それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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日はまた昇る、されど晴天ではあらず


日溜まりが陰る日 Session5

事件から5日目、その日、指揮官の意識が回復した。その一文は瞬く間に基地中を駆け巡り、全員の耳に届いたのは言うまでもないだろう。

 

だがかと言って医務室に押し寄せるなんて真似はしない、この基地でも一番怒らせてはいけないというのがPPSh-41なのできちんと次のお達しが来るまでは彼女たちはお見舞いには行かないと暗黙の了解になっている。

 

なので今医務室に居るのは副官、PPK、P7にステアーとG36の指揮官一家と呼ばれる面々だけ、と言っても娘組は来て早々にやっと目覚めた指揮官に抱きつこうとしてPPSh-41に怒られているのだが

 

それから自身がどのくらい寝ていたのか、その間の基地の出来事や他の基地からも心配の連絡が来ていたこと等などを聞かされた彼女は本当に申し訳無さそうな顔で

 

「ごめんね、皆…心配掛けちゃったみたいで」

 

「お、お母さんは悪くないわよ!」

 

「うん、P7の言う通り」

 

二人が指揮官に力説する、だが彼女としてはどう考えても今回は自分が悪いのだからという感情がなくならない、そもそもにして副官から耳にタコが出来るほどに言われ続けていたことを守らなかった自分がいけないのだと

 

「おばあちゃんが言ってたことを守らなかった私が悪いんだ、外の人形には少なからず警戒心を持て、それを私は守らなかった…」

 

「それを言えば、わしもじゃよ、あの時お主から不用意に離れなければアヤツの行動に気付けたというのに…すまぬ、指揮官」

 

急に反省会を始めた二人、だがそれを止めたのはPPSh-41だった、パンッと一つ手を鳴らしてから自身に視線を集まるのを待ってから彼女は今の指揮官の容態についての話を始めた。

 

「指揮官のあの傷ですが、痕は残るものと思ってください、それと先程自身で言ってたから理解していると思いますが改めて、外での人形との接触は出来る限り誰かを挟んでくださいね?もしくは間合いをキチンと離してる状態でも良いです。今回は奇跡的に助かりましたがあと数センチでもズレていたら、今此処で目が覚めるなんてことはありえなかったと断言できますからね?」

 

「うっ、ご、ごめんなさい…」

 

あと数センチズレていたら助からなかった、その一言で体の芯から冷えるものを感じた、特に指揮官は若干顔を青ざめつつ物凄く怒ってますという表情のPPSh-41に頭を下げる

 

「分かれば良いのです、それと傷はまだ完全には塞がっているというわけではないので暫くは絶対安静です、とりあえず一週間ほどは此処で生活してもらいます、その後は普通に生活しても良いのですが一月程を目安に傷が完全に塞がるまでは激しい運動などは絶対に、『絶対に』避けてください、分かりましたか?」

 

「あれ、ステアーこれって私達にも言われてる?」

 

「だってP7はよく戯れつくじゃん」

 

「はぁ!?ステアーだって同じじゃん!!」

 

「お二人とも?」

 

危うく医務室だと言うのに大声で言い争いを始めそうになる二人だったがPPSh-41の妙に恐怖心を煽る声にヒエッと引き攣った悲鳴を上げてから隠れるように指揮官の側で縮こまる。

 

それを見て副官とG36は軽く笑い、指揮官はだいじょうぶだよと頭を撫でてPPSh-41は小さくため息をつく、ここまでのやり取りで受け答えも大丈夫そうだと書類に記していると扉がノックされ、答えれば顔を見せたのはヴァニラ、それとカリーナも来ていたがこちらは少々息を切らしているのを見るに走ってきたらしい。

 

「やっほ、指揮官。見た感じ大丈夫そう…指揮官?」

 

「指揮官さま?」

 

だが、彼女の眼に二人が何故か歪に見えてしまう、今まで普通に見えていたはずなのにと軽く放心していると急に視界にノイズが走り晴れる頃には普通に映る二人の姿

 

