それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

19 / 794
困ったときの執務室


和菓子に合うのはやっぱりお茶です

舞台はいつもの執務室、今日も今日とて戦後処理や装備開発等などの書類に追われる指揮官と珍しく書類を見ながら難しい顔をするM1895、時計はそろそろ15時を指そうとしていた

 

「ぬわー、足りないものだらけだよ~」

 

「徹甲弾は揃った、がやはりコア不足の問題はキツいのう」

 

「それに練度上げるのは模擬戦とかカリンちゃんが毎日頑張って纏めてくれる作戦報告書でどうにかなっても上がった分を補う増幅薬も足りなくなってる……」

 

「無い無い尽くしか、嘆いても仕方がないがな」

 

最近になってバタバタと戦力強化を行ってみた所、当初は今ある在庫でどうにかなるだろうと踏んでいた指揮官だったが次第に足りないものが続々と出てくる状況に陥り日夜それをどうにかする日々を送っている

 

そして指揮官が伊達メガネを外したかと思ったら遂に机に突っ伏した、頭から湯気が見えそうなところを見ると思考を回しすぎてオーバーヒートを起こしたらしい

 

「しっかりせい指揮官」

 

「そうは言っても……あ、そろそろ15時だ」

 

「……分かった分かった、一旦休憩にしよう、煮詰まった状態からでは案も出ないだろうしな」

 

やったー!と両手を上げて喜ぶ指揮官にそういう元気はあるのじゃなと呟くM1895、そこで執務室の扉がノックされ聞こえてきた声は

 

「指揮官、少々宜しいでしょうか?」

 

「おろ?一〇〇式ちゃんだ、いいよ、入って入って」

 

「では、失礼します」

 

入ってきたのは赤いマフラーを首に巻き黒の長髪、日本人形を思わせるような顔立ちの少女は第一部隊所属の【一〇〇式機関短銃】その手にはお盆と大福がそこそこな量乗っていた

 

「ほう、大福とは珍しい、これはどうしたのじゃ?」

 

「えっと、食べたくなって材料を揃えて作ってみたのですがちょっと張り切り過ぎちゃいまして、それで丁度15時でしたのでよろしければと思いまして」

 

「え、これ一〇〇式ちゃんが作ったの!?食べる食べる!」

 

「と言うことじゃ、一〇〇式、お主もどうじゃ、流石にこの量をあやつもわしも食べ切れぬしな」

 

「あ、はい、ではご一緒します」

 

既にソファに座っていた指揮官がポンポンと自身の隣を叩く、一〇〇式もそれに従って腰を下ろしM1895は大福ならお茶かと棚から茶葉と急須を取り出して準備を始める

 

数分後、お茶を入れ終えそれぞれに配られ早速と指揮官が大福を手に持ち一口

 

「美味しい~、凄いね一〇〇式、和菓子を作れるなんて知らなかったよ」

 

「うむ、美味じゃな。しかし材料を揃えるだけでも大変だったじゃろう」

 

「いえ、材料自体はカリーナさんも手伝ってくれましたから、ただ作るのが苦労しました……」

 

その時を思い出してるのか目を瞑りながらそう呟く一〇〇式、彼女自身の言う通り材料は揃っても作るとなるとレシピの資料を読んでも細かいところがよく分からなかったりかと言って聞こうにも大福を作ったことがある者が居なくそれもできない中。試行錯誤を重ねに重ねてできたのが今回の大福だ

 

第三次世界大戦後の世界において文明は滅亡寸前であり当然料理に関する資料はかなり失われ和菓子となると職人が感覚でっていうのも多いので特に再現が難しい、それをここまでできた一〇〇式の腕前は中々のものである

 

「一〇〇式ちゃんって他にもなにか作れたりするの?」

 

「えっと、おはぎも作れます」

 

「意外と芸達者じゃな、指揮官せっかくだからお主もなにか作れるようになってみてはどうじゃ?」

 

「え、これでも洋菓子ならいくつか作れるよ?それに料理だって作れ……二人共どうしてそんな顔で私を見るのかな?」

 

刹那、執務室の空気が変わった。驚愕の顔をするM1895、思わず指揮官の顔を見つめてしまう一〇〇式、そんな二人の反応に困惑の色を強める指揮官

 

誰が思うだろうか、この能天気で若干鈍臭そうな指揮官がキッチンに立ち料理をしている姿など、二人の反応はつまりそういうことなのである

 

「もしかして、私家事も何もできないとか思われてたりする?」

 

「え、えっと」

 

「正直、思ってた。すまぬ」

 

「酷い!?これでもここに来る前は家事も炊事も全部こなしてたんだよ!?」

 

副官からのストレートな物言いに指揮官が悲鳴にも似た叫びを上げる、しかし今までのここでの生活を見ればそう思われても仕方ない、口には出さないが一〇〇式は心の中でそう思わざる負えなかった

 

もしかして二人だけじゃなくてこの司令部の子たちみんなにそう思われてるのでは、指揮官の頭の中で確信に似た閃きが走りならばと拳を握りしめ

 

「よーし、なら次暇な時に私の腕前を見せてあげようじゃないの、リクエストあれば言ってくれれば作るよ!」

 

「あ、なら私、指揮官が作ったパンケーキが食べてみたいです」

 

「まっかせて腕によりをかけて作るから」

 

「それはよいが暇は何時来るじゃろうなぁ?」

 

M1895の少し意地悪な質問に固まる指揮官、これは暫く暇はないのだろうなと勘づいた一〇〇式は覚えてさえくれれば何時でも大丈夫ですよと伝えると指揮官は一度頭を下げてからごめんね……まだまだ新米司令部は辛いよと落ち込み気味で答える

 

それからまた大福を楽しみながら15時のおやつの時間は終わり、一〇〇式は次はおはぎを作ってみますねと執務室を後にし指揮官と副官はまた無い無い尽くしからどうリカバリーして行くかに頭を悩ませながら案を出し合うのであった




無い無い尽くしの司令部、コアもお薬も足りなぁい

料理の資料やら職人感覚での下りは思い付きで書いてます、でもあの世界で和菓子とか作るの難しそうって思ったけどFNCちゃんが大福とか生八ツ橋とか言ってるから既に量産されてる・・・?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。