それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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見え始める、それが新たな一歩


少しだけ広がる彼女の世界

「ん……」

 

「目が覚めたか、気分はどうじゃ」

 

処置が終わり暫くして指揮官が目を覚ます、M1895が支えつつ起こしてから聞けば数回ほど瞬きを繰り返してから

 

「うん、少しだけ目の奥が痛いけどそれだけ、違和感もないし見えてるよ」

 

「それは良かったよ、目の痛みはまぁ少しすれば治まるだろう」

 

安堵の表情でペルシカはそう告げてゆっくりと椅子の背もたれに背中を預け、ふぅと大きく息を吐いた、今回のようなことは流石の彼女も初めてなのでなにか不測の事態が起きないかと緊張していたらしい。

 

だがFMG-9の表情だけが何故か晴れておらず、それに気付いたヴァニラが

 

「どうしたのよ、そんな難しい顔して」

 

「あ、いえ……その、ボス、今我々は『どう見えて』いますか?」

 

声に不安が混ざっていた、指揮官もそれには気付き、同時に質問の意図に気づいた彼女は何時ものような笑顔で

 

「大丈夫、『何時も通り』見えてるよ」

 

「はぁ、そうですか、良かった」

 

彼女が質問したのは自分たちが今までどおりに人間として見えているかという意味、目の調整を入れたことでそこが崩れてしまったのではないかと思ってしまったのだ。

 

なのでそれを周りに説明すれば、ヴァニラはなりほどと言った感じの表情を浮かべれば、指揮官がそれを見て笑う……そう『ヴァニラの表情を見て』笑ったのだ

 

「……指揮官、お主、今何を見て笑った?」

 

「え、何ってそりゃヴァニラさんの……か、お?」

 

先ずM1895が驚いたように質問した、そして指揮官は当たり前にように答えようとして、気付いた。

 

『見えている』今の今までここまで信頼するようになっても認識できなかったヴァニラの顔が、表情が今の彼女ははっきりと映っているのだ。

 

「指揮官、え、やだ、どうしようすっごい嬉しいんだけど?」

 

「ぼ、ボス、いえ確かに調整は施しましたがまさかこんなあっさり効果が?」

 

「本来なら時間は必要だ、でもヴァニラはそうじゃない、彼女はもう信頼されている存在だったからね、恐らくそれが作用したんだと思うよ」

 

ヴァニラが喜びの声を出し、FMG-9が続くように驚きの声を上げ、ペルシカが冷静に解説を挟む、だがその声には喜び、或いは感動に似たものが混ざっていた。

 

そして何よりこの場で一番驚いているのは指揮官だった、今の今まで信頼しているはずなのにカリーナやヘリアンのように顔を認識できず、何時も会話の際は表情が分からず少し苦労することが会ったヴァニラの顔が今ははっきりと『人』として見えているのだ。

 

なので彼女が次取った行動はその影響だろう、徐にベッドから降りて未だ喜ぶヴァニラの側まで行ったと思えば恐る恐る手を伸ばして、彼女の顔に触れた

 

「し、指揮官?」

 

「……あ、えぐっ、ひっぐ」

 

「指揮官!?」

 

感極まった、何も人の表情を見るのは初めてではない、だがヴァニラの表情がこうやって分かるようになったことが嬉しかった、だから感極まり涙が突然溢れてしまった。

 

この状況にヴァニラも触れられたことを喜ぶ余裕なんてあるわけもなく泣き出した指揮官をどうすればいいと思わず周りに助けを求めてしまう。

 

「へ、ヘルプ」

 

「なぁにヘタれてるんですかったく」

 

「ご、ごめんなさい、でもやっと見えて、それが嬉しくて、あれ、止まらない」

 

「ほれ、よしよし……全くヴァニラでこれではいつもの雑貨屋の店主なんかはどうなるんじゃろうな」

 

「ふふ、余程気にしてたんだろうね、仲間の顔がわからないってことを」

 

泣き止むまでM1895が優しく抱き、頭を撫で続ける、それから少しすれば涙も止まり落ち着いてきたようでそっと彼女から離れてヴァニラに向き合い頭を下げた。

 

「急に泣き出してごめんなさい」

 

「え、ああ、大丈夫よあれくらい、いやまぁ少し驚いちゃったけど、平気よヘーキ」

 

「それで、ボスたちはこれからどうするんですか?」

 

ヴァニラが指揮官にそう返しつつ優しく頭を撫で、FMG-9がM1895に聞けば、そうさなと一つ挟んでから指揮官を見つつ

 

「雑貨屋に行くつもりじゃ、あそこも長らく世話になっとるからな、恐らく認識できるじゃろうて」

 

「出来る、よね」

 

「ヴァニラが出来たなら大丈夫だよ、行ってらっしゃい」

 

「我々はもう少しここで作業してますので後で基地に戻ります、ごゆっくり行ってきて下さい」

 

「よっしゃ、気合い入れて残りも終わらしちゃうわよ~」

 

何やら作業を始めたペルシカ達に改めてお礼を告げてから指揮官とM1895はラボを後に、途中、指揮官は周りの本部の人達を見てみるがやはり彼女の眼にはマネキンとしか映らない。

 

やはり関わりのない他人はマネキンに写っちゃうんだなぁと思いつつ彼女達は雑貨屋の前まで到着したのだがその扉の前で緊張していた。

 

もし、もしここの店主が未だ認識できなかったらどうしよう、そんな不安が彼女を襲い扉を開けるのを躊躇させていた、だがそこはスパルタ副官、それを見抜いた彼女はスッと扉前の彼女を追い越して

 

「店主、居るな?」

 

「お、おばあちゃん!?まだ心の準備が!」

 

指揮官の叫びも虚しくカランカランと扉のベルがなれば店主の老婆は彼女達を見て、優しく、何時ものように迎えてくれる、そして今日はそれが彼女にとって初めての顔だった。

 

「あ、ああ、ああああ!!!」

 

「ど、どうしたんだい!?」

 

「呵々、全く心配し過ぎなのじゃ、どうじゃ、初めて見た店主の顔は」

 

「声からのイメージだけだった、でもその通りに優しい顔のお婆ちゃん……やっと、やっと見れた」

 

その言葉に店主が目を見開いて驚く、彼女が指揮官になり初めて来店してから事情を説明されその時からずっと怖いものを見るような彼女が今は泣きそうな、でも嬉しいんだと分かる顔で自分を見つめている。

 

気付けば店主は彼女の側まで歩き、目線が合うようにしゃがみ

 

「見え、るのかい?」

 

「うん、うん!!!」

 

遂に涙がまた溢れ始めた、それはどうやら店主も同じようでギュッと抱きしめ優しく頭を撫でる。

 

M1895はそれを静かに眺める、まるで祖母と孫が再会したような光景を見て、彼女はそっと両手の人差し指と親指で枠を作りそれに二人を収め一言

 

「少しずつ、あやつの世界はこれから少しずつ広がるんじゃろうな」

 

願わくば、それがまた閉ざされることがないことを、彼女は静かにそう祈りつつ、今日の光景を忘れないようにと電脳に焼き付ける。

 

暫くしてから落ち着いた二人はM1895も交え楽しげな雑談を交わし基地へと帰るのであった。




やっと、やっと書きたい話が書けました……いつか絶対にと思い続けてまさか200話付近まで書けないとは思わんだ

次回、アーキテクトちゃん「ひな祭りらしいじゃん?」
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