それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
D地区の挙式から数日経った今日、休日のカフェ、そこでは相も変わらずK5がタロット占いを行っているのだが、誰も客が来ないと言うことで何気なく、そう、本当に何気なく指揮官を占いましょうかと行い…結果にK5の顔が青くなり、それを目撃したスプリングフィールドが駆け寄り声を掛ける。
「K5、どうしたのですか!?」
「…今、指揮官は何処?」
「え、副官と街に出ましたが」
なら、大丈夫よねと震える声で呟く彼女の視線の先には尽く逆位置のタロットカード、しかもご丁寧にどれも逆位置だと悪い方向に捕らえられ繋げて読み取れば良くないカードばかり、目を瞑り何度読み取ってみても結果は変わらない
(悪い予兆が強い、今回ばかりは占いが外れて欲しいね…)
カフェにてそんな心配をされている指揮官から珍しく街に出たいと言い出して現在は副官と共に街を散策している、なんというかあまりに突然の出来事で副官は少々驚いており更に理由も皆目検討が付かずに居た
「しかし、どうしたのじゃ突然街に出たいなぞ」
「え、うーん、特に理由があるわけじゃないんだけどさ、ただ何となく行きないなぁって思って」
そう言われればとりあえずで納得しつつそこでふと思った、というより気付いたと言うべきだろう、なので楽しげに隣を歩く指揮官に
「一つ良いか、お主とPPK、結婚してから二人っきりで外に出たことないじゃろ?」
「え、あ、言われれば、何時もおばあちゃんやP7とステアーが一緒ってことが多いね」
「ならば今度の休みにでも二人で出掛けると良いのじゃ、大事じゃぞ?そういうのは」
実際、そういう時間は大事である、それには指揮官も思うところがあったらしくP7とステアーをどうしようかなと悩みつつもでも確かになぁと呟く、彼女としても二人で出掛けて楽しみたいという感情が全く無いというわけではないらしい。
それには副官も嬉しそうに頷いてから、自身が言い出したことなので助け舟を出してあげることに
「二人ならばわしに任せよ、なので気にしないで良いぞ?」
「え、じゃあ、お願いしようかな。なら今度の休みに出掛けてくるね」
おお、何だったら朝帰りも許してやると冗談を言うも残念ながらそれは彼女にはまだ通じなかったようで、そんな時間まで外に出たら次の日困るよ?と真剣に返されて苦笑いを浮かべるのであった。
…そう、ここまではいつもの日常、いつもの二人、祖母と孫、だがこの世界は、いつだって優しいだけではない
「ん、あ、おばあちゃん!」
「ぬおっ!?ど、どうした指揮官っておい待つのじゃ!」
指揮官が何かを見つけて駆け出し、それを副官も追えば、そこはいつもの待ち合わせに使う公園の外れ、暗がりであり人目に付きにくい場所、だがそこには一人の人形、副官は直ぐに誰かはわかった
「【AS Val】?っ…酷い有様じゃな」
「これ、戦闘でついた傷じゃない、痛めつけられたとか…私みたいな感じだ、大丈夫?」
唯でさえAS Valの服装は肌が見えるというのにその見えてる範囲には大小様々な傷跡が生々しく残っていた、それは指揮官の言う通り他人から、いやこの際はっきり言えば『指揮官』からの虐待されたと言える傷に指揮官の表情が若干怒りが混じりつつも今はその事は隅に追いやり、彼女に声を掛ければ、微かに反応が返ってくる。
「うっ、うぅ…」
「意識はある、おばあちゃん、G36を呼んで一回この娘連れて帰ろう」
「うむ、少々待ってくれ」
と副官が一旦G36に通信を入れるために指揮官から離れる、それを確認してから指揮官は再度優しく声を掛けてれば意識がはっきりし始めたのか、目をゆっくりと開けれ彼女と視線が合う。
虚ろな瞳が指揮官の顔を見つめ、少しずつ焦点が合わさり始め
「あ、うぅ…」
「怖がらなくて大丈夫、貴女を傷つける人は誰もいないよ…これから行く私の基地にもね」
