それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ただちょっと、深く見過ぎちゃうだけよ


当たるも八卦当たらぬも八卦

『貴女は過去に裏切りにあって、そこで誰かを失っているね…これは大切な人、家族か恋人かは流石にそこまでは分からないけど』

 

『そして…何か禁忌を行おうとして挫折いや違う、恐れたが正しいかな、だからその全てを捨て逃げた』

 

『…駄目だ、これ以上は不思議と探れない、でも大体は合ってるわね?』

 

どこで聞いた、呟くと同時にヴァニラは目を覚ます、最悪な夢を見たと思いつつ時計を見れば10時を回っているのを見て流石に寝すぎたと彼女は苦笑する。

 

見れば彼女の自室である部屋には酒瓶が数本転がっており昨夜どのくらい飲んだかを堂々と物語っていた、だがそうでもしなければ少々やってけなかったのである、あのバレンタインのお返しとしてスプリングフィールドをレストランに誘ったホワイトデー、そこで出会った一人の人形の占い師

 

結論から言えばその占いは怖いくらいに当たっていた、それこそどこかで彼女の過去を聞いたのではないかと邪推してしまうほどに

 

(ああ、くっそ。赤の他人のたかが占いだってのに)

 

痛む頭を振って立ち上がり洗面所で顔を洗う、その時に鏡に写った顔は妙に疲れている感じで思わず苦笑してしまう、今日は大人しくしてるかぁ、それがヴァニラの休日の始まりだった。

 

場面代わり、カフェの開店準備をしていたスプリングフィールドは懐から一枚のタロットカードを取り出して眺めていた、それはホワイトデーの日に例の占い師が落とした『Ⅵ The Lovers』結局、その占い師はその後も見つからず今は彼女の預かりになっているのだが正直どうしたものかと悩んでいる。

 

だが、だが何となしにこれは捨ててはいけないと直感していた、何故かは分からない、しかし持っていなきゃいけないと思わせる何かがあった。

 

(不思議ですね、何の変哲も無いタロットカードなのに)

 

そこそこ眺めてからまたそれを仕舞って開店の準備を進める、だがその最中ふとあの日、ヴァニラが見せたあの表情を思い出してしまい、キリのいい所で手を止めてまたカードを眺める。

 

Lovers、正位置であれば『信頼』『恋愛』『合致』『感受性』逆位置であれば『虚無』『無視』『離別』『失恋』…あの時、自分が拾った際はどっちだった?そう考え思案する。

 

(正位置、ってこれ一枚じゃどう解釈もできません、強いて言うなら応援された?)

 

いや、そんなバカなと言うか何考えてるんですか私はと若干顔を赤くしつつ懐にしまう、そもそもヴァニラが何故あんな表情してたかを考える偶に出したというのにとため息を付きつつ利用客を待つことに。

 

コポコポとコーヒーメーカーの音を響かせ客を待つこと数分、カランカランと開いた扉を見ればFMG-9の姿、そこで先程のカードを思い出す、正位置、信頼…繋がったと

 

「いらっしゃいませ、FMG-9」

 

「おや、今日は私が一番乗りですか?へへ、ではマスター、コーヒーを一つお願いしますよ」

 

「直ぐに、それと少しだけお話良いでしょうか?」

 

「およ?珍しいですね、ええ、私で答えられることならば」

 

そこでホワイトデーの時の話をし、彼女の過去を何か知らないかと聞いてみる、FMG-9とヴァニラは長いことハッカーコンビをしていたのでなにか知っているかもと思ったのだが返ってきた答えは

 

「…いえ、すみません私もそこまでは、確かに長いことコンビしてましたがその時はその日をどうするかな日々でしたのであいつの過去を聞こうとかは殆んど」

 

「そう、でしたか。すみません、不躾な質問をして」

 

「それは大丈夫です、しかし占い師ですか、気になりますね」

 

せめて本当に占い師だったかどうかくらいまで分かれば良いのだがとFMG-9は呟く、スプリングフィールドも見たのはあの一瞬だけなので顔も何も見ていない、考えるだけ無駄か、などと思っていると指揮官の声と、それは聞き覚えのある声がカフェの入口前からしたと思えばカランカランと扉が開かれ入ってきたのは指揮官、副官、そして

 

「おぉ、しっかりしたカフェね、うんうん、良い兆しも見える、ここは凄く良い場所だね」

 

「でしょでしょ!それでここのマスターがってどうしたのスプリングフィールド?」

 

指揮官が彼女を見た時、射殺さんとばかりの視線をその戦術人形に送っていた。

 

その声は間違いない、色々大胆な格好をした戦術人形はあの日、ヴァニラを占った…占い師だと確信しゆっくりと口を開く

 

「占い師、まさか戦術人形とは思いませんでした」

 

「ああ、あの時の彼女さんじゃない、そう言えばあの時は名乗ってなかったね、私は【K5】あのお姉さんとは上手くいってるかな?」

 

「あれ、知り合い?」

 

「と言うには少々空気が硬いがのう、まぁ座るのじゃ」

 

副官に促され各自席に座り注文を済ませ、スプリングフィールドが運んできた際に彼女はそっとK5にあの時のタロットカードを置く

 

「お返しします」

 

「おお、拾ってくれたの、ありがとうね。これがないと占いができなくて」

 

占い、その一言に思わず苦い顔をしてしまう、がもう味方の彼女にこれ以上敵意を表した視線を送っても無駄だと考え直して一礼してからカウンターに戻ろうとした時

 

「マスターさん、もしかしなくてもあの時の占いが気になるかい?」

 

「…気にはなります、が貴女から聞くつもりはないです」

 

気にはなる、それは変えようのない事実でありそれは認めながらもかと言ってそれを他人から聞くつもりは一切ないという確かな意思を感じK5は驚くように笑ってから一枚カードを引けば『Ⅷ Strength』の正位置、この場で意味を解くならば自制心と冷静だろうかと彼女は解釈しつつ

 

「芯がしっかりしてるね。いやごめん、だとしたら私が悪いよ、謝罪する」

 

「ねぇ、おばあちゃん。もしかして二人仲悪いのかな?」

 

「分からぬが何かあったのは確かじゃな」

 

急なやり取りに置いていかれた指揮官と副官はそんな事を話しながら出されたコーヒーとココアを互いに飲む、それからは特に何かあるわけもなく、強いて言うならばFMG-9が彼女についてあれこれ聞いたくらいで時間は流れ、11時になった時、またカフェの扉が開かれヴァニラが入店したと同時に視界に入ったK5を見て

 

「…最悪ね」

 

「やぁ、また会ったね、お姉さん?」

 

「えっと、今日から配属になったK5ちゃん、何だけど知り合い?」

 

「まぁ、ちょっとね。そう、配属されたなら後でメンテナンスルームに来て、一応検査するから」

 

ギスギスする二人の空気にえ、大丈夫なのかなと本気で不安になる指揮官、この基地始まって以来の状況だったのだがその後は割と普通に接する二人を見て安堵したとか何とか。

 

K5、占いと題して過去を、そして未来を見てしまう戦術人形はこの基地の行く末が見えないことに小さく笑う、だって初めてだったから、だからこそ

 

(どうなるか、しっかり見せてよね)

 

見えないことばかりのこの基地に、ワクワクしてしまうのであった。




K5ちゃんの立ち絵が天の道を行き総てを司る者だとか言われたらそうとしか見えなくなった不具合、そのうちクロックアップしそうだなおめぇ?

PP-90ちゃん来たんだけど、回してたのマシンガンレシピのはずだったのに?

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