「…あ、ううん、大丈夫だよ二人共、ただちょっとほら、起きたばかりでまだ少しだけ頭がぼうっとするだけ」

 

「そう?なら良いんだけど、ああ、そうだ実はカリーナの他にも一人来てるんだったわ」

 

「ユノっち゛ぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「静かに」

 

あ、はいと泣き叫びながら入ってきて早々に黙らせられたのはアーキテクト、彼女は指揮官の意識が戻ったと聞き本当はいの一番に来たかったのだが最初はユノっち家族が先と珍しい良心で堪えていたらしい。

 

だがヴァニラたちが行くと聞けばそりゃ勿論行きますよ!と着いてきて今に至る。

 

「落ち着いてよアーちゃん、ほら、二人より泣いてるじゃん」

 

「だっでぇ、だっでぇぇぇ、わだじにでぎだはじめての人間の友達だもぉん!!」

 

「友達、えへへ、そう言ってくれると嬉しいな」

 

「アーちゃんって意外に泣き虫?」

 

「みたいです」

 

その後はまだ指揮官は本調子ではないということで一旦解散するようにと言われたので全員が部屋を出る、がその前に副官がもう一度、あの時の事を謝り…そして彼女が答えた言葉で異常に気付いた

 

「大丈夫だって、それに今度からは外にいる時は不用意に人 形(にんげん)に私だけで近付いたりしないからさ」

 

「…?何を言っておる、お主基本的に人間には近寄らんじゃろうて」

 

副官の指摘にえ?という表情を晒す指揮官、だが少ししてから何かを気付いた彼女はハッとした表情になってから

 

「も、勿論、人形にもだよ?ご、ごめん、何だかやっぱりまだ頭が覚醒しきってないかも」

 

「そうか、いや、すまぬ、とりあえず今日はしっかり寝ておけって5日も寝てたから難しいかのう?」

 

笑いつつ部屋から出てれば後ろからPPSh-41が付いて来る、医務室を彼女一人にして大丈夫かと言われそうだが今はダミーが見ているので問題ない、二人はそのまま密談室に入り、それから

 

「先程の、あれは何じゃ?」

 

「言うなれば、最悪のパターンを引き当てたかもしれません」

 

そう告げてから彼女は語るのは指揮官の今の精神状況、知っての通り彼女は人間不信であり、だが今日までの様々な繋がりで少しは信頼しようと言う心構えが持ちつつあった。

 

だがAS Valの自身と重なるくらいの虐待痕とあの暗殺未遂でまた人間に対して多大な不信感を持ってしまう。

 

「指揮官は我々人形に対しては負の感情を持つことがほぼ出来ないような方です、ですが人間に対しても信頼できるものも居るという感情もあり、ですが同時に積もりに積もっていた憎悪も吹き出たのだと思いますが、それら3つがぶつかり合い…そして」

 

人形と人間が逆転したのだと思います。つまり、今までは人間に見えていてもきちんと人形と判断していた彼女だが『信頼しているのだけが人間』と言う一つの固定概念が生み出されてしまいさっきの指揮官の発言に繋がったのだと思われるとPPSh-41が続ける。

 

「マズイな…」

 

「ですが、まだ引き止めることは出来るはずです、あの様子なら指揮官も自身の異常に気付けたとは思いますから」

 

そうであればよいがな、副官の重い呟きが部屋に響く、日溜まりは戻った、だがタダでは戻してはくれなかったらしい…




これにてユノ指揮官暗殺未遂事件は終了となります。

Q つまり?

A 人形と一部例外が『人間』判定、それ以外は本当にマネキンという状況、まだ初期の初期段階だからすぐに修正できてはいるが悪化してしまえば本格的に人形と人間が逆転してしまい、彼女からすれば人形(人間)が人間(人形)を従えているという構図になりかねない事になる。

因みに今回の事件で人間への感情はマイナスぶっちぎりでプラスに戻すことは、ほぼ不可能になりました。

AS Valちゃんは明日ね?
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