それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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実は可動年数が長いIDWのお話


母猫気質な彼女

中庭に備え付けられているベンチ、その上で寝っ転がりながら社内報をダラダラと読んでいるIDWが居た、この基地のFMG-9の後方記事ではなくてグリフィンが出しているものだ。

 

(…にゃ?指揮官の結婚話が載ってるにゃ、まぁグリフィンとしては人形と人間で同性だろうと応援するって意味で良い宣伝になると考えての掲載だとは思うけど、これ少しは指揮官に対する印象が良くなるといいにゃ)

 

と言っても書いてあるのはどの基地のどのようなカップルか程度、しかしそれでも名前はあるのですぐに誰なのかは分かるだろう、一応この基地は先の作戦などで名は売れているのだからと思いつつチラッとその横の広告欄を見て軽く吹き出す

 

(あいつ、何さらっと広告乗っけてやがるにゃ…い、いや商魂たくましいとはこの事か)

 

いやぁ、この基地もどんどん手を広げてるにゃ~と社内報を畳みそれを頭の下に敷き、では穏やかな日差しを浴びて私はこれから寝ますという雰囲気をだだ漏れにしつつ目を瞑ろうとして…身体に軽い衝撃が走った。

 

気怠げに事態を理解しようと頭を動かせば自分のお腹の上に顎を乗せている【Gr G41】の姿、そしてよく見ればその視線の先にはフリスビー、つまり

 

「…遊べって事かにゃ」

 

「(パアッ!)ご主人様は忙しそう、だから暇そうなIDWに遊んでもらおうと思いました!」

 

因みにだが今日は普通の平日であるので指揮官が忙しいのは当たり前である、対してIDWは確かに暇ではある、今日は彼女が所属する第四部隊は待機という名の非番である、なのでこうして惰眠を貪ろうとしていたのだがどうやらそれがG41の眼に止まってしまったらしい。

 

考える、過去の経験上、この手の存在は遊べば遊ぶだけエンジンが掛かり更に遊べとなる、つまりこのまま彼女の言葉通りにしてしまうと自分の惰眠時間が消えてしまうのだ、ならばどうするか、答えは非常に簡単である。

 

徐に動き出した彼女にG41は期待の眼差しで見るが何故かIDWは芝生の上に寝転がってしまった、話が違いますと思っているとポンポンと隣を叩かれ近付いてみれば

 

「確かに遊ぶのもいいかもしれないにゃ、だがこんな穏やかな昼下がり、こうして昼寝をしてみるのも中々におつというものにゃ」

 

「そうなのですか?」

 

「おう、これは長年の経験から自信を持って言えることにゃ、騙されたと思って一度横になってみるにゃ」

 

改めてポンポンと隣を叩けば、G41は半信半疑に思いつつゴロンとIDWの隣に寝転がる、芝生の柔らかな感触(ネゲブ怒りの芝刈りによる産物)穏やかな日差し、少し冷たいけど逆にそれが心地よく感じる穏やかな風、来てから中庭では全力で遊んでばかりでこうして寝転がったことが無かった彼女にとって初めての感覚

 

「どうにゃ?」

 

「気持ちいいです…はうわぁ」

 

小さく欠伸をしてもぞもぞと丸くなりだすG41の姿を優しい顔で見つめるIDW、それから数分としない内に彼女からは気持ちの良さそうな寝息が上がる、それを確認してから自分もやっと寝れるにゃと目を瞑ろうとした…のだが

 

「いやぁ、見事な手際やなぁ」

 

「世界は今日は私に惰眠を貪らせるつもりが無いと見えるにゃ」

 

「なんや、寝るつもりだったんかいな、それはわるぅことしたなぁ」

 

何時から見ていたのだろうガリルがG41が昼寝を開始したタイミングで現れた、お蔭でまた寝るタイミングを失ったIDWは仕方ないにゃとゆっくりと起き上がり胡座をかく

 

