それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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こうして家族は増えるのである


気弱な彼女に温もりを 後編

「と言う訳で私が案内してあげるわ!」

 

「……でも、どこを案内するのP7?」

 

病室に戻る指揮官とPPSh-41を見送ってからヴァニラに礼を告げて意気揚々とメンテナンスルームからAS Valに基地を案内するために出てきたP7だったがステアーが放ったその一言でピタリと固まる。

 

突如固まったP7に不安と驚きの表情で見つめるのは先程までとは服装が違うAS Val、どうやら肌を出すあの普段の格好も軽くトラウマとなっているようで今は着ているコートはしっかりと前を閉じて、しかしそれだとスカートが隠れてそれはそれで危ない格好になりそうだったのでエルフェルトに連絡、送られてきた同じ柄のひざ丈スカートに履き替え、出来るだけ肌の露出を抑えた姿になっている。

 

それはそれとして、ステアーは彼女の様子から気付いた、この自身の姉を自称しているP7はどうやら

 

「考えて、無かったの?」

 

「そ、そんな事ないわよ!?あ、あれよ、ほら、その、とにかく考えてはいたわ……そう、カフェ、カフェに行くわよ!!」

 

考えてなかったんだなこれ、とステアーが少しジト目を彼女に送るがそんな事は気にせずにP7はAS Valを連れてカフェへと向かうのでとりあえず付いていくことにする。

 

という事でスプリングフィールドのカフェ、着けばAS Valは控えめに扉からヒョコッと顔を出して店内を見渡せば初めて見るその光景にその目を輝かせる。

 

掴みはバッチリだとP7とステアーが頷いてからマスターのスプリングフィールドに挨拶をしにカウンター席に三人で座れば

 

「こんにちは、私はここのマスターを務めています、スプリングフィールドと申します。貴女はValちゃんで良いでしょうか?」

 

「は、はい、えっと、AS Val、です」

 

「マスター、マフィンとオレンジジュース!」

 

「…わたし、ココアで、Valちゃんは?」

 

ステアーが気を利かせて聞いてみるが等の彼女はメニューを眺めて固まっている、どうしたのかと思ってP7が聞いてみれば返ってきた答えは、彼女の境遇を考えると分かる理由だった。

 

「あの、えっと、これ私も注文して良いんですか?」

 

「……あのねぇ、もう貴女は奴隷みたいな立場じゃないの、仲間なの、家族なの!」

 

「普通に、頼んで大丈夫」

 

それに今日は私が奢るんだからとP7が胸を張るがそこでステアーはふと疑問に思った、確かこの間彼女はお小遣いがそろそろ危ないとか言ってなかったかと、自分の分は出すので問題ないのだがP7とAS Valの二人分に彼女の残りのお小遣いは太刀打ちできるのかと。

 

「P7、お小遣い、足りるの?」

 

「へ、ちょ、ちょっと待ってて……あれ、二人合わせて、えっと、多分足りるわ!」

 

「マスター、二人の分、私も出します」

 

足りるって言ってるじゃない!!と彼女は叫ぶがはっきり言えば足りないという話である、そのやり取りにまたAS Valは控えめに笑みを零せば、二人は顔を見合わせ、釣られるように笑い、そのタイミングでマフィンが三人に提供される。

 

AS Valにしてみれば知識はあれど実物は初めて見るそれに眼鏡の奥の瞳の輝きは今まで以上になり、ウズウズとP7とステアー、それとスプリングフィールドの顔を何度も遠慮気味に見るが

 

「どうぞ、遠慮なさらずに食べてください」

 

「い、いただきます」

 

「いただきま~す!」

 

「いただき、ます」

 

それぞれが一口食べれば二人は何度も食べてるとは言えそれでも美味しいマフィンに舌鼓を打つ間でAS Valは言葉にならないと言った表情で自分が齧ったマフィンを見つめてから

 

「……美味しい」

 

「でしょ、他のスイーツも最高だけどマフィンは頭一つ抜けてるわね!」

 

「はい、いつ食べてもとても美味しいです」

 

三人の称賛の声にスプリングフィールドも嬉しそうにありがとうございますと告げてから他の注文の準備に取り掛かりにキッチンへと消える。

 

それから三人は雑談を交わすのだがそこでAS Valが気になったのは二人の指揮官の呼び方、なぜ『お母さん』と呼んでいるのかと聞いてみれば

 

「うーん、私もさ、前は他の基地に居たんだけどValみたいに酷い扱いされて戦場に放置されてたところを拾われた身なの。で最初は皆に敵意を持ってたんだけどお母さんはそんな私にもずっと側に居てくれて、優しい笑顔を見せてくれてさ」

 