だから安心して、とまた少しだけ彼女に近づき優しく手を握ってあげる指揮官、そういう立場だったからこそ彼女の心情が分かり、だからこそ寄り添える距離が理解できて…それが仇となるとも知らずに
不意にAS Valが動き、彼女に抱き着いてきた、指揮官も驚きつつも多分安心してくれたんだろうなと抱き返そうとした時
「ごめんなさい」
「へっ?」
涙声で謝罪が指揮官の耳に届いたほぼ同時にズンっと身体に衝撃が走った、何がと理解しようとした指揮官が彼女の顔を見れば、グシャグシャに歪んだ顔が映り、ただひたすら「ごめんなさい」と震えか細い涙声で繰り返している姿。
それから自身の腹部を見れば彼女に手に握られ既に真っ赤に染まりつつあったナイフが刺さっており、そこで彼女は理解した、ああ…この娘は『脅されて』やったんだなと
「…だい、じょうぶだよ、貴女は、酷い人に脅されただけ」
「ええ、でも、わたし」
「だっ、て…そんな顔、してるならさ…本心な、訳ないからさ」
貴女は悪くないよ、と自身は刺され辛いはずなのにAS Valを安心させるために『微笑んだ』それは彼女には初めて向けられたものであり、だが同時にこんなにも心優しい彼女を自分が刺したという事実に
「ごめんなさい…!!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
「どうしたのじゃ、指揮…官…?」
通信を終えた副官が突如錯乱した声を上げたAS Valに驚きつつ戻ってきた彼女が見たのは指揮官に謝り続ける彼女と腹部からナイフを伝って血が流れ続けそれでも彼女を安心させようとする指揮官の姿。
「ちょっ…とね、この娘は、悪くない…悪いのは人間、だよ」
「喋るなぁ!!!!!」
その光景があの日と重なってしまった、だがすぐに頭を振るい冷静に状況を分析し、次の行動を電脳に思い浮かべつつ指揮官に近寄り容態を確認する。
(致命傷は避けてる?いや、コヤツの身体ではどうであれ危険なのは変わらぬ…それに仕留められないとすれば…)
側でしゃがみ込みながら頭を抱えごめんなさいを延々と唱え続けているAS Valをチラと見て、間違いなく下手人が居るはずと神経を尖らせ、何やらそれらしい雰囲気を醸し出しながら近付いてきた白衣の男性に無表情のまま銃を向ける。
「な、何だいきなり!?」
「近寄るな…貴様が医者だろうが何者であろうが関係ない、今の儂らに近寄るな」
「いや、だけどほらお嬢さん刺されてるしそこの病院にっ!?」
パスンと消音された銃声と同時に男の手から銃が飛ぶ、雰囲気から副官が離れないと見るや口封じのためにAS Valを殺そうとしたのだろう
男が舌打ちをし、逃げようとするがそこには既にG36が到着しておりダァン!!と地面に叩きつけられれば気を失ったがそんな事に気を配る余裕は彼女たちにはない。
「お嬢様!!??」
「すぐに基地に戻る!!気をしっかり持つのじゃ指揮官!!」
「…(コク)」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「謝るくらいなら手伝え!!!G36、車はどこじゃ!」
「こちらに!」
まだ辛うじて意識がある指揮官をG36が負担にならないように運び副官は男を縛り上げてトランクに打ち込んでから未だ錯乱しているAS Valと共に車内に乗り込めば万が一で用意してある【ファーストキュアー】が指揮官を応急処置している姿。
「乗りましたね、飛ばします!!こちらG36、ペーシャ!指揮官が刺され現在帰投中、すぐにオペの準備をお願いいたします!!」
「Val!指揮官の身体を抑えるのを手伝え!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
AS Valのその様子に思わず舌打ちしつつ指揮官の身体をファーストキュアーと共に押さえ車は出せる最速で基地へと帰投を始める、だが基地が見え始めた頃には指揮官の意識は
「後少しなのじゃ、頑張れ指揮官…!!」
既になくなっていた。
彼女の美点は、ときにして牙を向く。
雨が降り始める…