深く考えてしまうFAL

 

それから指揮官は指輪が収められている箱を手に持って、数瞬考え、よしっと息込んだと思ったら

 

「じゃあ、PPKに渡してくるね!!」

 

「それはなりませんわ指揮官さま!?」

 

「いやぁ、指揮官は見てて本当に面白いわよね」

 

ふえっ!?とカリーナの血相変えた声に驚き動きを止める指揮官にFALの若干呆れた声、少しは考えてはいたが本当にその通りに指揮官が動き出すとは思ってなかったのだ。

 

だが止まられた本人は本気で理由がわかってない、好きで特別な人に渡すのならば別に今でもいいのではと考え行動を起こしたら何故か止められたという認識なので何で?という顔でカリーナを見つめ、見つめられたカリーナは彼女の前まで行き視線を合わせてから

 

「いいですか指揮官さま、結婚指輪と言うものは特別なのです、そこは良いですね」

 

「うん」

 

「そして誓約も特別であり、人形にとっては一生に一度の体験です、それをあっさりでは流石に可愛そうですわ」

 

「そうなの?漫画とか小説とかだと、あんまり大掛かりな感じじゃなかったし、この間読んだ登場キャラは最速で最短で一直線って感じだったし」

 

「何処のごはん&ごはんが好きな少女よ」

 

知識としては確かにあったのだろうがどうやら読んでた物は大体あっさり風味でそういう告白する場面が多かったようでそれを基準にしてしまったらしい

 

それを聞いたカリーナはうぅんと悩む、確かに間違ってはいない気もする、するが今回とそれは別の問題だと告げてから

 

「今回は相手に、まぁPPKなのですが、彼女に一生思い出に残るような、そんな告白をしてみるのが良いと思いますわ」

 

「そうね、丁度ほら、お誂え向きに明日はバレンタイン、その時に渡すのが一番良い思い出になるわよね」

 

「おお、確かにそうだね!うーん、結婚とかもやっぱり難しいんだね」

 

その時、指揮官の通信機が鳴る、これは主に外部での任務に行っている人形からなので嫌でもスイッチが入り、繋げてみれば

 

《あ、エルフェルトです!今、結婚の話してました?してましたよね!?》

 

「冗談染みた地獄耳ね……」

 

「最近、エルフェルトさんが警邏に出ると捕まった『男性』が改心する確率が100%になって助かってるって街からお話が来てますね」

 

え、なにそれと困惑の声を上げるFAL、カリーナの言う通りエルフェルトが警邏に出て不幸にも彼女の前で悪事を働いてしまった男が捕まれば、何故か『求婚』される。

 

しかも怒涛の勢いであれこれ語っていき、最後には初対面の相手に胸の谷間から婚約届を出して判を迫ってくるのだからある種の恐怖を感じ、もう二度と悪事なんて働くかと考えるらしい。

 

「してたけど、解決したよ?」

 

《そうですか……あ、ごめんなさい通信切りますね!!》

 

何かを見つけたのかエルフェルトは少々乱暴に通信を切る、その間際「待って下さい、ちょっとお話を、判を!」とか聴こえてしまったが指揮官は今日も頑張ってるんだろうなぁとのほほんと考える。

 

が意味がわかっているカリーナとFALの二人は曖昧な笑みを浮かべつつ、今日も街が平和に近づいたわねと尊いその犠牲から目をそらすことに決めた。

 

「こほん、まぁ指揮官、明日は勝負よってもう贈るものも決めてるんだっけ」

 

「勿論、準備も終えてる、この指輪が寧ろ想定外だったかな、でも大丈夫!」

 

グッとサムズアップをしてからあ、じゃあ仕事に戻るねと彼女は書類と箱を大事そうに抱えてデータベースを去っていく、それを確認してからカリーナは先程FALから渡された戦術データを読み込ませ、FALは不備がないかを確認しながら

 

「明日はまた面白いことになりそうね」

 

「ええ、きっと楽しいことだらけですわ……私もチョコ欲しいなぁ」

 

「あら、私からでいいならあげるわよ?」

 

「本当ですか?助かります、ここって頭使う仕事多くて手軽に取れる糖分が欲しいんですよ」

 

ブレないなぁこの娘もとFALは苦笑しつつ彼女用の手軽に摘めるチョコの制作を始めた、そして翌日、恋する者たちの聖戦が始まる。




最速で最短で一直線のごはん&ごはん少女とかヒントが答えになってる感、そもそもあれは少女漫画ではない(無言の腹パン

例えオリジナルじゃなくても求婚活動を疎かにしない飢婚者の鏡

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