それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

267 / 794
実はそれなりに溜まってたもの


人間観察の経験値

自身の異常性を認識し、それでも尚前に進むと決めた指揮官、しかし不幸にも本当に軽く傷口が開いてしまったが故に医務長たるPPSh-41から提示されたのは

 

「いや、まぁこれくらいでしたら期間を伸ばす必要もないんですけどね?」

 

「あ、そうなんだ」

 

「はいじゃあ、お勉強の時間としようか指揮官ちゃん?」

 

そんな言葉とともに現れたヴァニラは、と言ってもねと付け足してこの授業の難しさを話し始める。

 

曰く、これは経験値が物を言うということ、それはつまり人間との会話で相手の表情からその人が本心ではなく裏ではどんな事を考えているかを推測する、つまるところ

 

「大体こんな感じってのも無いのよねこれ」

 

「人の癖は個人個人で違いますからね……ですが指揮官にはその経験値を積むというのも難しいのでは?」

 

「そうじゃなぁ、今現状で認識できてるのは大体は居るには居るが其の者らとの会話で実戦的レベルまで持っていけるかと言われると……」

 

それぞれが頭を抱え悩み始める、対して指揮官はと言えばそんな三人の表情をじっと見つめていた、とりあえず誰でも良いから表情を見て何かを発見するということから始めたらしい。

 

見つめ、確かに一人ひとり何かしらの癖みたいなものが存在するんだな~と感心しているとそれを見たヴァニラが気付いた、確かに普通の人間からの経験値は得ることは難しいかもしれないが、指揮官に限っては少々裏技に近い感じに経験値を得ることが出来るんじゃないかと

 

「そうか、指揮官ならこの方法が使えるかもしれない」

 

「む、なにか妙案があるか?」

 

「人形だよ副官、あなた達ならば指揮官の人間観察の経験値を稼げる可能性があるわ」

 

ヴァニラの言葉に少々思案してから、ああっと副官も気付く、続けてPPSh-41もなるほど言った感じの表情で頷いてそれから

 

「あまりに日常的に指揮官と会話していたから危うく忘れるところでしたよ、だとすれば指揮官は既に?」

 

「ええ、恐らくは。だけど意外と経験値は積んでいたかもしれないわね」

 

「え?え?え?あの、なんの話ししてるの?」

 

トントンと自分を置いていき話が加速していく三人に戸惑いながら声を掛けてみる指揮官、何がどうして副官達との会話で自分が人間観察の経験値が積まれているというのだ、そもそもにして人形と人間は、と自分で考えた所でむ?と引っかかる

 

自分は人形達のことをどの様に見えていたっけと、答えは簡単だ

 

「あ、人間」

 

「気付いたようね、そう、ユノちゃんは人形達を人間として見れる、無論それは今回のような事態を引き起こしてしまう、でも気を付ければそれは唯一無二の貴女の強みとなる」

 

「うむ、そもそもにして本来はいくら人間に近づけたとしてもわしらは表情なぞ割と簡単に騙せてしまう……だがお主の眼ならばわしらでも自覚をしていないような癖を見抜けるやもしれぬ」

 

「そう考えると指揮官の眼は私達にはある意味特攻に近いんですよね……」

 

だが今の今まで活用されなかったのは彼女が人形ならば無条件で信頼し勘ぐらないという悪い癖の所為、だがもしそれを克服して外に合う人形には表面で笑みを浮かべながらキチンと最初に観察をするという癖をつけたとすれば

 

そこまで考えて副官とPPSh-41はゾワッとした感覚に襲われる、普通の人間相手ならば自分達も隠し通せる自信はある、だがそれは人形という顔を制御できるからであっての自信だ。

 

(だがもし自分達を人間として見ることが出来る存在と対話したら?全く無いという訳ではないですが、絶対とは言えません)

 

「ねぇ、ユノちゃん。貴女って確か自分の基地の人形ならば同じ顔が並んでも分かるんだっけ?」

 

「うん、流石にまだ入ってばかりの娘とかは少し自身がないけど、それでも分かる自信あるよ」

 

声から嘘でも何でもなく本心からそう告げているとヴァニラは思えば、改めて思案を開始する。意外な形で彼女の人間観察の経験値があることが分かったのは嬉しい誤算であって、あとはその経験値をどうやって人間に変換するかと言う問題。

 

本来であれば赤の他人にこれを活かせれば良いのだが彼女の眼に追加された機能に人間をマネキンとしてしか見れないというのがある為にそれが難しい

 

「うぅむ、どうにかしてマネキンだとしても表情が分かるようになればいいのだけど……」

 

「そればかりは、指揮官の根底の部分に関わってしまいますからね」

 

「どうじゃ、なにかこう、新しい違和感みたいなのはあれからあるか?」

 

「ううん、今は何も、でも町とかに出たらどうかな?」

 

だがそれは今は確認しようがないので保留となる、なのでこの経験値問題は一旦そこで打ち切りとなり、休憩となり雑談でもしようかと言ったタイミングでバタバタと廊下から慌ただしい誰かが駆けてくる

 

廊下を走るなと言っておるじゃろうがと副官が口角をピクピクと震えさせているとノックもされずに扉が開かれ

 

「ユノっち、遂に完成……」

 

「廊下は走るな、何度も言っておるよな?それにノックは一度はするべきでは無いじゃろうか、アーキテクト?」

 

「あ、いや、ははは、ご、ごめんなさい」

 

「まぁまぁ、アーキテクトがこうやって来るってことはなにか新しい物でも開発したんでしょ?」

 

そうそう、とアーキテクトは嬉しそうに持ってきた箱を開けて中身から取り出したのは一着の薄いボディアーマー、見てくれは何の変哲もない、というより通常のそれよりは薄いかなと言う印象を受けるがアーキテクト製品と考えれば間違いなく普通ではないと知っているので続きを促せば

 

「ふふん、今回のユノっち暗殺未遂でね、私考えたんだ、外での危険に対して攻撃だけじゃなくて防御も固めるべきだって、そこで私が開発したのはこの『てっぺきちゃん』これはなんと超軽量ボディアーマーでありながら強度は何とIOPの技術のフォースシールドを流用して生半可な銃弾や刃物なんかシャットアウト、更に緩衝材も入れてるからある程度なら衝撃も殺せるようにはしてあるから強すぎて気絶や骨折も避けれるようにしたんだよこれ!」

 

「……つくづくあれじゃな、コヤツにはもしかしたら頭が上がらないかもしれぬなぁ」

 

「にしてもサラッとまたトンデモナイ技術で作られてるわね……この薄さでフォースシールドの技術組み込んでて、起動時間は?」

 

「んなもん制限つけるわけ無いじゃん?」

 

「これ、絶対に紛失は止めてくださいね指揮官?」

 

その一言で指揮官は、少々顔を青くしたが今後は彼女が出掛けるようになった時は『てっぺきちゃん』の装備が義務付けられたとさ。




もうシリアス疲れてきたぞ!!!!!

アーキテクト製品紹介コーナー
『てっぺきちゃん』
超軽量ボディアーマー、防刃も防弾もと欲張った結果フォースシールドの技術流用をした、なのでかなり頑丈であり内側には緩衝材も敷き詰めているので衝撃にもそれなりに強い優れもの。

量産は難しいなぁとアーキテクトは語る。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。