当時を思い出すように目を瞑りながら語るP7、最初はただ好きだったのが親子と言われそこから始まったお母さん呼び、当初は秘密だったけどステアーも加わり、副官を『おばあちゃん』と呼ぶようになり指揮官がPPKと誓約すると言うタイミングで二人がこの事を告げ、そうしてなった家族であると、途中でステアーも加わり楽しげに、そして懐かしげに語るそれを聞いてAS Valの気持ちに一つの疑問が浮かび上がる

 

(最初は罪悪感だった……でも目覚めて大丈夫だって言われて、微笑みながら抱き締められて、とても安心できた、あれってどういう気持だったんだろう)

 

「Val?どうしたの、もしかして何処か調子が!?」

 

「なら、すぐにヴァニラさんに連絡」

 

「え、あ、大丈夫、です。ただその……一つ聞いて、良いかな?」

 

ポツリポツリと今さっき浮かんだその疑問を口にして二人に聞いてみる、上手くは話せてるか分からないけどと思いながらできるだけ丁寧に話していくのを二人は真剣に聞いて、それから

 

「多分、私達と、同じ」

 

「うん、お母さんってそういう気持ちだと思うよ!」

 

「でも、いきなりで大丈夫なのかな……」

 

不安げな彼女、それもそうだろう、あの暗殺未遂で出会い、それで今日目覚めていきなりこの流れはいくら何でも迷惑ではないのだろうかと、嫌われたらどうしようという気持ちもある。

 

だがそんな不安を二人は吹き飛ばす、更に言えば丁度入ってきた二人組が

 

「だいじょ~ぶだと思うよ?指揮官って時間より気持ちを大事にするし?」

 

「うんうん、家族になりたいって気持ちのほうが大事だよ!」

 

「ぴゃあああああ!!??」

 

あ、やっべと声の主、UMP45が呟く視線の先にはカウンター席の下に潜りP7の椅子の側で隠れるように縮こまるAS Valの姿。

 

これにはP7とステアーもジト目の視線を送ればUMP45はアッハッハ、ごめんね~と謝りながら隠れてしまった彼女に視線を合わせて

 

「私はUMP45、まぁこれから宜しくね、それとさっきの言葉は嘘じゃないからさ、素直に言ってみるのが良いよ」

 

「UMP9だよ、さぁさぁ、貴女もユノ指揮官と家族だ!」

 

私達は別に違うけどね~とツッコミを入れてから二人はテーブル席に向かう、それを見送ってからAS Valも下から出てきて一度深呼吸をしてから

 

「いいの、かな?」

 

「大丈夫よ!じゃあ、医務室のお母さんに会いに行く?」

 

「善は急げ、です」

 

二人の自信満々の声に自分の心が跳ねたのが分かると同時にやっぱり不安も生まれてしまう、でも短いやり取りだったとは言え彼女ならという期待と共にカフェの料金を払ってから向かう前にもう少し基地を散策してから三人で指揮官が安静にしている医務室の扉をノックしてから入室し

 

「あ、どうだったVal、ここは良い基地でしょ?」

 

「は、はい、マフィン、美味しかったです」

 

「そうでしょ、この基地で自慢の一つだからね……どうしたの、Val?」

 

オドオド仕出した彼女に気付いて指揮官が先んじて優しく聞いてあげる、これにはAS Valも驚きつつ気付けば両隣に居た二人に視線を送れば頑張れという頷きが返ってきて、それを勇気に彼女はゆっくりと口を開く、いきなりだけど今日だけで彼女に抱いたこの想いを。

 

数十分後、そこにはキャットコンビは勿論、嬉しそうに指揮官の隣に座り話をするAS Valの姿、そしてそれを少し離れた所で見ているPPSh-41と副官とPPK

 

「……これで三児のお母さんな訳ですが、何かコメントありますかお父さん」

 

「嬉しいですわね、ユノも漸く落ち着いて、笑顔も見えてきましたので良かったですわ」

 

「まぁ、三児と言うよりP7のダミー含めば7児の母じゃがな~、いやぁ子沢山でわしも安心じゃわい」

 

地獄とも言える環境で生きてきた気弱な少女はその日、日溜まりとも言える家族に迎えられた、立場的には三女だろう彼女、だけど周りからは気弱な長女と言われる様になるのはもう少し未来のお話




おめでとう、ユノっちは、三児のお母さんに進化した!!

AS Val
ユノ一家に三女(P7談)として迎えられた戦術人形、だが過去の待遇から自分に自信はなくまたあらゆる事にトラウマが生まれており、現状では銃も握れないほどのメンタルとなっているので戦闘能力はかなり低い。
服装は本文通りなのでこの基地の彼女は割と分かりやすい。
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