それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
【Am KSG】はその目の前の光景にはてどう声をかけるべきだろうかと悩んでいた、ここは宿舎の共有スペース、部屋に戻って着替えてトレーニングでもと来てみればその共有スペースの中央においてある椅子に座り込み片やテーブルに突っ伏している、片や椅子の背もたれに凭れ掛かっている影が2つあるではないか。
誰、と言うのは聞く必要はない、そこに居るのは間違いなく【ウィンチェスター】と【PTRD】だがその格好は先程まで起きてましたという格好ではなく、起こされ部屋を追い出されたからとりあえず着ましたという格好なのである。
(と言うより、これ二人のセンスですか?)
自分も褒められたものではないとは思っているがそれでもこの二人よりはマシだと断言できる、それほどの服装だった。
先ずはウィンチェスター、下は普通のジーンズ、そして上は赤に白字で【アイル・ビー・バック】と書かれたTシャツ、しかも小文字とかでちょろっととかではなく中央にデカデカと書かれているのが変な笑いを誘ってしまう。
次にPTRDはと言えば上下黒のスウェット、それだけ。しかも髪は寝起きから一切手が加えれていない様子で好き放題ボサボサになっている、まぁとにかく言えるのはこの二人に女子力というものを求めるのはあまりに無謀だという話だ。
「…二人共、そうやって突っ伏して何をしてるのですか」
「んあ?あ~、KSGじゃない」
「何か、用?」
うわぁ、と思わず言いそうになるのを堪えて二人に挨拶を交わしつつKSGは近くの椅子に座り、何がどうなってこの状況になっているのかと聞いてみれば、先ず答えたのはウィンチェスター。
「今日は休日だけどバイクって気分でもなくて部屋でダラダラしてたのよ…そしたら扉がノックされてどうぞって答えたら入ってきたのはM590、彼女来て早々に」
『思ったより酷い有様ですね…物は処分しませんがお部屋の片付けをしますからウィンチェスター、少し外に居て下さい、あと部屋だからと下着だけというのは女性としてどうかと思います』
「って言われて、こうしてたのよ」
お母さんでしょうか?と思いつつも彼女の部屋の惨状は一度見たことがある身としてはまぁ彼女の言い分も分からなくはない、と言うよりどうせまた洗濯物も溜め込んでいるのだろうとすら思っている、ではPTRDはどうしたのかと聞いてみれば
「大体ウィンチェスターと同じ、部屋でグダグダしてたらネゲブに強制執行された…部屋は片付いてるって言ったのに」
「多分片付いてなかったから追い出されたんだと思いますよ?」
「え~」
何とも不満げな声を上げるがネゲブが強制執行するということはつまりそういう事なのでもはや言い逃れはできない、幸い彼女らは物を捨てるということは部屋の主が居なければやらないのでそこは安心できる、と言うよりこの二人は端っから戦力として見られてないことに何とも悲しみを誘ってしまう。
なのでKSGは二人に聞いてみることにした、凄く凄く初歩的なことをだ、しかし返ってきたのはある意味予想通りであり、同時に
「お二人は、自分で部屋が汚れてるなって思わないんですか?」
「…分類ごとには纏めてるわ」
「大体の物の場所は分かるから問題ない」
駄目だコイツら、彼女らしからぬぶん投げ思考が働いてしまう、こうやって言い訳するということは大方第三者から見れば間違いなく汚部屋と呼ぶ状態になるまで放おってしまう分類だと。
思わず手を額に当てて溜息をついているとノソノソとまた一人増え、見てみればそこに居たのはG11、彼女は共有スペースの一角に敷いてあるマットに横になると安らかな寝息を立て始める、そこでふと思ったのは彼女の部屋はどうなっているのだろうという疑問
彼女の休日になるとグータラになる一人、ならば部屋はそこの二人と変わらないのではと思ったのだ、だが当の本人は寝てしまっている、どうしたものかと思っていると彼女を追ってきたのか将又偶々かは不明だが彼女の保護者として名高い416が丁度良く現れた。
「はぁ、G11貴女遂に此処にも寝床を…」
「416、丁度良かった。一つ聞きたいことが」
「私に?まぁ答えられることなら」
了承を貰ったので早速とG11の部屋について聞いてみれば返ってきた答えにKSGは驚くことになる、それは
「あの子の部屋?かなり綺麗よ」
「え!?あ、すみません」
「別に構わないわ、普段を考えればそんな反応されると思うし。あの子曰くね、汚い部屋で寝たくないから掃除は自分でするってことらしいわ」
意外としっかりしてるG11に再度驚く、それからまたさっきと同じようにダラけ始めた二人を見つめて、思わずため息が漏れる
その反応を見て416は何を察したのか微笑みを浮かべて、じゃあ私は行くわと去って行く、と入れ違えで来たのは二人の部屋を片していたネゲブとM590だ、見れば両手には大きなゴミ袋が握られておりM590は困った感じの笑みを浮かべ、ネゲブはと言えば無表情のまま突っ伏してダラケているPTRDの肩を叩いて起きて自分を見たのを確認してから
「おい、誰が此処までゴミを溜め込めって言った?」
(キレてる)
「出すのが、その、ちょっと面倒だしまだ余裕あるからって…」
「それと、溜め込んで良いって理由、つながる?」
ズイッと私怒ってるからな?と言う雰囲気をまといつつ顔を近づければPTRDの目はこれ以上にないくらいに泳ぎ始める、こうなっては逃げ切れることは先ず無いので反省して今後はちゃんと出しますと宣誓することになるのは時間の問題だろう。
そしてM590はと言えばウィンチェスターに特に何を言うわけでもなく、寧ろ
「すみません、急に押しかけて掃除をしてしまい」
「別に…ただ今度からは私も手伝うわよ、自分の部屋なんだし」
「そうですか?ならその時はお願いします、KSG、貴女の部屋は大丈夫ですか?」
「はい、私は日頃整理整頓を心掛けていますので問題ありません」
突如話を振られて驚きながらもそう答えるがM590はそれを聞いて少し考えてから、ニコリと安心させる笑顔で
「流石ですね、ですがなにか困ったことがあったら伝えて下さい、手伝いますからね」
仕草、表情、声、そして今の言葉、KSGは改めて思った。
お母さんだなぁ、と。
いよいよウィンチェスター姉御がダメ人間を加速させ始めてるしPTRDが突然追走始めた。
でもアイル・ビー・バックのTシャツは自分で書いててちょっと欲しいとか思った。