それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
いつだったか、はたまた話してないかもしれないが、我らが指揮官はこの基地で一度迷子になり半べそで体育座りしている所を発見された事がある、そしてそれは今もそれなりの頻度で酔った副官が笑い話としてよく語るので知らない者は居ない。
さて、では何故このような話を突然切り出したか、答えは簡単であり、この基地で二人目の
「…あっれ、此処さっき通らなかったっけ?」
迷子者が出たからに他ならない、ツインの縦ロールが特徴的な彼女は【PP-90】まだ配属されて数日と言う新人であり、だが一度は全体マップも熟読しているので人間と違い地形が頭に入ってない、もしくは忘れたなどはないはずの彼女は現在進行系で迷子になっていた、いや彼女の感覚ではこれは迷子になったという感覚はないだろう、その証拠に
「あれだよね、探検してるみたい!」
その目はキラキラしていた、あの指揮官ですらこんな状況になれば迷ったと絶望にくれるはずだが彼女にはそれがない、迷子になったという認識がないのだから当然なのだが、とにかくそのキラッキラな瞳でそのポジティブな思考で彼女が目指すは執務室、そして現在位置はそこから遠く離れた倉庫区間。
何をどうすればそこに辿り着くのか果てしなく疑問になるが彼女は居た、執務室がある建物と倉庫、どう見たって違うはずなのだが…
「でも物がごちゃごちゃしてる場所、もしかしてこの辺りは掃除が行き届いてないとか?」
ネゲブとG36が聞いたらブチ切れそうな言葉を吐きつつ彼女は倉庫を歩いていく、右を見ても左を見ても執務室へと続く道も無ければそもそもこの基地の人形と誰も擦れ違わない、そしていい加減PP-90だって何かが可笑しいと感じ始めた。
この基地に配属された時の説明ではかなりの人数が所属しているはず、何故擦れ違わない?疑問が電脳を巡り、そして答えに辿り着いた、急に纏う雰囲気を戦場にそれにした彼女は徐に折り畳んであった愛銃を展開させて構える
(まさか非常事態!?私が気づかない内に皆がやられちゃった!?)
でも静かだし、もしかして捕らえられたとか?淡々と素っ頓狂な思考を大真面目に巡らせる、もしそうだとしてももう少し警報だとかで騒がしくなるはずなのだがそこに思考が行かない、ついでに通信を送るという考えにも行ってない。
足音を殺し、気配に神経を巡らせ、ゆっくりと倉庫を歩く
(静か、これは一回外に出たほうが?いや、でもスナイパーが居たら怖いし…)
急に心細くなるPP-90、だがこんなことじゃ戦場では死んじゃうと奮い立たせ歩を進めていけば本人は出口、実際は唯の倉庫の入り口に辿り着いてしまう、どうするか、考え確認は大事だよねとそっと扉を開ければ…
「何してるの貴女?」
「あれ?PPS-43だ、ん?え、皆敵に捕まったんじゃ?」
「バグってるの?」
辛辣な言葉にPP-90は自分がトンデモナイ勘違いをしていたことに気付き恥ずかしげに顔を赤くして、PPS-43に謝りつつ出てきた建物の看板を見ればそこにはStorage、保管庫つまり倉庫とデカデカと書かれていた。
それを見つめ、漸く自分は見当違いな場所に居たことにも気付けたPP-90、アタシってば何やってるんだかと銃をまた折り畳み腰に掛けて
「良し、今度こそ執務室へ!」
数十分後、彼女の姿はあの挙式に使用された教会前に居た、因みに執務室がある建物とはまた正反対である。
あっれ~となるPP-90だったが目の前のとても綺麗な協会に心惹かれて、中はどうなってるんだろうとそっと扉を開け見てみれば…G3が祈りを捧げていた。
ただそれだけの筈、筈なのだが彼女は言葉に出来ない空気を感じ取る、長く此処に居てはいけないような、でもこのまま入って共に祈りを捧げていいような、そんな事を考えた瞬間、何かが彼女のメンタルを触れ
(いや待て誰に祈りを?人形が神に…ああ、違う、
もし此処に第三者が居て、彼女の顔を見ていれば分かっただろう、何かに意識を持っていかれそうになっていた彼女の目から光が消えつつあったことに、そして意識が戻った瞬間に光も戻ったことに。
とにかくこれ以上此処に、いや、今祈りを捧げているG3を見ているのは危険だと判断したPP-90は音を立てないようにそっと扉を閉じて逃げるように教会から離れていく、しかし彼女は気付いていた、祈りを終えたのだろう彼女がそっと扉の方を見つめ
「…残念です、いえ、増えてはいけませんよね、それは
ああ、このようなことを考えてしまう私をお許し下さいとまた祈りを捧げてから教会を後にする、因みにPP-90は暫くG3の顔を、それどころか直接会うことを拒否するほどにトラウマになった模様。
所変わって逃走したPP-90は幸運なことに執務室がある建物に辿り着いていた、だがそれどころではなく上がりに上がった息を急いで整えていると
「だ、大丈夫ですか!?」
「はぁ、はぁ、ROさん?だ、大丈夫、はい」
そう返すが声も顔もどう見ても大丈夫じゃない彼女をどうにか落ち着かせようと考えて休憩所に案内してココアを買ってあげ渡せば漸く落ち着きを取り戻した彼女
「ふぅ、ありがとう…」
「いえ、これくらいならば、それよりもどうしたのですか?」
「きょ、教会で、その」
RO635、たったそれだけで全てを悟り同情の念を送ってしまう、彼女もあれを見て危うく引き込まれかけた一人である、と言うより隣に居たM4が声をかけていなければ恐らく自分は今あの教会でG3の隣で祈りを捧げる側になっていただろうとすら思っている。
あれやっぱり立て看板でも置いて警告した方がいいのではと考えつつRO635はポンとPP-90の方に手をおいて
「大丈夫です、あの方はこの基地でもかなり特殊な分類ってだけですから…ええ」
「それって、他にも凄い人居るってことじゃ」
真実を突いたその言葉に思わず目を逸らし泳がしてしまうRO635、そしてその反応を見てPP-90は乾いた笑いが出てしまうが当初の目的を思い出して
「ま、まぁ、うん、いい基地だから!あ、じゃなくてアタシ執務室に行こうとしてたんだった」
「執務室?(え、なら何で教会に?)それならこの先にある階段上がって直ぐですよ」
「なんだもう近くまで来てたんだ!ありがと、じゃあね!!」
お礼を言って彼女は示された階段を…何故かスルーしたのRO635は慌てて呼び止め結局案内される形で漸くPP-90は執務室に辿り着いたのであった、尚、要件は
「指揮官、お茶しない?」
「お主、今何時じゃと思っておるのじゃ…」
「あはは、業務が終わったらでいいかな?」
以後、RO635の言葉もありPP-90にはアーキテクト製品の一つである『あっちこっちちゃんMk-Ⅱ』の所持を義務付けられた模様
戦闘セリフのこっち?…っ!こっちか!でコイツ方向音痴っぽいなでこうなるという、因みに私は人から言わせると方向音痴らしいです。
アーキテクト製品紹介コーナー
『あっちこっちちゃんMk-Ⅱ』
小型のナビゲート装置であり使用する人形の電脳とリンク、思った場所へのルートを網膜モニターで示してくれる、Mk-Ⅰはバッテリー問題があったため直ぐに回収された。