それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

257 / 794
雨が降り出す前に


日溜まりが陰る日 Session2

到着早々、車の扉が開かれればそこに居たのは既にストレッチャーを用意し待機していたPPSh-41の姿、彼女は指揮官の容態を見て表情を一瞬険しくするも直ぐに戻し

 

「指揮官をこちらへ!」

 

彼女の指示の下、迅速にだが必要以上に衝撃を与えないように指揮官がストレッチャーに運ばれ、寝かされ即座に基地内の手術室へと向かう途中、ファーストキュアーからのデータと現状の指揮官の容態を改めて診つつ声を掛け続ける。

 

(反応が返ってこない…ナイフが抜かれてなくて大出血は逃れたのが不幸中の幸いと言いたいのですが、指揮官は全てが平均値以下と考えれば時間はあまり…)

 

「お嬢様、聞こえますかお嬢様、もう基地に着きましたよ!!」

 

「指揮官…もう少し、もう少しだから気張るのじゃ!!」

 

速度を上げながら向かう途中でも二人が声を掛け続ける、しかし返事も反応も返ってこないほど今の彼女の意識レベルは低下しておりファーストキュアーが見せる電子図のバイタルもかろうじて安定していると言った感じでありいつ急変するかわからないと言った感じであった。

 

無論、ここまで騒ぎになれば他の人形達も何が起きたのか気付き、その中には彼女たちだって含まれる。

 

「ユノ!!??ッく、駄目です二人共!!」

 

「離して!!!離してよお父さん!!お母さんが、お母さんが!!」

 

「おかあさん!!おかあさん!!」

 

自身だって駆け寄り指揮官に声を掛け続けたいはずのPPKだがそれ以上に今はPPSh-41の手術を急がせるほうが先だと堪えてもし行かせたら邪魔になってしまう程に我を忘れ、泣いているP7とステアーをなんとか止める。

 

止められた二人はどうしてだと言わんばかりにPPKを見るが顔を見て急に大人しくなる、泣いていた、怒りも見えた、だがそれを押し止めようとしている辛そうな表情にも見えた、彼女たちは理解する、今一番辛いのは自分達もかもしれないがそれ以上にPPKが何よりも辛いのだと

 

だから彼女たちも堪え、だけどPPSh-41に視線を送る、その目は不安が混ざり、本当ならばもっと指揮官の側に寄りたいのをぐっと我慢し、そして手術室に運ばれる直前、五人はPPSh-41に

 

「ペーシャ、指揮官を頼んだ」

 

「ユノを、ユノを救ってください」

 

「お嬢様をお願い致します」

 

「お母さんを助けてペーシャ!」

 

「お願い、します!」

 

「任せてください、私の戦場はここです、必ず指揮官を助けてみます!」

 

言葉を告げてそう力強く頷いて、彼女は指揮官と共に手術室に消え少し経てば、ランプが点灯し手術が始まったことを告げる。

 

その場に残ってるのは先程の四人、だが流れる空気は非常に重い、そんな中、最初に言葉を出したのはP7、絞り出すように彼女は

 

「…大丈夫、だよね。お母さん、助かるよね?」

 

「ペーシャを信じましょう、大丈夫、彼女の腕は誰にも負けません」

 

「…ああ、あやつなら指揮官を、ユノを救い出してくれる」

 

「信じ、ます」

 

その短いやり取りだけでまた長い、本当に長い沈黙が流れる、どのくらい時間が経っただろうか、もはやそれを覚えているものは居ないほどの時間が過ぎた所で、パッとランプが消灯し扉が開かれ手術衣姿のPPSh-41が現れ、全員の視線が彼女に注がれる。

 

「手術は成功しました…ですが今日一日は油断できません」

 

「そうか…いや、まずは礼じゃな、ありがとう」

 

P7とステアーはそれを聞いてわんわん泣き出し、PPKも脱力したように座り込みとりあえずで安堵の息を吐く、G36も同じようであり代表してそう答えたのは副官だった。

 

その後指揮官は集中治療室(ICU)に送られ、PPSh-41は一日彼女の経過観察に就くことになるのだが去り際に

 

「…全てが済んだら、話がありますから」

 

「分かった…全員聞いてくれ、PPK、P7、ステアー、G36は今日一日は指揮官の警護についてくれ、また基地の警戒態勢を最大にまで上げておく」

 

「了解しました、ですが副官は?」

 

「儂はこれからFMG-9達と合流する、出ることになるじゃろうが後を任せた」

 

