それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
早朝の基地、平日休日問わずにこの時間帯から活動する者はそれなりに居る、ただのんびりしたい者、料理の仕込み、銃や車などの整備、掃除などの家事、そして…
「ふっ、ふっ、ふっ」
最近始めた指揮官の様に朝から運動をする者だっている、この基地はそれなりに敷地面積はあるので早朝ランニングには丁度いい
という訳で元暗殺者のオジサンから色々教わり、そして基地内の人形達からも効率的な体作りの運動を教わりその内容を律儀に彼女は行っている。まぁ流石に彼女一人というわけではなく
「ユノ、無理はしなくても大丈夫ですからね」
「そーそー、指揮官が実力付けたいってのは理解してるけどそれで倒れちゃ本末転倒ってやつよ?」
PPKと今日は【SR-3MP】通称ヴィーフリが付き添いとして共に走っている、彼女も最近来た人形であり、だが元より他の基地で最前線を張ってたらしく来て早々に第七部隊の部隊長となったG36から直々に誘われ隊員になっているほどの実力を持っている。
因みに初対面一発目の指揮官の言葉は
「ねぇ、その、何で前開けてるの?」
「何でって、そういうファッションよ」
「へぇ、そうなんだ、私もn」
「止めとくのが懸命じゃぞ」
その日からとりあえず前はきちんと閉めることにしたヴィーフリであった、別段閉めたからって動きにくくなるわけじゃないので問題にはならない、更に言えば指揮官にそう言われたからというのも少しはあるが決定打となったのは同じ日に宿舎にて
「駄目ですよ、お腹が冷えてしまいますからキチンと締めて下さい」
「え、いや、アタシ人形…」
「それでも、ですよ、現に冷えすぎて機能がって話も無いわけではないのですから」
M590から本気で促された結果である、なのでこの基地の彼女は服はきちんと来ているというある種の個性みたいなものが生まれている。
「ふぅ…ふぅ…」
「はい、スポーツドリンクでございます」
「ありがと…んぐっ、ぷはぁ、少しは、走れる距離が…はぁ、伸びたかな」
PPKから渡されたスポーツドリンクを一口飲んで息を整えつつ指揮官が呟く、当初は運動神経や基礎身体能力の低さなどで心配されていたのだがいざ回数こなしてみるとあら不思議、着実に体力が付いていき今では目標距離の7割は休まずに走れるくらいにはなっているではありませんか。
これについては元暗殺者の彼曰く
「彼女は磨けば光る原石ダヨ、ただ今まではそういうタイミングがなかっただけサ、ただまぁ監視は付けるべき、彼女放おっておくと倒れる寸前までやるだろうネ」
(とは聞きましたがここまでとは…少々過保護が過ぎましたでしょうか)
「伸びたわよ、正直驚きだね、でもこの調子なら直ぐにでも休み無しで目標距離は走れるんじゃないかしら?」
ヴィーフリからの言葉になら、もっと頑張らないとねと汗を拭きながら笑う指揮官、だが指摘の通り放おっておくと本気でギリギリまでやってしまう、現に休憩そこそこにまた走り出そうとするのでヴィーフリは肩を抑えて座らせる。
休憩したならば10分以上は休むこと、それが彼女に決められた事であり、こうでもしないと本気で自身の回復量を上回って走ったりしてしまうのである、なのでこうやって誰か一人は側に居ないといけないのがまぁ唯一の欠点といえば欠点である。
「むぅ、大丈夫だと思うんだけど…」
「大丈夫じゃないから止めてるのよ、全く…ほら、PPKもなにか言って上げなさいよ」
「そうですわね、何も焦る必要はございません、ゆっくりで良いのですよ」
優しく促されれば指揮官は渋々ではあるが納得し、またスポーツドリンクを飲む、理解はしているのだがまだ行けるんじゃないかなっと思ってしまうあの悪い癖はまだまだ矯正されるには時間がかかりそうだ。
そんなランニングが終われば、指揮官は柔軟体操をしてから続けて教わった護身術の動きの復習へと入る、最初こそ器具相手に動きを一つ一つ確認しつつ体に覚えさせてを行っていたが今では訓練場をよく利用する人形達と軽い組み手をやったりするほどになっている、今日は62式と一〇〇式、64式自の日本組が居たので柔道と合気道を習いつつ彼女達との組み手を行っている。
「こうしてみるとさ、指揮官が運動音痴って話聞いたのが嘘みたいよ」
「そうですね、私としても驚いています」
ヴィーフリの驚いた感じの声に答えたのは有事の際すぐに処置ができるようにと待機しているPPSh-41、医者として指揮官の身体を知っている彼女からしてみれば割と驚きであるのは間違いない、と同時にあんな激しい動きを長時間して本当に大丈夫なのだろうかという不安もある。
「まぁ、その不安は分かるけどさ、PPKにも言ったけど少し過保護がすぎるんじゃないの?そうやってたら彼女の可能性がドンドン潰れるわよ?」
「耳が痛い話です、なので最近は指揮官が自分から言い出したことに関しては私達が全力でサポートしつつやらせてあげるという方針になりつつあるのですが…」
「それでも心配は心配、か。分からなくはないけどね、指揮官って華奢すぎるし、ちょっとしたことでポキっとかはありそうだしね」
と心配されてはいるが彼女は今までそういった骨折という怪我はしてない、思えば捻挫とかもないから実は片鱗は見え隠れしていたのではないかとすら思っている。
その日は基本的な構えや動作、技などを教わり、まだまだ粗は沢山あるがそれでも教えてた彼女達も感心させる習得速度を見せ解散、指揮官達は汗を流すために訓練場に備え付けられているシャワールームに消えたのを確認してからヴィーフリは一人訓練場を後にし、向かったのは倉庫の屋根の上、自身の身軽さを活かしてそこにヒョイッと上り縁に座る。
「んっん~、ここはやっぱりいい風が吹くわね~」
特に何かがあるというわけでもなく、しかしこうして風に当たることが彼女は好きなだけである、絶対に此処ってわけではなく風が吹く場所であればどこでも良いらしい。
だがまぁそこはこの基地、たとえ人形であっても危険なことには
「落ちないでよ」
「分かってるわよネゲブ、アタシだってそんなドジじゃないって」
「…ふぅん、まぁ良いけど」
ネゲブが何処か納得した感じに去っていくのを確認してからヴィーフリは倉庫の屋根から飛び降り着地した時、偶々それを目撃してしまったM590に怒るのではなく本気で心配される感じで説教をされてしまうのだが、それもまたこの基地の光景の一つである。
ヴィーフリさん、なんで前全開なんだろと疑問に思ったのは多分私だけではないと信じたい。
指揮官は 柔道と合気道を 会得し始めた!