それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙
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絶対なんてこの世界にないから身を守れる手段が必要だ。


もしもの備え

指揮官は考えていた、何時かもそんな事を考えて行動を起こしたら少々酷い目に遭ってしまったが今は『眼』の調整が施されており、それならばあの時結局は頓挫した話を進められるのではないかと。

 

彼女が外出する時には必ず人形が最低でも一人は付いてくる、そりゃ勿論だろうはっきり言えばそこらの一般人にすら負けそうな彼女を一人で街を歩かせる訳がない、そしてそれは指揮官自身の理解しているので感謝している。

 

だが、それに甘え続けてて良いのだろうか、もし何かあって自分で身を守らなければと言う時に出来ないでは話しにならないのである、だからこそ彼女は今一度、今度はきちんと副官に話を通そうと執務室の業務が一段落した所で…

 

「駄目じゃ」

 

見事に出鼻を挫かれた、しかしこの展開は予想していた、副官ならば絶対に反対してくるとある種の信頼すらあったので別段それに関しては何も思わないしそれは自分を思っての反対なので寧ろその優しさに少し笑みがこぼれそうになる。

 

だけどそれと今回は違う、反対されたからではいそうですかと彼女は退かない。

 

「分かってるよ、おばあちゃんがどうして反対するのかも、でもだからって自衛の手段を持たないっていう理由にはならないと思うんだ」

 

「確かにな、だがならばスタンガンでも良いじゃろうて、何を思って『拳銃』が良いと思った」

 

副官の真剣な瞳が指揮官を射抜く、同時に彼女は理解している、目の前の指揮官が決して面白半分でそれを持ちたいなどとは言ってないと、だからこそその真意をちゃんと見極める必要があると。

 

指揮官が考えてたこと、それは自身の防衛力の無さ、確かに常に彼女達が気を張って周りを監視し彼女の警護していても漏れが出る時は出る、その時に自分が攻撃できる手段を一つも持たないというのを自分で問題視したのだ。

 

「目にはっきり見える抑止力、ヘリアンさんが言ってた。持ってると持ってないとじゃ違うって」

 

「あいつ…だが持てばそれで万事解決と言う訳ではないぞ、寧ろ持ってるからこそ巻き込まれるという可能性もある」

 

「それは、そうだけど…」

 

副官の言葉に指揮官は若干目を伏せて指を遊ばせる、特に自分は今まで持ってなかった、更にその小柄過ぎる体格と気弱そうに見えてしまう雰囲気も相まって持っていれば何を生意気なとすら思われるという事も考えなかったわけではない、正直そっちの関係で巻き込まれる可能性が上がるかもしれない。

 

「確かに、そうかもしれない…」

 

「だが、まぁお主の言い分も分からぬというわけではない、今日まで何もなかったから持たなくてもよいという理由には確かにならぬな」

 

え、と予想だにしなかった言葉に指揮官が副官を見れば真剣な表情を崩さずに顎に手を当てて考え込む姿、彼女だって最悪を想定していないわけではない、だが彼女の個人的な考えで持たせたくないという感情が強いのだ。

 

(出来ることならば手を汚して欲しくはないと願うのは我が儘かのう)

 

もしこれが我が儘だとすればそれで彼女を危険に晒していいというわけではない、流れる沈黙、その間二人共一言も発さずに指揮官は真面目な表情を崩さずに副官を見つめ、副官はそれに気付きながらも思ったより結論が出ないこの問題に頭を悩ます。

 

そんな空気を入れ替えたのは報告書を纏めてそれを持ってきたのであろうG36、彼女は入ってきて早々にこの空気に気付き何があったのかと聞かれれば、二人は詳細を話す。

 

「ふむ…なるほど確かに二人の言い分は分かります、そして個人的に申し上げれば私も反対でございます」

 

「理由、聞かせてもらえる?」

 

「喜んで、ですが先程私は個人的にと言いましたが客観的に見ればお嬢様の言い分がほぼ正しいと言えるでしょう、私達の警護も完全ではないですから、なのでいざという時の備えという点では確かにその通りでございます」

 

そこで一区切り、少し間をおいてからですがと先程までの真剣な表情ではなく何処と無く不安げな表情でG36は続ける。

 

「私は恐ろしいのです…お嬢様の手が血で汚れてしまうことが、そしてそれが引き金でお嬢様に歯止めが効かなくなってしまいのではないのかと」

 

「歯止めって、そんな殺人鬼とかじゃないのに」

 

「そうではない、お主は自覚してはいないだろうが人に対して根底に恨みが、恐怖がある筈じゃ。故に一度の引き金でそこから先のお主の指が軽くなってしまうのではないかと、それを危惧しておるのじゃ」

 

もし、万が一が起き彼女が『人間』に対して銃爪を引いたとしよう、それが命中したとしても彼女の眼からは『マネキン』が破損ないし大破したとしか見えず、更に言えばそこから銃爪を引くという行為自体に抵抗がなくなってしまう恐れがあるのだ。

 

人間を殺したはずなのにそれを理解できない、彼女の思考を理解している二人はそこから先の未来が見えてしまい、故に銃というものを彼女には持たせたくないのだ。

 

「もしお主が銃爪を引くとすれば間違いなく人間と認識できてない奴じゃ、ならばどう写る?」

 

「…マネキン、でもマネキンってことは人間だって」

 

「血は、見えますか?撃たれた相手の表情は理解できますか?」

 

無論、理解出来ないし見えない、マネキンが苦悶の表情をするかと言えばそれはNOであり、同時に血を流すかという質問もNOだ。そして襲われたとすれば指揮官は冷静ではないだろう。マネキンが動くのならばまた襲われるかもしれないと命乞いする相手だとしても容赦なく銃爪を何回でも引く筈だ。

 

そこまで言われ、考えてやっと二人が危惧していることを理解でき始めた指揮官はそっと自分の手を見て、想像してゾッとした、何も感情が浮かばなかった、実際に人に対して撃ったこと無いので何とも言えないがそれでも人を撃った後を考えても恐怖も何も感じないどころか

 

(当然って考えた?)

 

「指揮官、大丈夫か?」

 

「私、襲ってきた人をもし撃ったらって考えて…その相手に対して私、当然だって、自業自得だって、何考えてんだろ」

 

「お嬢様…」

 

ああ、やはり人間に対してそこまでの感情を持ってしまっていたかと副官は考えずにはいられなかった、いや寧ろ今日まで上手く付き合っていたと考える、結局その日はこの話は『保留』となった、今後どうするか、もう少し時間を取ってちゃんと話し合おうと。

 

夜、副官は珍しく、タバコを吹かしていた。




結局、持たせる持たせないはまた別の話になると言うね、まぁこの辺りは難しい問題なのです。


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