それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「お二人さん、今日はもう暇かな~?」
平日の業務終わり、執務室にて指揮官と副官が雑談を交わしているとノックもそこそこに扉が開け放たれ現れたのはUMP45、しかも入って早々にそんな事を聞かれるが先ずは副官が軽くため息をついてから
「お主、一応ここも指揮官の部屋じゃぞ?」
「あはは、ごめんごめん、次からはノックするよ、で暇?」
「まぁ、今日のお仕事は終わってるから暇といえば暇、だけど?」
それを聞いた彼女はそうかそうかと頷き、何とも楽しげな、だが何かを企んでいるような笑みを浮かべつつ二人を見て
「ちょっと、映画見ない?」
「…映画?」
本気で理解していない声が執務室に響く、声の主は勿論指揮官でありこの反応は流石のUMP45も予想していなかったので目を丸くして驚きつつ副官の方に視線を飛ばせば、その顔が面白かったのか呵々と笑いそして
「思えば、コヤツはそのような娯楽にはあまり触れてはおらぬかったな」
「あ~、なるほどそうか…確かに指揮官って大体誰かと話してたり体動かして遊んだり、娯楽って言ってもチェスとかだもんね」
思い返せば彼女、指揮官が所謂サブカルチャーと呼ばれるものに触れていることろを見た記憶がない、まぁ彼女が知らないだけで一応少女漫画には手を出していた時期があったがあれは楽しんでいたと言うよりは恋についての勉強だったのでノーカウント。
別にこの基地はそういった物を制限してたりはしていない、割と自由に楽しめるのだがどういう訳かアナログな趣味に目覚めるものが多いので今日まで指揮官も触れてなかった、一応レクリエーションルームには倉庫から出てきた古い筐体もあるにはあるのだが利用者は割と少ない、最近になりヴァニラが少しやってたりアーキテクトがガチでやってたりするくらいだ。
「そのエイガっていうのはえっと、楽しめるもの?」
「映画はまぁ人によるって所かなぁ、テレビは見ます?」
「そこまでは見ないかな」
おぉうこりゃ筋金入りだいと珍しくポーカーフェイスを崩して再度驚くUMP45、しかしそれでは世界情勢等などに疎うくなってしまいそうなのだがそこは副官やスチェッキン、FMG-9やカリーナとヴァニラ達からよく聞いていたりするので意外にも街で起きたことなどには詳しかったりするので問題ない。
「うーむ、指揮官さんの趣味嗜好が地味にわからないのは辛いね、でもまぁもしかしたら楽しめるかな?」
「して、どんな映画じゃ?派手なドンパチ物か?」
「ホラー映画」
「また微妙に判断に困るものじゃな…だがそうだな一度見てみるのも良いと思う、折角用意したというのならば指揮官、見てみるか?」
「そうだね、うん、見てみたいかな」
じゃ行こうかと彼女の部屋に向かえば既にそこには416とST AR-15の二人が待っていた、その珍しい組み合わせにどうしてと聞けば先に答えたのは416
「45に誘われたのよ…まぁ私も丁度息抜きをしたかったから良かったのだけど」
「私は暇してたのを彼女に」
じゃあ、二人も一緒に見るんだと納得する指揮官の横で副官はああ、まぁそうじゃなと曖昧な返事をしつつUMP45に勧められた場所に腰を下ろす。
二人が座ったのを確認してから彼女が取り出した作品は第三次世界大戦が始まる以前の日本が作成したホラー映画、彼女曰く日本のはメンタルを揺さぶる怖さで癖になるとのことでそれをDVDデッキに入れるのだがその時点でST AR-15の顔色がおかしくなる。
まるでホラー映画を見るとは聞かされていなかったような顔、指揮官が大丈夫かと聞けば声を気づかれないギリギリの震え加減で
「え、ええ、平気よ。それより指揮官こそ大丈夫なのかしら?」
「うーん、映画がそもそも初めてだからなぁ、見てみないとわからないが答えだね」
だから楽しみだよ~と答えればそ、そう、私もよと答えてから画面に視線を送る、そしてそのやり取りを見ていた副官はUMP45をそっと見れば愉悦に染まった顔をする彼女、どうやらこの映画鑑賞は指揮官を楽しませるのも確かにあるのだろうがそれ以上にAR-15か416の反応を楽しむために彼女が仕組んだものだと気付く
(相も変わらず微妙に性格が悪いのう…っと始まるか)
始まった内容はとある一軒家に関わった様々な人間が呪いによって殺されていくさまを描いた物語、正に迫真の演技で行われるその光景に副官も時より驚くような表情をするほどだった、がそれ以上に
「ヒッ!?」
隣のAR-15のあまりのビビり具合にぶっちゃけソッチのほうが驚くと言う、どうやら彼女はこういったホラーが苦手のようで何かある度に声を上げ終いには身体全体恐怖を表すほどだった、因みに416はと言えば
(あ、ここで死ぬの…へぇ人間の呪いって噂には聞くけどここまで凄いことになるのね)
(ちっ、他の基地の416は恐怖するって聞いたのに…この基地は違うのね。まぁAR-15の反応だけでもお腹いっぱいだけど~)
いや、それよりも指揮官よと見れば、彼女ぐらいの年であれば十分に怖がっても不思議じゃないと言うか可愛らしいものなのだが当の本人はと言えば、そういった場面や演出を見ても
「お~」
と何とも短い反応で終えてしまう、面白くなかったかなとUMP45が思わず不安になってしまう程ではあったが表情はちょいちょい楽しげに動くのでもしかしたらホラーには適正があったのかもねと判断する。
因みに一本目が終わってから指揮官に聞いてみれば、どうやら映画であろうと人間が演じているのでマネキンに見えてしまってあまり怖く感じなかったとのこと、これにはUMP45も失敗したな~と笑ってしまった。
一作品目が終わったがこれはシリーズ物だからともう一つも流れるが指揮官の反応は変わらず…いや、とある場面で目の色が変わった
「どうしましたー、指揮官?」
「ふえ、あ、えっとこの場面だけ人形を使ってるんだなって」
え?となり全員に断りを入れてからその場面を巻き戻し注視してみるが人形なんて存在しない、いやそもそもにしてこの時代には
(私達、自立人形は技術すら無かったはず…)
何度見ても自分たちにはわからない、なので指揮官にどこに何が映っているのかと聞いてみれば明らかに誰も居ないはずの場所を指さして
「え、これって…人形が演技してるんじゃないの?だってこの娘だけ人に見えるよ」
嘘を呟いてるとは思えないほど真面目な声の指揮官、静まり返る部屋、遂に限界に達したAR-15が倒れたのを理由に上映会は急遽中止…その日以降この映画が流されることはなかった。
指揮官ちゃんには何が視えちゃったんだろうな~(震え声)
因みに45姉が流したのは呪○です、私?見れねぇよホラーは(ゲームはする)