それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
指揮官達が寝静まった夜の基地、今や少々手狭かなと思い始めた密談室には割りと久しぶりというべきかPPKとP7を除いた暗部組がその場に集っていた。
「うむ、皆集まったな」
「えっと、二人ほど居ませんが?」
「それならば問題ない。あの二人は指揮官の側にいることが多くなったからな…些細な変化もアヤツは勘付く、今後は二人は余程がなければこの場には呼ばぬよ」
副官の発言に遠慮気味に発言するウェルロッドだったが彼女の言葉になるほどと言った感じに頷く、さらに言えば二人は元々指揮官のカウンターとしての存在なので実行組になることは殆ど無いのでこの場の集まりに居なくともそこまでの支障は出ないとも言える。
逆を言えば今この場に居るのは暗殺から全てをこなせてしまう者たちの集まり、その中にはサラッとカリーナも居るのがこの基地の微妙な異質さを引き立たせているだろう。
「ではカリーナも居るからな、手早く始めていくとしよう。先ずは先日の結婚式の際の警護、ご苦労じゃった」
「ま、言ってちょっかい出してくる奴らは一切居なかったので正直拍子抜けでしたけど~?」
「あら、良いじゃない。幸せなあの日に血を流す必要がなかったのだから」
グローザが笑いながら告げればFMG-9もそりゃそうですねと笑い返しコーヒーを一口、と言うのもあの場では彼女達は暗部としての仕事も並行して行っており、影として来賓の警護、または招待状無しで来る客の対応に備えていた。
のだが結果はFMG-9の言葉通り、平和そのものであり、思わずそんな事を言ってしまうほどだった、本当に強いて言うならばと言うレベルで起きたのははSuper SASSが偶々見つけて撃ち落とした不審なドローン、一応数回に渡り確認をとったが連絡無しだったので遠慮なしに落とした。
「あれ、結局なんだったのですか?」
「それが一切不明なんですよね、こちらからも本部に連絡して確認しましたがまるで分からず、他の基地から抗議文でも来るかとも思ってたのですが全く来ずって感じです」
「残骸は回収しませんでしたか?そこからなにか分かったりは」
「いえ、残骸からは何も、あれ自体は市販された物ですし…」
最後のFMG-9の言葉に全員がじゃあ何だったんだあれとなるが、結局考えた所で答えが出るわけでもないし一応調査は継続しておくということでこの話は終わる。
「ともかくじゃ、何事もなく指揮官には本当に良い思い出を残せた、本当に感謝する」
「顔を上げて下さい副官…私たちはただ
「…サラッと私達も崇拝者みたいな立ち位置になってませんこれ?」
何気なくカリーナが呟けばG3がとても穏やかなはずなのに底知らぬ恐怖を感じる微笑みを浮かべヒエッと声を上げそうになるのを堪える。
と、場が軽く冷えつつ和んだ所でグローザが
「で、何もお礼を言うために今日集まったわけじゃないでしょ?」
「失礼な、礼のために集めることもあるのじゃ…と言えたらどれだけ楽だったか、FMG-9」
「はいはいっと、驚かないでくださいよ、まぁ無理だと思いますけど」
副官の指示でFMG-9が出したのは一通の手紙、それは挙式の日にガンスミスから渡された祝電、当然それを知らない彼女達はこれが何なのかと説明を目で求めれば、副官はコホンと咳払いを一つして
「見ての通り、内容も普通の祝電じゃ」
「まぁ、それは分かりますが、これが一体?」
「では、種明かしです…」
ペラっと捲られた手紙の裏面、つまり宛名が書かれている面が彼女達に晒され、そしてそれを見たその場全員の空気が固まる。
それはそうだろう、書かれていた宛名は『
「これは、随分な所から来ましたわね」
「そうね、これはちょっと私も反応に困るわ」
「確か現状でグリフィン以上だという話があるとか言われてる民間企業、ですよね」
「そう聞いてますねってG3、どうかしましたか?」
ウェルロッドの声に彼女達はG3を見ればかなり難しい顔をして手紙を見つめ、それから何かを考えるように顎に手を当ててから、ふと呟くように
「この者たちは、どのようにして
「不明じゃ、もっと言えば何故このような形で接触してきたのかすら分からぬ…だが考えられるとすれば」
「指揮官の『眼』それかアーキテクトの事でしょうね」
ピリッと空気が震えたのを感じた、それにストップを掛けたのは今日までそのMSFの情報や動向、及び保有戦力などを出来る限り相手方に悟られないように集めていたFMG-9、彼女はスクリーンに映像を写しながら
「はい注目、現状で分かってるMSFについてですがはっきり申し上げますと、ぶつかれば十中八九、100%なんて数字が可愛く見えるほどでこっちが数瞬で蒸発する未来だけです」
「でしょうね、でも敵対はないのでしょ?いえ、それよりも副官はどうするつもりなのかしら?」
「わし個人としてならば、ジョーカーとして繋がりを握っておきたい…無論、この基地としてではないがな」
そこで今日自分たちが集められた理由を悟った面々、つまり彼女が言いたいのはMSFとはこの基地として公で繋がりを持つのではなく、我々『暗部』として半ば個人的に近い形で繋がるということだと。
勿論これもデメリットと言うか危険性がないわけではないが、基地で繋がるよりは抑えられるし最悪自分たちが責められるだけで済む
「それにしても、MSFねぇ、諜報方面も強そうなの?」
「強いなんてもんじゃないですよ、恐らくですが私とヴァニラでもセキュリティぶち抜いて向こうの情報を抜くなんて事できませんよあれ、それに情報の消し方も徹底しており紛争地域介入してるのにそれに関することも最低限のものしか出てこないってくらいですし」
情報特化であるはずのFMG-9がそこまで称賛するほど手際が凄いものなんだと思い知らされる面々、更に言えばと彼女は続ける。
「経営手腕というべきですかね、多方面との駆け引きが上手すぎます、相当慣れてる者が組織に居ないと出来ませんよ…まぁつまり自分たちじゃ逆立ちしようが勝てない組織ってことですよ」
悔しいですがねと付け足し彼女はコーヒーを飲みきりおかわりを淹れ始める、因みに勝てないというのは暗部としては当然ながら基地としてもというのも含まれている。
「とまぁ、現状は何もせぬ、だがもし向こうからコンタクト或いは何かしらの形で人物と接触した際は間違っても敵対はするな、それだけを今は頭に入れよ」
では、今日は解散じゃと暗部会議はお開きとなり、最後に部屋に残った副官とFMG-9の二人は、ところでじゃと先ほど聞きそびれたことを聞いてみる。
「情報収集じゃが、向こうに悟られてないという保証はあるか?」
「ぶっちゃけ無いです、何しても気づかれてそうなのが怖いんですよねぇ」
その声はとても疲れていた
とりあえずこの基地からのMSFへのスタンスを書いていくスタイル。基地としては難しいけど暗部としてならまぁ行けるでしょ理論
因みにアーキテクトの技術も余裕で手札として使います、てか交渉材料すくねぇなおい(白目
次回 可愛いの化身襲来かウィンチェスターの休日