それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
S03地区、一面銀世界に覆われ時より吹雪も吹くこの地域、鉄血に制圧されたこの地域の司令部に彼女、イントゥルーダーは居た。
M1895の洗脳の失敗から一ヶ月ほどこの地に身を潜めていた、別に作戦が失敗したからではない、確かにあれは痛手ではあったものの何も一ヶ月も大人しくしていなければならないほどではない、ではなぜか
(今は、『どっち』だ……)
額に手を当て電脳の処理をするが半分近くにエラーの表記が現れる、これでも安定してきたほうだと思えばイントゥルーダーは自然と自嘲気味の笑みをこぼしてしまう。
こうなったのはあの作戦後、落ち着いたと思っていたのだがそれからと言うものの彼女のメンタル部分に異常を来す様になっていた、原因は既に分かっている。
彼女本来のメンタルと脳に使われている『レイラ』の人格がぶつかり合っているのだ、本来であればあり得ない話なのだがイントゥルーダーはあの時、その死んでいたはずの人格を被った形で行動していたが為にそれが意識を持ち起きてしまったと彼女は考えていた。
(笑えるわね、こんなオカルトを本気に思うなんて……でもそれ以外には考えられない、ちっ、やはり迂闊にナガンと……)
そこまで考え思わず苦い顔になる、たかがグリフィンの人形を彼女は今愛称で思い浮かべてしまったのだ、それくらいに今彼女の意思は混濁していた、少しでも油断すれば乗っ取られるのではないかと考えるほどに
そんな彼女の部屋の扉が開かれ他のハイエンドモデルが二人入ってくる、片方は白髪の長髪の武人肌と言う感じの女性、もう片方は黒のサイドテールの活発そうな少女
「やっほー、元気?」
「何か、用かしら?」
「お前の指示通りに404を指定位置まで追い込みが完了した」
「そう、思ったより早かったわね……」
ぐったりとまでは行かずともしんどそうなイントゥルーダーに黒のサイドテールの少女【アーキテクト】は心配そうに見つめ、白髪の長髪【ゲーガー】が腕を組み
「うっわ、しんどそうだね~、お水飲む?」
「そこまで深刻なのか、お前の状況は」
「はっきり言えば、あまり時間は残されてないわ、このままじゃ良くて相打ち、最悪はレイラに奪われるわね」
「そうか、だが本当に来るのか?はっきり罠だと分かるだろうこんなの」
ゲーガーの言葉にイントゥルーダーは笑う、それは自信に満ち溢れていた、彼女が言った来ないと言う未来なんて有り得ないと言外に語っていた。
「しかし、何故そこまであの『眼』の適合者に拘る、聞いてる限りではあれが機能を十全に持ってしまえば鉄血は一気に不利になるぞ」
「それは、あの娘に感情も何もなければ、が頭に付くわよ」
「うわえっぐーい、元々はあんな子供から感情も何も奪って生体パーツにするつもりだったってこと?」
おちゃらけた感じのアーキテクトに睨みを利かせるゲーガーだが彼女は反省する素振りもなく笑みが返ってくるだけでありイラッとするがイントゥルーダーが説明を続けていいかと言われ黙っていることにする。
「でもあの娘は人形の扱われ方を知ってしまった、人間がしていることを知ってしまった、人間にされたことを覚えてしまった……いくら、抑えつけてもあるのよ、彼女には憎しみが、恨みが」
「……それがどう作用する、まさか憎しみがあるからこちらに付く、とかは言わないよな」
「そのまさかよ、人間って意外と感情に振り回されるの、まぁそれは私達人形だって変わらっ……!?」
突如、頭を抑えるイントゥルーダー、が特に慌てる様子がない二人、と言うのもこれが初めてではない彼女がこの地区に来てからと言うもののほぼ毎日と言っていいほどにこの症状は見られているからだ。
なので最初こそは慌てはしたが今では日常的なものとして認識され、更に言えばこれが出たときというのは
「【……はぁ、何言ってた、こいつ?】」
「お、レイちゃんやっほ」
「機密事項だ、お前に答える訳にはいかない」
【レイラ】が主人格として分捕った時である、先程はぶつかり合っているとは書いたがこのようにぶつかりあった上で互いが互いに主人格を奪い合っているという所まで今は来ていたりする。
これを最初に見た二人はその場でイントゥルーダーを処理するか否かで悩んだが何故かアーキテクトが
『え、いいじゃん、このままどうなるか見ていこうよ、ってことでよろしく、レイちゃん!』
一応、こんなのでも上司という立場のアーキテクトがそう言うならばとゲーガーも従ってはいるが本音を言えばこれはいいのかと思ってたりもする。
なので彼女が前の時はこちらの情報は可能な限り教えていない、その場で出来る雑談、それだけに留めている。のだが
「うーん、ユノっちの眼について?」
「アーキテクト!!!」
「うひゃあ!?いいじゃん別に~、作戦云々は……あ、やっべ」
「【作戦?なるほど、近々あるのか、話から見るにユノの基地からなんでしょ、ならナガンが出てくるか?】」
レイラが思考を巡らすその間、アーキテクトはゲーガーの折檻を受け沈む、こんな感じにゲーガーが幾ら黙っていようが上司のはずのアーキテクトがボロボロ喋るのだ、お前本当にハイエンドモデル何だよなと言うほどの情報漏えいっぷりに割と胃が痛くなりだしている。
因みにだがこの状態の時の会話の記憶はイントゥルーダー、逆にイントゥルーダーが前の時の会話の記憶はレイラに残らない。
「変な気を起こすなよ、お前を殺すにしても楽じゃないんだ」
「【起こせないわ、下手に動けばイントゥルーダーに主導権を奪っていることがバレるからね、今もこの状態は意識がなくなっているとだけで通してるんでしょ】」
「……アーキテクトの指示だからな、それに嘘はついていない」
「いってて、ゲーちゃん少し手加減ってのを」
「もう一度喰らいたいか?」
「うぅ、冗談が通じないの辛い、で時間的にそろそろ戻っちゃうけどさ、何かある?」
アーキテクトの言葉に少し考え、それから手短に、だが重要なことを彼女達に伝える、普通なら人間のそれを聞く筈がないそれをアーキテクトとゲーガーは聞き、そして
「オーケー、このアーキテクトさんに任せて!」
「ふん、私はアーキテクトの指示に従うだけだ」
「【宜しく……っ!】ッハ!?はぁ、はぁ、ごめんなさい、またシステムが落ちたようね」
「そのようだなっと」
ゲーガーが部屋のモニターを見ればそこには404が居たはずの地域の味方の反応がロストしたという表記、それを見てアーキテクトはにやりと笑い
「おっと、もう来たよ」
「来たようだな、私は出るぞ」
「ええ、ふふ、さぁ来なさい……どうせ、私も貴女も時間なんて残されてはいないのだから」
様々な思惑が交差するS03地区、彼女達の作戦が始まった。
という事で始まりました、イントゥルーダー決着編です。でもね正直言っちゃえば焦った感はある、道が真っ暗闇で見えへんねん……なのでグダる可能性も否定できないし短く収めようとトントンで進めちゃうかもしれません、すまぬ、スマヌス
アーキテクトちゃんって何かこうJK的なノリで書けるの割と楽しい、サブカルどっぷりだぞ絶対
……じゃあ私、アインズ・ウール・ゴウンに忠誠誓ってくるから