それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
時間は少し遡り、まだ指揮官とPPKが互いが作ったケーキを美味しく食べている時間帯のスプリングフィールドのカフェ、そこではバレンタインという事で配られたマフィンを食べる人形たちで賑わっている。
そんな光景を見つつ昨日ヴァニラに『お礼』の為のチョコレートを用意しただけだと言うのに暴走した思考、自分はここまでチョロい人形だっただろうか、まずそこから考えることにしたのはカフェのマスターであるスプリングフィールドなのだが、その思案するさまがあまりにも分かりやすく、一応バレンタインのマフィンを配ってる時は取り繕ってはいたのだがそれが終わり暇な時間が出来た瞬間に剥がれ始め、今では
「……あれ、どうしたのにゃ」
「なんだか、少し前のPPK見てる気分ね、いや、まさかね」
「おいやめろ、その場合は私に被害が来る可能性が急激に高まるにゃ」
「何謙遜してるのよ、貴女のお陰でPPKはあそこまで成長したって聞いたけど?」
IDWとFALに悟られるくらいには様子がおかしいほどにはなっていたのだがそんなのをスプリングフィールドが気にする余裕は現在の彼女にはない
(たかが、たかが出会ってまだ数日、話した回数もそんなじゃなく、あまつさえ彼女の趣味嗜好も知っている、だと言うのに私が惚れる?あの数日前の会話で?嘘ですよ、私そんなにチョロく……って何で惚れてる前提なのですか!?)
思考をリセットするように咳払いを一つ、が何ともタイミング悪くカランカランとカフェの扉が開き、何時ものように挨拶しようとそっちに顔を向けた時、件の彼女がそこに居た。
一瞬怯むスプリングフィールドだがすぐに気を取り直してカウンター席に座った彼女にお冷を出しつつ。
「い、んっん、いらっしゃいませ」
「やっほスプリング、いやぁそこかしこで仲良くしてる所見れて幸せよ~」
「(ムカッ)そうですか、ご注文は?」
「コーヒー、あとマフィンも頂戴」
畏まりましたとコーヒーとマフィンの準備を始める、その間もヴァニラは店内を見渡し和気藹々とする戦術人形たちを見てはその頬をだらしなく緩ませ幸せそう表情を浮かべる。
普段どおりブレないな彼女でありスプリングフィールドもそれは理解してるし何もその顔を見るのは今回が初めてではない、ないが何というか面白くないと感じてしまい
「(ああ、もう!)コーヒーとマフィンでございます……」
「ありがとって、大丈夫スプリング、元気ないと言うか声に覇気がないけどさ」
「え、あ、いえ何でも無いですよ、強いて言うなら今日のマフィンを作るのに少し夜更かししたくらいです」
「なるほどね、でも前に私に言ったみたいに仕事にも美容にも良くないわ、たとえ人形でもね、スプリングの綺麗な顔に隈なんて似合わないもの」
彼女的には何時ものノリで行った軽口に近いモノのそれ、だが今のスプリングフィールドには無意識だとしてもメンタルモデルにダイレクトに響いてしまう
なのでスプリングフィールドも何時もの調子で返そうとしたのだが体温が不自然に上がったことに気付いた瞬間
「そ、そうですね。気をつけます(いやいや、何で急に素っ気なくしてるんですか私!?)」
「はは、ごめん大きなお世話だったね、スプリングはその辺りしっかりしてる人形だから大丈夫か」
今の言葉をどう捉えられたのかは分からないがヴァニラは申し訳なさそうに笑った所を見てスプリングフィールドは自分でも少しやりすぎですと自己嫌悪に陥る。
そして忘れているが今日は普通に他にも利用客は居るわけであり、先程のように今朝からスプリングフィールドの様子がおかしいと気付いてる人形も居る、がその殆どは見て見ぬふりと言うかとりあえずそっとしておこうという結論に至る。
「え、なんかラブコメ始められたんだけど」
「マジか?マスター、お前もそっちのタイプのクソザコなのかにゃ?もう勘弁するにゃ」
小声で話し合う二人は除いてだが、それも今のスプリングフィールドの耳に届くわけもなくそれを見て更に二人は驚愕してしまう、彼女はRF部隊の隊長を務める存在、それがいくらカフェが喧騒に包まれているとは言え割と距離が近いはずのこの小声をスルーするというのはありえないはずだからだ。
「なになに、二人で何話してるのよ」
「べっつに~?それよりもマスター放おって置いていいの?すっごい顔で見てるけど」
「ん?あれ、どうしたのスプリング」
言われえっとなるスプリングフィールド、その反応を見てIDWはマジかよあれ無意識で出した表情だって言うのかにゃと驚く、先程の彼女は睨んでいたわけではないが何というか不満げな顔になっていたのだ。
だが指摘されまで気付けず、そう言われ自覚してしまうとまた体温が少し上がり頬が染まり始めてしまう、恥ずかしさではない、今しがた無意識とは言え思ってしまったことを思い出してしまったからだ。
(え、わ、私今、ヴァニラさんがFALに話しかけたのを……不満に?)
なんで、などと疑問に思う必要はない、だって流石に鈍感ではない彼女はこの答えを分かっているから、それから彼女は黙ってしまう、FALは流石にやってしまったという顔になりIDWはハイハイ撤退にゃと彼女を連れ代金を払って撤収する。
気付いたから、次に彼女と話してしまえばポロッと話してしまいそうだから、ヴァニラが話しかけても何とかボロが出ないような無難な答えに急に変わってしまう、そんな事すれば彼女が勘付いてしまうかもしれないというのに。
(私は……こんな脆かったのでしょうか)
或いは元から脆いそれが今になって気付けたのかもしれない、ヴァニラがカフェから居なくなればもしかしたらと思ったが今日に限って彼女は此処に留まる、理由はわかっているがその理由がスプリングフィールドにとってやはり面白くないと感じてしまう、それが止められない
だからだろう、カフェが閉店する時間になり、ヴァニラが出ようとした時に思わず声を掛けてしまったのは
「ヴァニラさん、少し宜しいでしょうか」
「おっと、ん?何か用かしら?」
立ち止まり振り向いた彼女に間髪入れずに包装されたそれ、彼女の名前が書かれた紙が挟まれたチョコレートを差し出す。
「……黙って、受け取って下さい」
「え、本当にチョコ!?」
「叫ばないでくださいよ!?それに、それはあれです、お礼のチョコですから、ヴァニラさんが来たお陰で我々も、何より副官が助けられたというお礼です」
「いやいや、だとしても最高に嬉しいよ、ありがとスプリング、大切に食べるしホワイトデーは楽しみにしてなさい」
ヒャッホイと言うテンションで受け取りカフェを出ていくヴァニラの背中を見送りつつスプリングフィールドは静かに呟いた、その顔は
「人の気も知れないで、本当にあの人は……」
綺麗な、恋する乙女の顔になっていた。こうしてバレンタインは終わりを告げる、因みにだがBARも当然ながらその日は開店するのでヴァニラがチョコの自慢を彼女の前でして割りとガチで怒られたとか何とか
Q どう、発展しそう
A PPK以上に恋愛クソザコにしたいし何だったらあの独身整備士もクソザコにしたいからどうなるか分からない(本音)
バレンタインを二話に分けるとか作者の身体はボドボドだぁ!!!