それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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95式のぽやぽやタイム終了のお知らせ


元気ハツラツ中華さん

例え指揮官が病室で絶対安静で執務室で居なくとも新たな配属があるのがこの基地というものである……だが流石にもう少しは待って欲しいのじゃがというのが副官の本音でもあった。

 

という訳で指揮官不在の正門前、別段待たなくても良かったのだが悲しいことに指揮官の癖が移ってしまったようで執務室で作業中に時計を見てそろそろ時間かと思えば、気付けば此処に居た。

 

(……まぁ、うむ、第一印象は大事じゃからな)

 

などそれらしい理由で自身の行動を正当化しつつその新たな人形の資料を電脳で読み返す、名は確か【97式自動歩槍】あの95式の妹らしく、随分と前から申請は出されていたようなのだが今日漸く念願叶ったということだ。

 

しかし資料の写真を思い出し、似とらんよなぁと思わず呟いてしまう、更に言えば性格も真反対らしくつくづく対象的な姉妹じゃなと耳に届いた車の音に目を向ければ一台の装甲車が止まり、中から降りてきたのは写真通りの長髪のツインテールに姉とは違い、どことなく勝ち気な感じが見て取れる少女は副官を見つけるとカツカツと歩いてきて

 

「中国産97式アサルトライフルが着任しました。えっと……指揮官さまは?」

 

「副官のナガンM1895じゃ、して話は聞いておらぬか?まぁ、少々あってな、医務室に缶詰じゃ」

 

「え!?あ、そう言えば聞いたかも……」

 

どうやらもう本社でもそこそこ大きな事件となっているらしく、97式も例に漏れずにその話は聞いていたのだがどうやら少しばかり頭から抜けていたらしい。

 

まぁ、指揮官の暗殺事件くらいは割と普通に聞くのがこの業界、なので抜けていた、と言うよりはよくあることで処理されていたのだろうと副官は考えてから、そう言えばなぜこの基地への配属を強く希望していたのかと聞いてみれば

 

「えっと、95式お姉ちゃん、居ますよね?」

 

「うむ、確かにこの基地にも居るが、それは別の基地でも同じではなかろうか?」

 

「いや、その、ぽやぽやしてません?その95式お姉ちゃん」

 

ぽやぽや、その単語を聞いて思い浮かべるのは中庭で居眠りをしていたと思えばそのまま夕食時になっても起きずに周りには動物たちがに囲まれている95式の姿、なのでその事をそっくりそのまま97式に伝えてみれば軽く天を仰いでから、蚊の鳴くような声を絞り出して

 

やっぱり私が居ないとそうなるんじゃんごめんなさい、お姉ちゃんがご迷惑をかけてませんか?」

 

「む?いやいや、業務は文句なしにこなしてくれておるよ、ただまぁオフになるとそんな感じという話じゃ」

 

軽くそんな風に97式を褒めればホッとした感じに息を吐く、それから察するにどうやら彼女は前からこの基地に居る彼女を知っていると言うより共に過ごしていたらしく、離れ離れになってきちんと仕事をしているかなどの心配があったらしい。

 

ならば、この場合はあれじゃなと副官は考えて、サラッと指揮官への面通しは後ろに回してから

 

「そうじゃな、先に95式の所に案内しよう。どうせまだ指揮官は缶詰で暇してるが故に一度行けば暫くは拘束されるだろうしな」

 

「え、嬉しいですけど、良いんですか指揮官さまをそんな扱いで……」

 

問題があったらこんな扱いはせぬよと笑いながら言えば更に97式は困惑の声と表情を浮かべる、だけど姉である95式に早く会いたいという気持ちもあり、副官もその後に彼女のもとに案内すると言っているのでならば言葉に甘えようと考えついていくことに。

 

副官の案内で連れてこられたのは中庭、そしてそこには相も変わらず座ったまま居眠りをしている95式に遊んでもらっていたのだろうP7とステアーが彼女の膝枕で共に寝ており、その側には彼女たちに毛布をかけようと奮闘しているが周囲の動物たちの壁で中々近づけない様子のAS Valの姿。彼女は副官の姿を見て声をかけようと動くも隣に知らない人形の97式が見えれば固まり

 

「あ、えっと、その」

 

「今日配属の新たな仲間じゃよ、怖がらんでも大丈夫じゃ」

 

「97式よっと、あ、え~と……」

 

フランクな感じを醸し出しつつ自己紹介をして握手をしようと近づけば距離を離されそのまま95式の後ろに隠れてしまうAS Val、これにはどう絡んだものかと伸ばした手を泳がせていると、少しだけ顔を出してから本当に小さな声で

 

ち、違う、これじゃ駄目え、AS Val、です……皆から『シャフト』って呼ばれてます

 

「シャフトちゃんね、これからよろしく」

 

ニコッと彼女らしい活発な感じの笑顔をAS Valに向ければそれなりに警戒心を削いだらしくヒョコッと95式の後ろからは出てきてくれた、それを見て嬉しそうに頷く副官。

 

だが97式はよしよしと思いつつも後ろに隠れられたというのに一切の動きも見せずに可愛い寝息を立てている95式に近づく、その際に発せられる雰囲気に驚いた動物たちが飛び起きて彼女の周りから散るがそんなの関係ないと彼女の肩を叩く、割と強めだったので少しすればそっと瞼が開かれ

 

「んっ……?あら、97式、駄目よあまりそうやって乱暴に起こしちゃ」

 

「はぁ相変わらず私が居ないとそうやってぽやぽやしちゃうんだから……副官さんから聞いたんだからね、来てからそうやってすぐにぽやぽやしてるから何か具合が悪いんじゃないかとか心配されてたって」

 

「いや、まぁわしらが勝手に心配してただけなのじゃがな?」

 

「そうだったのですか?これは、その、ご心配をおかけしました……」

 

いや、心配してたのはかれこれずっと前なのじゃがな、そんな副官の呟きは誠に残念ながら95式には届かなかったようでそれよりも説教を始めた97式をどうしようかという困った表情を浮かべていた。

 

資料と既に違うんじゃが、慣れたこととは言え事前情報と違う存在が送られてくる事に思わず苦笑を浮かべてしまうが、それでも傍から見てればそのやり取りも何処と無く楽しげであるのを感じれば

 

「ま、あれもまた、あの姉妹の形……ということかのう」

 

「寝てたのに、うるさい」

 

「んみゃぁぁぁぁ、そうだね」

 

「おはよう、お姉ちゃん達」

 

因みに、97式の姉へ対する説教はそれなりに長い時間取られ、彼女が指揮官の元に向かったのは夕方に近い時間帯になってしまい

 

「……せめて、通信は欲しかったなぁおばあちゃん」

 

「正直すまぬとは思った」

 

少しだけ不機嫌な彼女に謝る副官であったとさ




97式の太ももがえっちぃと思うのは私だけじゃないと思ってる。

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