それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
別名 お嬢様の皮かぶった指揮官 第二の指揮官
【Karabiner 98 kurz】あまりに長いので大概のものはカラビーナー、またはカーちゃんとか呼ばれる、彼女の休日の朝はそれなりに早い、ベッドから起きた彼女はせっせと着替え身だしなみを整え、そして化粧も忘れず、姿見鏡でおかしなところがないかをきちんとチェックをし、どうやら無かったようで満足げな笑みを浮かべて、一つ頷いてから部屋を出る。
意気揚々と向かったのは中庭、手にはパンの耳などを細かく刻んだものが入っている器、彼女は今日の朝は小鳥たちに餌を上げるという何とも優雅なスタートを切ろうと考えたのだ。
「る~る~る~」
パサッと餌を撒いてみれば目論見通り小鳥たちが集まり食べ始める、それを見てキラキラした瞳になり、頃合いを見てもう一度撒く、この世界、どこから現れたのかワラワラ集まり始める……鳥、既に小鳥だけではなくなりつつ合ったがカラビーナーは気にせずにそれを眺める。
「うふふふ」
満足満足と言った感じに瞳を閉じてうんうんと頷いているとクルッポーと言う鳴き声が聞こえ、彼女はまた餌を食べに新たな鳥がと目を開けた時、固まった。
居たのは鳩、だが問題はその数だ、正面に数十羽、左右に合わせ10羽、背後に5羽、簡単に言えば包囲されていたのだ。
先程から打って変わった光景、下がろうにも動けば飛んで強襲されるだろうと考えれば動けなくなる。
「……ふんっ!」
だが彼女ここで前方の鳩を脅かすためだろう思いっきり地面をドスンと踏んだ、第三者が見ていれば間違いなく何故その行動を取ったと思うだろう、だが彼女にはプランがきっちり存在していた。
驚かす→飛ぶ→突破、何ともシンプルでかつ……
「ひゃああああ!!??」
ぶっちゃけ彼女が襲われる未来が見えきっていたプランだろう、確かに飛ぶまでは彼女のプラン通りだったが彼女は自分の足の遅さを軽く見すぎていたし、鳩の素早さを舐めていた。
端的に言えば現在彼女は鳩から逃げていた、餌がまだ入っている器を大事に持ちながらなぜか飛ばずに走って追ってくる鳩から全力で逃亡していた、その顔に先程までの優雅さは欠片もない。
(器を放棄すれば終わるんじゃねぇかなぁ)
今更だが中庭はカフェからも眺めることが出来る、そしてその面白い光景をMG3はコーヒーを飲みながらそんな事を思いつつ眺めていた。
数分と続いた本人は割と真剣に命の危機を感じている壮絶な追いかけっこの終わりは
「ふにゃ!?ぎゃあああああ!!」
「あーあ」
躓いて転け、更に不幸なことに宙を舞った器の餌は無情にも彼女に降り注げば後に続いているのは鳩たちの襲撃、淑女を名乗る彼女の口からはとてもそうは思えない悲鳴が中庭に響き渡る、そしてMG3はそれを見て
(なんか前も同じ光景を見た気がするな、あん時は指揮官だったが)
数十秒の鳩の蹂躙、だがカラビーナーはうがあああ!!と暴れ鳩を振り落としつつ起き上がり上がった息と身なりを整えて、パンパンと服についた餌や羽根、汚れを簡単に叩いて落としていき最後に帽子を直して
「……まぁ、こういう日もありますわ、明日は上手くやれます、ええ!」
(ポジティブなこって)
という事で少々彼女の描いたものとは違うものになってしまったが朝の餌やりは終わったと言わんばかりの一言を呟いてから彼女が次に向かったのはカフェ、朝の優雅なコーヒーをと考えたのだろう。
カランカランと扉を開け、彼女はカウンター席へと一直線に向かいよいしょという掛け声が聞こえそうな頑張りで椅子に座ってから
「GutenMorgen、マスター。コーヒーとマフィンを下さいませ」
「おはようございますカラビーナーさん、畏まりましたすぐにご用意いたしますね」
スプリングフィールドが準備に入れば暇になるカラビーナー、ブラブラと足を揺らしつつ微動だにせずに待つことにする、その姿だけを見ればお嬢様と言っても過言ではないだろう、その少し前の惨劇を思い出さなければだが。
なのでMG3は絶賛震えている、割と我慢しているのだ、しかし此処で笑ってしまえば彼女は間違いなく不機嫌になり悲しげな表情になって最後には啜り泣く、それも間違いなくこちらが悪いという泣き方で。
「おまたせ致しました、コーヒーとマフィンでございます、砂糖とミルクはこちらにございますのでって流石に知ってますか」
「ええ、問題ありませんわ」
ニコリと笑ってからコーヒーを一口飲んだのだがその顔のまま小刻みに震え始めた、どうやらブラックで飲んだのがいけなかったようだ。
だが自称でも淑女、落ち着いてコーヒーに角砂糖とミルクを入れ直し飲み直す、ふぅと息を吐いてからマフィンを楽しむ。
「やはり朝はこうではないといけませんわね」
(ツッコミ待ちじゃないのは分かる、分かるんや、でも入れたくなるのは仕方のないことや)
絶対に無理してブラックで飲んだろお前と言いたくなる衝動を抑えるガリルに気づく素振りもなくニコニコとコーヒーとマフィンを楽しむ、とここでまたカランカランと扉が開かれ入店してきたのは
「あ、カラビーナーだ、GutenMorgen!」
「GutenMorgen、カラビーナー、朝食ですか?」
「あら、お二人ともGutenMorgenですわ。ええ、先程まで中庭で鳥たちに餌を上げ、今はこうして朝食を頂いてますわ」
お、そうだなとMG3とガリルは同時に思った、が口にしないのは彼女達の最後の優しさだろう。
二人もカラビーナーと同じものを注文してのんびりとした朝食の光景が広がる、特にマフィンを食べればカラビーナーと指揮官が殆んど似た反応をするためPPKは密かに見てて飽きませんわと微笑んでいるが件の二人は全く気づかずに楽しみ数分としない内に完食してしまう。
「ふぅ、ごちそうさまでしたわ、本日も大変美味でしたマスター」
「ありがとうございます」
「ではお二方、わたくしは失礼いたしますね」
ペコリと優雅に礼をしてからズレた帽子を直し彼女はカフェを後にする、朝食を終えたがまだまだ一日は始まったばかり、カラビーナーはこの後はどう過ごしましょうかと考えつつ基地内を歩いていくのであった。
その数分後、明らかに全力疾走ではない速度の大福を全力で追いかけ回す優雅さの欠片も感じられないカラビーナーの姿が目撃される、尚、捕獲はできない。
よし、優雅だな!!
という事でガチャから出てきてくれましたカラビーナー嬢です、やったぜ!!
明日どうすっかなぁ、そろそろイントゥルーダー周りとか終わらせて延々とグダグダの話しかける権利欲しいしなぁ(ちらついて仕方ない侵入者の影