それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
指揮官も無事業務に復帰し、復帰後の初仕事も乗り切り、色々と落ち着きを散り戻しつつある基地、彼女が眠っていたときと変わらないはずの喧騒、だがそれをBGMに自室で仕事を片付けていたヴァニラは唯一つ思った。
「やっと、この基地らしい感じに戻ったわね~」
あの日、足りないと、静かだと思った喧騒、だが今では今までどおりに、もしかしたらそれ以上に賑やかに感じる昼下がりに思わず彼女の顔も綻ぶ、やはりこの基地はそうじゃないとねと思いつつも作業の手は止めずに進めていると
部屋の外がふと騒がしいことに気付いた、いや騒がしいのは割といつものことなのだがこれはそれとは違う気がすると思っているとパタパタと何とも可愛らしい足音が鳴り、それからバンバン!と扉を叩きつける感じにノックされればヴァニラも何事かと、返事を返しつつ扉を開けるが……誰も居ない。
「あっれ?」
可笑しいなぁと思ったのも束の間、突如足元に衝撃が走り下に視線を向けた瞬間、彼女の思考が全て死んだ、彼女の視線には何とも見覚えのある服装と髪型の子供、向こうは向こうでヴァニラを見上げて視線が会えばニカッと無垢な笑顔を向け、それから
「ヴァニラ!!」
「……え、あ、え?スプリング、なの?」
「うん!!」
軽く目眩がした、もしや新手のダミーか何かとも思ったりもする、とにかく今何がこの基地で起きているのかを知りたいがためにヴァニラはそっと通信機を取り出してから指揮官に聞いてみようと思った時、廊下から慌ただしく誰かが駆ける音とスプリングフィールドを呼ぶ声、その声の主は直ぐに分かり、見ればM1ガーランドの姿。
この様子から彼女ならば事情を知っているかもしれないと思ったヴァニラは何故かM1ガーランドが現れてから自分の後ろに回り込んだ推定オリジナルのスプリングフィールドに戸惑いつつ彼女を待つことに。
「あ、ヴァニラさん、こっちにその……」
「スプリングなら、ほら」
「ああ、良かった。もう駄目ですよ、ほら、ペーシャちゃんの所に」
「戻らない、ヴァニラと居る!!」
イーッだと舌を出して宣言してから断固として動かないからなとばかりにヴァニラの足にしがみつく、普段の彼女からはあまりに想定できない言動にまた固まるヴァニラとそんな様子を見ても怯まずに膝を抱えてしゃがんでどうにか彼女を説得しようとするM1ガーランド、そもそもにして何がどうしてスプリングフィールドがこうなったのかと何とか我に返れたヴァニラが聞いてみれば
「今朝、16Labから届け物が来たのですがその中にロリ化薬というカプセルがありまして……」
その時点で割とキツめの頭痛が彼女を襲う、何やってんだあの猫耳天災科学者はと、そもそも生体パーツを使ってても機械の部分はどうやるんだよとかあるがそこはあの天災なのでスルー、問題なのは何がどうすればそんな怪しさ満点の薬をスプリングフィールドが飲むことになったのだという点だ。
先ず飲まないだろう、それがヴァニラから見たスプリングフィールドという戦術人形だ、だと言うのに此処に居る彼女を見れば飲んだのは一目瞭然、だからこそヴァニラは疑問に思った、なのでそこを次にM1ガーランドに聞いてみれば
「すみません、私も深い事情までは……指揮官に呼ばれ来てみれば既にこの姿の彼女が居てってだけで、それでまだ仕事が一段落しないので自分が見ててくれと頼まれただけなんです」
「そう、もしかして誰かに飲まされた?いや、いくら仲間内だとしてもそんな事許すほど彼女は甘くないはずだし……うおっとと、スプリング、突然よじ登らないで」
「そのおくすりは自分でのんだ、本当だよ?」
背中によじ登り顔まで来た彼女はヴァニラにそう告げる、この状況の彼女の言葉を何処まで鵜呑みにして良いのかはわからないが、ヴァニラから見たその声と目に嘘があるようには思えず、ということはつまり
(本当に自分の意志でその薬を飲用した?だとしても、なんで?)
そこまで何か思い悩むようなことが合ったっけと考えるがいやいやと思考を一旦切り替えてからM1ガーランドの方を見て、自分も医務室に向かうと告げる。
自分も行くと言えば今のスプリングならばきっと来てくれるだろうと思っての言葉だったのだが、その考えは的中であり、ヴァニラが向かうならこのまま一緒に行くと頷いてくれたので思わず安堵の息を吐いた二人であった。
という事で最近何かと出番が多い医務室、ヴァニラが居るからなのか大人しく椅子に座りPPSh-41の診察を受けるちびスプリング、そして診察を終えた彼女の答えは
「恐らくですが、メンタルモデルも一時的に変容してますね、というよりボディに引っ張られている、そんな感じです」
「まぁ、それは見れば分かるんだけど、薬の効果時間とかは?」
「流石にそこまでは、ですがペルシカさんの試供品ならば恐らくは今日一日では?」
はい、じゃあもう動いても大丈夫ですよとちびスプリングに微笑みながら伝えればキチンと感謝を告げてから彼女はまたヴァニラの側まで戻る。
まるで親子のような光景にPPSh-41もM1ガーランドも微笑ましいものを見たとばかりに優しい視線が二人に注がれるがちびスプリングはまだしもヴァニラは割と恥ずかしそうに頬を掻きながら
「んでさぁ、なんでスプリングは私にベッタリなのかなぁって、ほら指揮官ちゃんとか、副官とか居るじゃない?」
「ヴァニラが良い!」
「じゃあ、後はお願いできますか?なんだか私だとあまり懐いてくれなくて……」
「保育士さんみたいで私は似合ってると思うんですけどね、ガーランドって」
え?とPPSh-41からの言葉に固まるM1ガーランドにヴァニラとちびスプリングが揃って笑えば、増々親子みたいですよと思わず口にしてしまうそうになるPPSh-41。
ともかくその場で解散となり、ヴァニラとちびスプリングはその日一日をともに過ごすこととなる、だが正直に言えば彼女は子供の相手というのは慣れていない、これが子供らしくなったとは言え根はやはり礼儀正しく大人しいスプリングで良かったわよと内心では思ってたりする。
平日故にカフェも開いてないしそもそもマスターのスプリングフィールドがこうなっては休日でも開かれないし、かと言って彼女と遊ぶというのも何をすれば良いのかという情けない疑問が浮かんでしまい、ヴァニラはただ一言
「どうしようかねぇ」
まぁでも、何とかなるか。ヴァニラとちびスプリングの一日はまだまだ始まったばかりだった。
ちびスプリングさんのイメージ図はオリジナルをそのまま小さくロリ化してもらえればよろしいと思います!!!