それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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どんなに穏やかな日常も裏側は存在する

穏やかな日常を守るために、穏やかな日の光を守るために彼女は闇に身を投じる


陽だまり(彼女)のために闇に消える

とある司令部、その指揮官の自室、微かな灯りもない暗闇で一人の指揮官が自身に何を差し向けられたかすら、否、差し向けられたという事実すら知らずに寝ている

 

本来、指揮官以外は誰も居ないその部屋に彼女は居た

 

「リスノワールからランセニュマンへ、ターゲットまで来ました、そちらは?オーバー」

 

《こっちも引っ越しは終わってる、何時でも良いよ。オーバー》

 

「了解、アウト」

 

短いやり取りを終えターゲットに自身の名を冠した銃を向ける、やがて銃口は対象の眉間に密着、ゆっくりと銃爪に力を入れ

 

「安らかに眠りなさい」

 

静かに告げられた処刑の言葉とプシュと言う銃声らしからぬ音がしたその日、一つの司令部が消えた。事実を知る者はほんの一握り、だがそれもすぐに闇に消えていくだろう

 

深夜、警備の担当以外はほぼ寝静まった時間にM1895は司令部の密談室、指揮官には存在すら悟られていない部屋で人を待っていた

 

待つこと数分、不意に扉がノックされる。だがすぐに開ける真似はせず、銃を抜き構えながら扉横に立ち続きを促すようにノックを一回返す

 

「均衡は保たれた」

 

ガチャリと鍵が開けられ、入室してきたのは第二部隊副隊長の【ウェルロッドMk2】と第五部隊所属の【FMG-9】

 

二人の姿を見てからゆっくりと扉を締め鍵を掛ける。それから銃をホルスターに戻してそこで初めてふぅと息を吐いた

 

「首尾は?まぁここに居るということならそういう事だとは思うが」

 

「完璧だよ、一切の抜かりもミスもない」

 

「同じく」

 

「ご苦労さまじゃ。まぁ腰を掛けてくれ」

 

M1895に促され二人は椅子に座る、それを確認してから部屋に置いてあるラックから一本のボトルを取り出し3つグラスをテーブルに置く

 

「今回は【ジン】ですか」

 

「うむ、スプリングフィールドから貰ってな、折角故この場で開けてしまおうではないか」

 

「お~、いいですね。あ、氷ありますよね」

 

勿論じゃと棚からアイスペールを出し冷凍庫から氷を取り出し入れてテーブルの中央に、各々氷を入れてからジンを注ぎ

 

「今回の作戦の成功に」

 

「「「乾杯」」」

 

一口、それだけでウェルロッドは疲れが癒され、この司令部(我が家)に帰ってこれたと実感する。何も今回が初めてではないが任務が完了してこの場で酒を飲まないと自分がまだ任務に居るのではないかと思ってしまう

 

それはFMG-9も同じで彼女も一口呑んでからゆっくりと息を吐きだしていた。それを見ていたM1895はいたたまれない気持ちになり

 

「すまぬな、毎度このような汚れ仕事を押し付けてしまって」

 

「気にしないでくださいよ副官、ボスの安全と平和の為ならこのくらいの事はどうってことないですよ」

 

「ええ、指揮官に仇なそうとする輩が居るなら私達は引き受けますよ」

 

二人が請け負っている任務、それは指揮官に仇なす存在の抹消。勿論、独断ではなく先ずそれらしい存在を確認したらFMG-9が内偵調査、その後、カリーナに情報を流し彼女がヘリアンに送り彼女からグリフィンの暗部からの依頼として発行、そこで初めて二人が行動を起こすという形を取っている

 

大体、そういった司令部の指揮官はグリフィンの暗部が片付けるのだが彼女に手を出そうとするなら話は別としてヘリアンから依頼を受諾している、それに他の司令部でも似たような依頼を受けてるため別段ここが特別というわけではない

 

「それにしても、こんな好青年っぽいのがここまで外道とはねぇ」

 

「人は見かけによりません、いい意味でも、悪い意味でも」

 

「そうじゃな、そして指揮官に手を出そうとしたのが運の尽きじゃ」

 

今回抹消したターゲットの顔写真を見ながらFMG-9が心底軽蔑したような声で言えば二人がそう続け、それもそうだとPCからデータを消す

 

その後は簡単な報告を行ってから三人は雑談へとシフトする

 

「でさでさ、今日はボスはなにしてたの」

 

「あやつか?確かお昼時にイギリス料理を振る舞ってもらったらしいな」

 

イギリス料理、それを聞いた瞬間のFMG-9の顔は苦笑だった、対象的に自分の国の料理を指揮官が食べたと知って嬉しそうなウェルロッド

 

「とするとL85A1が作ったのですか」

 

「そうさな、丁度、支援から帰ってきたタイミングだった故にな」

 

「それで、感想は?」

 

「美味かった、と。特にスターゲイジーパイを気に入っておったな」

 

「マジですか……ボスも中々に物好きですね」

 

「L85が作るスターゲイジーパイは絶品ですよ?」

 

まずはあのインパクト重視のビジュアルどうにかしようよとFMG-9がげんなりした顔で呟く、それより問題はフィッシュアンドチップスも気に入ったことじゃと続けるM1895

 

二人のあんまりな物言いに不服そうなウェルロッドは

 

「ならば今度食べてみませんか」

 

「え、あ~」

 

「う、うむ……」

 

「食べてみませんか?」

 

渋った二人だったがウェルロッドが珍しく推してきたので思わず頷いてしまった。それを見て満足そうに頷きジンをまた一口呑んで

 

(指揮官は陽の光、故に闇に身を置く私には眩しい。ですがその眩しさが私を表に優しく導いてくれてます)

 

故に守りましょう、例えこの身が二度と這い上がれないほどの闇に飲まれたとしても。カランと氷が転がり彼女の決意に満ちた目を写す

 

こうして陽の光のような彼女が率いる司令部は今日もまた穏やかで平和な夜明けを迎える




※ 副官はこの日の午後、イギリス料理から戦術的撤退をしている

ウェルロッド
リスノワール フランス語で黒百合(確か)

FMG-9
ランセニュマン フランス語で情報

通称 指揮官セコム部隊

この二人ってこういう暗躍をコンビで動かすの楽しそうだと思いました

冒頭の通信用語は確かこんな感じだったよなでお送りしています

まぁあれだよ、綺麗なだけの世界じゃないよってことで

それはそれとして前話で不安になったからって急にシリアスするな(半ギレ

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