彼女の目にはどす黒い炎がチラッと見えた、だが同時に感情を乗せていない瞳でもあり、それを見た三人は了解とばかりに一つ頷いたのを確認してから副官はこの基地の地下に作られた部屋へと向かい、入ってみれば、そこに居たのはG3以外の暗部のメンバー、そしてマジックミラーを隔てた向こう側には捕縛した白衣の男性とG3の姿が見える。

 

「どうじゃ」

 

「見ての通り、懺悔中ですよ」

 

「そこはどうでも良い、情報は」

 

感情が乗ってない声にFMG-9はうわこりゃ完全にキテますわと冷や汗を流しつつあの男、保護しヴァニラが解析したメモリー、ヘリアンから送られてきた情報を元に纏めたのを報告していく。

 

「今回の黒幕はグリフィンの重鎮の一人、ほら、社長がアーキテクトに会いに来た時の一人」

 

「妙にこの基地とアーキテクトに敵意を見せてたやつね」

 

グローザが補足すれば副官もすぐに心当たりが行く、確かに一人だけ妙に敵意をこちらに向けていたのが居たなと、そしてどうやら合っていたようでFMG-9がニヤリと笑い

 

「そう、そいつが一番頭、でそこに居るのが元IOPの科学者、こいつはどうやらボスの眼を目的として死体でもいいから回収し解析するつもりだったらしいよ」

 

それを聞いた副官の表情が一瞬修羅になるが今はその時ではないと抑え込め、続きを促す。

 

促さればFMG-9は、パソコンを操作して新たに二名の顔写真を表示させる。

 

「そんであのValの指揮官とどこぞの違法業者の四人、それが黒幕ね。それぞれの目的聞きます?」

 

「目的はどうでも良い、奴らは今何処にいる」

 

「ご尤もで、位置情報も既に出てますよ~、場所は【S06】但し二箇所に分かれてますね、重鎮と業者はこの隠れアジトにてこの科学者を待ってるみたいです、で指揮官の方はこの地区の基地に居るみたいです」

 

固まっとらんのかと思わず呟けば、まぁ指揮官の方は協力こそすれど、どうやら重鎮とは反りが合わないみたいですからねぇとFMG-9が続ける。

 

それから『ヤークトフント』チームも交え作戦会議が行われ、決まったのは

 

「では確認する、儂とウェルロッド、G3、グローザが隠れ家ににて二人を消す、無論だが隠れ家に存在するものは全員消せ、それと重鎮は儂が殺る」

 

殺る、その言葉には重さしか無かった、余程キレてますねこれはとFMG-9が思わず軽口を叩きそうになるがぐっと堪える、というより今の状況で叩けるわけがない。

 

「次に、ヤークトチーム、SASSは基地を襲撃、それとヤークトフント、お主らには制限は付けない、徹底的に殺れ。FMG-9は電子サポートを頼む、こちらも遠慮はいらぬぞ」

 

「くへ、良いんですね?食い散らかしすぎても怒らないでくださいよぉ?」

 

「自分も今回はヘリアンさんからこの基地の人形のキーを貰ってますから完全に孤立させることが出来ます、ああそれと、デリート許可ももらってますので何やってもこの基地だと足がつくことはありません」

 

「副官、シュヴァルベの使用は」

 

「許可する、オールフリーじゃ、但しオールデリートが完全条件じゃぞ」

 

MG4がそれを聞きクスリと小さく笑みをこぼす、どうやらなにか考えがあるようだがそれを触れることはせずに、全員で最終確認を終え、最後に

 

「確認は済んだな…うむ、では決行は深夜、各自機器のチェックは怠るなよ、そして奴らに何を敵に回したか思い知らさせろ」

 

では解散!!こうして暗部のメンバーは準備に入り、決行の時、数時間前から降り始めた雨は遂に本降りとなっていた。




ターゲット
『グリフィン重鎮』
本社からは既に存在抹消済み、鉄血殲滅主義者だが行き過ぎておりユノ指揮官も鉄血の義眼を着け更にアーキテクトを抱え込んだが故に消すべきだと考えている。

『元IOP科学者』
ユノ指揮官の義眼を解析しようと考えていた、が捕縛後G3により狂信者へ

『S06の指揮官』
こちらは重鎮とは違い、アーキテクトそのものとその技術を奪おうと考え協力、Valを利用するために科学者に貸したのは彼

『違法業者』
彼女の基地の戦術人形の提供を重鎮から提案され隠れ家及び彼のみの安全を提供する、因みに重鎮は常連らしい

まぁぶっちゃけ彼らがどんな考えをとか彼女たちには関係なく、ユノ指揮官に手を出した以上は慈悲も欠片もなく殺すだけなのでここは気にしないでくださいな。

次回 暗部と言うか狂犬部隊大暴れである

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。