それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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皆となら重く、踏み出せる。


一人では軽く、怖くとも

拳銃所持の話をしたその日の夜、指揮官は自室にてベッドを背にして体育座りで考え込んでいた、時折手をじっと見つめてあの時指摘されて漸く気付いた自分の『他人』への認識、それが想像以上に酷いものだったと。

 

持つべきではないのだろうか、そんな考えも過ってしまう、いくら指揮官の立場として危険を提言して所持してそれでもし、もしもだ

 

(誰かを撃った時、私は止まれる?)

 

断言が出来なかった、もしかしたら認識する前の自分だったら何を馬鹿なと言えたかもしれないが自覚してしまった今、とてもじゃないがそんな安易に言えない、たった1発、それだけで自分が道を大きく踏み外してしまうのではないかと。

 

気付けばそれに恐怖して身体が震えていた、がそれは業務を終えて入浴も済ませたPPKが帰った来たことで止まるも

 

「ユノ?」

 

「あ、PPK…おかえり」

 

「ただいま戻りましたわ、ですが大丈夫ですか?身体が、震えているように見えましたが」

 

心配そうな彼女に指揮官は今日あったことを包み隠さずに話すことにする、そしてそれを聞いた彼女は二人分のココアを淹れて指揮官の隣に同じように座り差し出す。

 

「副官やG36と同じことを伝えるかもしれませんがあたくしも出来ることならばユノには銃を握っては欲しくはありません」

 

「…だよ、ね。私ね、今考えて改めて思ったんだ、もし撃っちゃったらきっと歯止めが、おばあちゃんが言う私の根底にある憎悪を抑えられなくなるんじゃないかって」

 

そうなればどうなるかなんて考えたくもない、もしかしたら指揮官という立場を失いことにすらなるかもしれない、それは嫌だと頭を振る。

 

自分は彼女達を悲しませたくて銃を持ちたいわけじゃない、悲しませたくないから所持するつもりだったんだと。気付けばまた身体が震えていた、だが今度は隣のPPKがそっと抱きしめて止める、安心してくれと言葉にしなくても分かる抱擁だった。

 

「ごめんなさい、この時あたくしはどう声を掛けてあげるべきか正直わかりません、生まれてから撃つことにそういう疑問を感じたことがありませんから…」

 

「ううん、ありがと。少しだけ、落ち着いた」

 

でも、もう少しだけこうしてて欲しいなと彼女の弱々しい声を聞けばPPKは静かに頷いてギュッと優しく抱きしめる、それと同時にこの問題は自分達戦術人形では解決できないとも悟り、だがカリーナやヴァニラでもそれは解決できるかという点がある。

 

考えても考えても纏まらず段々と煮詰まってしまう思考、どうにかしてあげたいと焦っているのだと気付き自身を落ち着かせるようにまた指揮官を抱く腕を少しだけ力を入れる、結局その日、二人はそのまま眠りにつく、そして翌日指揮官、PPK、副官の三人は気分転換にと休日なのを利用して街の公園に居た。

 

「いい天気だし、お弁当でも作ればよかったね」

 

「そうですわね」

 

「じゃなぁ、だがその場合はP7とステアーも連れてこなければあやつら拗ねるぞ?」

 

くっうーんと伸びをする指揮官を見つめて、何時もと変わらない感じを受けながらもやはりまだ昨日の件を引き摺っているのかもしれない瞬間が見えて、本当にどうしたのもかと思っていると

 

「あら、もしかしてユノちゃん?」

 

「シーラさん?あれ、もしかして本部に用事ですか?」

 

見れば黒い瞳で黒い髪のポニーテールの女性がこちらに歩いてくるのが見えた、彼女は『シーラ=コリンズ』少し前に本部で指揮官が珍しく絡まれてた所を助けてもらい、それから交流が生まれたR06地区の指揮官だ、何時もは404のUMP45と居ることが多い彼女だが今日連れてたのはMP5だったが恐らくは404としての任務で今は居ないのだろう。

 

シーラは指揮官の側まで来ると少しだけ彼女を見つめて、それから真剣な表情をしてからPPKとは反対側に断りを入れてから座り

 

「何を悩んでるのかしら?」

 

「え、えっと」

 

「知らない仲じゃないでしょ?もしかしたら力になれるかもしれないし話してみて」

 

そう促されれば指揮官が昨日の事を掻い摘みつつ話し始める、その間PPKと副官は黙って彼女の話を聞いてることにした、自分達ではなく指揮官が話すことでなにか見えてくるかもしれないと踏んだからだ。

 

数分と少々長めに話された内容を聞いてなるほどねと頷いてから

 

「そうね、指揮官として見るならばユノちゃんは非常に正しいわ、寧ろきちんと現実を見ていると褒めたいくらいにね」

 

「それはつまり…」

 

「分かってるようねって流石に基地でも言われてるから気付くか、私個人的には握ってほしくないが本音、貴女のような年頃の子にそんな物騒なアクセサリーは要らないわよ」

 

でもそれじゃあ本当に何かあった時どうしようもない、言葉にしなくとも指揮官がそんな顔をすれば、シーラは分かってるわよと頭を撫でそれから

 

「一つ、貴女はね一人じゃない、家族がいるじゃない」

 

「?」

 

「だからね、もし道を踏み外してしまいそうになったなら、引き戻してもらえばいいのよ」

 

あ、とどちらかの声が漏れた、盲点だったとばかりの声だった。今の今まで自分達は持つか持たないか、持った場合の最悪の光景ばかりを想定して両極端にしか考えてなかったと。

 

無論、これを鵜呑みにしてはいけないとも思うがそれでも選択に幅ができたとも言える。

 

「引き戻してもらう…」

 

「過去を知らないからそう言えるだけだけどさ、貴女はそんなに撃ったらからってあっさり踏み外すような子じゃないとは思うけど、それでも副官やPPK、二人以外にもまだまだ居るでしょ、きっと皆して正気に戻してくれるわよ」

 

その言葉に副官もPPKも頷く、そうだ自分達は何も出来ないわけじゃない、もしそうなりそうならば頭を叩いてでも戻してやると決意するように。

 

「うむ、いや、本当に盲点じゃった」

 

「あたくし達はどうやら相当凝り固まった思考しかしてなかったようですわね…」

 

二人の感心した声にシーラは、まぁユノちゃんが突然そんな話をすれば焦っちゃうのも分かるけどねと笑いつつ指揮官を見れば彼女は自分の手を見て何やら考えていた

 

「だからって今焦った結論を出さなくてもいい、でもその事を念頭に置いて考えればまた違う形が見えてくるでしょ?」

 

「うん、もう少し自分を見て、考えてみます。えっと、ありがとうございますシーラさん」

 

「いいってことよ、少しでも力になれてよかったわ」

 

この問題に少し、いや大きな光が見えた、本当に彼女が所持するかどうかの結論はまだ先の話だが恐らくはそう遠くない未来だろう。

 

その後は時間までシーラ達と会話を楽しみ基地へと帰った、その時の顔はもう昨日のような顔ではなく何時もの緩い感じの笑顔だったとさ。




かなり超強引な感じで更に言えば根本的な解決にはなったない気がしますが一旦この問題は解決ってことで。まぁ所持するかはまだなんですけどね、それより前に彼女は体を作るほうが先ではまである。

それと今回前置きなしでしたが『笹の船』様の作品『女性指揮官と戦術人形達のかしましおぺれーしょん』からシーラ=コリンズさんをお借りしましたことを此処に報告します、404の45姉とのデレッデレ小説ぞ、皆読みに行ってね!!

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