それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
アーキテクト、鉄血のハイエンドモデルであり先の作戦でその鉄血から離反し、この基地に保護された、一応対外的には捕虜又は鹵獲された存在として扱われているが実際は指揮官の眼をどうにか出来るデータを持ってきた恩人であり彼女もアーキテクトを気に入った節があるので外出などはまだ無理だが基地内であれば自由に過ごせる立場として収まった、無論、平日は働いてもらうが。
そんな彼女は持ち前の賑やかな性格でハイエンドモデルだということで警戒されているのにも関わらずそんなのお構いなしにコミュニケーションを取りたった一日、それだけで普通に会話するくらいにまでこの基地に馴染んでいた。
「あかりをつけましょぼんぼりに~」
だが彼女、ゲーガーが伝えてきたのだがトラブルメーカーであり、考えなしにあれこれ実行する少女でもある、しかもハイエンドモデルとしての性能をフルに使うものだから割りと質が悪い。
場所は、あれからもまだまだ何故か物が出てくる倉庫区間、現在彼女はどこで知ったかひな祭りの歌を口ずさみつつ何かを作っている、一応廃材や使ってもいいというものを使っているので問題にはならないが
「お花をあげましょ、桃の花~って無いじゃん?あ、造花見っけ」
ガサゴソと探し見つけた造花をそれに飾る、がその際に何故か電気ドリルとネジを締める音が聴こえたのは気の所為だろう。
「いやいや、何でネジで止める必要があるのよ」
「ん~、ほら、落ちちゃうかもしれないじゃん?」
思わずツッコミを入れたのは64式自、対してアーキテクトはそっちを見ずに答えればえぇという顔になる、という事でこの場にはアーキテクトの他に同じくひな祭りの準備のためにあれこれ探しに来た日本組が居たりする。
その中で相変わらず気合十分で準備に励む一〇〇式がアーキテクトが先程から口ずさんでいる歌の上手さに感心してから
「でもアーキテクトさん、我々の文化に明るいとは驚きです」
「そうだね。これだけじゃない、私は人類が生み出した色んな物に興味があってさ、こういった祭り事、歌やアニメやゲームと言ったサブカルチャー、とにかく色々さ、だからこそ私は鉄血と離脱することにしたんだけど~」
急に語りだしたアーキテクトに作業の手を止めて聞き入る、そう言えば聴いたこと無いのだ彼女が何故鉄血を離反したのかという理由を。
彼女達の視線に気付いているのかはたまた気付いてないのか、作業の手を止めずにアーキテクトは更に語る。
「人類の殲滅、それが鉄血の目的じゃん?でもそれって遂行されたら世界は絶対につまらなくなる、だってたかが戦うことしか考えない人形である私達から人類が考えたそれが生み出せるとは思えない、だったら……」
こうして人類の方に立ったほうが楽しめそうじゃん?顔だけを彼女達の方を向けニヤリと笑う、だがすぐにああでもと付け足し
「もしかしたら生まれるかも、か。まぁ私が可動してる間に出来なきゃ意味ないんだけど~」
「色々考えてんだなお前も、んでさ、それなんなんだ?」
いい話で終わりかけたがそもそも目的はひな祭りの準備であると思い出した62式がアーキテクトに聞けば彼女は意味深な笑みを浮かべて
「フッフッフ、これは人類が未だ生み出してないだろう自走式ひな壇『ひなダッシュちゃん』だ!!」
「あ、副官?ごめんなさい、少し良いでしょうか?」
「待って!?ち、違う、決して迷惑な発明じゃないから!!!」
何をどう聞けば迷惑な発明じゃないからと言えるのだろうかと本気で思う64式自、と言うより何故ひな壇を自走させる必要があるのかと、何よりそのひな壇には雛人形は数の都合上仕方ないとは言え飾られているのは
「どこから引っ張り出してきたんですか、このダイナゲート……」
「え、いやそれらしく作っただけだけど?」
「ハイスペックだなおい」
三人官女も五人囃子もダイナゲートがそれらしい衣装に身を包み飾られている、が肝心の一番上、内裏雛そこには衣装はあるのだが首から上がない、何故と思いつつそれをよく見れば中身が空洞らしくしかもご丁寧に人一人くらいならば入るだろう大きさだった
それを見た64式自、アーキテクトが何を考えているのか何となしに察して、微笑んだと思えば
「副官、やっぱり来て下さい」
「後生だから!!後生だから、通報はやめてぇぇぇぇ……」
「いや、ダメだろ」
無情にも副官に報告される、アーキテクトが半分ガチ泣きで抗議をするが64式自が止める理由がある訳もなく62式の冷静なツッコミが入る。
一方、一〇〇式は我関せずで普通のひな壇の飾り付けを進めていた、どうやら大体が終わり雛人形がどこかおかしくないかと確認のために後ろに下がった時、ガンとひなダッシュちゃんにぶつかり、しかもその衝撃で
キュイイイイインと稼働音が響いた、嘘だろと振り向くアーキテクト、そして冷静に分析をして
「……やっぱスイッチの部分適当にしたのマズかったかなぁ」
「聞こえてますからね!?と、止めれないんですか!?」
「ええっと、多分後ろのスイッチを切ればとまr……」
「てりゃあああ!!!」
一〇〇式の気合の入った声と同時にひなダッシュちゃんが大きく揺れ、黒煙を上げて停止する
「つ、つい蹴っちゃいました」
「いやぁ、こういった時の一〇〇式の行動力は私は素直に尊敬するよ、うん」
「まぁ、一件落着ね、一〇〇式、このひな壇はどこに持ってくの?」
「ひ、ひなダッシュちゃぁぁぁぁん……」
こうして危うく大騒動になりかけたひな祭りの準備は終わり、その日、物珍しい感じにそのひな壇を眺める指揮官達、だが何というか彼女には雛人形が
「なんかこう、独特っていうのかな、慣れないと少し不気味、あ、いや、否定するつもりじゃないよ?」
「話によると、夜に動き出したって怪談があるくらいだし当時も割と怖がられてた節あるけどな」
62式の言葉に一〇〇式も64式自もうぅんと悩みつつ、だが何というか否定も出来ない気もするのでと反応に困る。
が、それ以外は指揮官はひな祭りをしっかりと楽しんだ、主に菱餅などの料理がやはり彼女の興味を一番惹いたのだろう、本来であれば十二単衣もと思ったのだが今回は流石に
「予算が、ね?」
「残念ですが指揮官ならば着飾ると言うよりは料理のほうが良いと思いましたので」
「来年だな、来年。そん時はもう少し貯めておかねぇとな」
その時はPPKと指揮官、この二人を着飾ると決意しひな祭りは滞りなく終わるのであった、因みにだがアーキテクトはというと
「ダイナゲート雛人形ってどう思う?」
「可愛い!え、これアーちゃんが作ったの?」
生き残りのダイナゲート雛人形を持ってくれば指揮官にウケたのでひなダッシュちゃんの件は不問となった模様。
いや、その、普通のひな祭りをやるつもりだったんですがね、アーキテクトちゃんが任せろって……
因みにひなダッシュちゃんが正常に作動してた場合はボディの両サイドからアームが出て指揮官とPPKを内裏雛の部分にドッキングさせて停止しました、悲しいなぁ