「んで、何のようにゃ」

 

「用ってわけや無いんやけどな、見ててIDWが嫌に手慣れてるなぁと気になってな?」

 

「…まぁあれにゃ、昔取ったなんとやらってやつにゃ」

 

へぇ、何してたんや?と興味本位で聞いてきたガリルにIDWは昔を懐かしむような顔をしつつ、隠すようなことではないけどにゃと付け足し

 

「孤児院の手伝いしてたにゃ、その時に子供の相手は慣れたにゃ」

 

「ほぉん、孤児院のなぁ…勿論この基地に来る前やと思うけど何時のことなん?」

 

「確か、四年ちょい前かにゃ?」

 

それを聞いて驚くガリル、思ったよりも彼女の可動年数が長かったのだ、と言うより自分たちとそこまで変わらないと思ってたら実は先輩だったという方が驚きである。

 

対してIDWはガリルの反応が面白かったのか軽く笑い、それからゴロンと転がり、んじゃ私は寝るにゃと付け足してガリルの返事を待たずに昼寝を開始する。

 

こうして日中は穏やかに過ぎていき、業務を終えたIDWは自室に居た、彼女の性格を考えれば少々殺風景と言える部屋には数枚の写真が壁に貼られ、机の上には写真立てが数個並んでいた、写っているのは大体が子供たちとIDW、そして優しそうな男性。

 

「やれやれ、久し振りに子供を寝かしつけたにゃ」

 

そう呟きつつ机の上の写真立ての一つを手に取り眺めつつ椅子に座る、それにはその男性とIDWが並んでいる写真が入っていた、見れば何処と無くぎこちないと言うか、男性側は妙に緊張している印象を受ける写真。

 

彼はIDWが手伝いをしていた孤児院の院長、名を『レオン』元々は正規軍の人間だったらしいが止めて孤児院を開いたらしく、IDWが来たのは開いてすぐの頃、それから幾度と手伝いに入り

 

(私が、気付いてないとでも思ってたのかにゃ?)

 

有り体に言えばレオンはIDWに惚れていた、こんなキャラがぶっ飛んでる奴に惚れるなんてあいつも変わり者だったにゃと思わず思い出し笑いをしてしまう、だが彼は今はもう居ない。

 

ある日、孤児院が放火にあったのだ…主犯は人間原理主義の過激派、その孤児院は人間だけではなくはぐれ人形も引き取り保護していたのだがそれが癪に障ったらしい、IDWが駆け付けた時には孤児院は既に火に包まれており誰が見ても中に誰かがいれば生存は絶望的だと分かるほどだった

 

『姉ちゃん!』

 

『無事だったかにゃってお前たち、レオンは、レオンはどうしたにゃ!?』

 

『先生は私達を避難させて、それで…うっく』

 

その言葉で全てを理解してしまったIDWはただ呆然と火に包まれている孤児院を見て膝から崩れ落ちた…それから数日後、孤児院の子供たちを院長の伝手で何とか信頼できる別の孤児院に預けてから焼け跡になった孤児院を探索していたIDW

 

せめて炭だろうと形があるのならば墓に入れてやるにゃと探していた彼女が見つけたのは小さな小箱、見つけた場所というのはレオンの寝室に位置する場所であり開き中を確認してみれば入ってたのは

 

「…全く、さっさと伝えてくれれば答えてやったにゃ、私だってお前のことは嫌いじゃなかったにゃ」

 

写真立ての裏に一つの煤けた指輪がくっつけられている、彼がもし火災がなければ、次の日に渡そうとしていた、想いの籠もった品物、IDWはそれを愛おしそうに撫でて寝床に就くのであった




IDW@実は恋愛経験者

いや、思ったんですよねこの基地のIDWって何かオリジナルとは違う気がするなぁってそれで話を膨らましたらこうなりましたはい。

PKP来ましたヤッホイ

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