それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ストレートな言葉


ロリロリ春田さん Session3

「……出来たには、出来たのだけどねぇ」

 

申し訳ない感じに呟くヴァニラの前には不格好過ぎるオムライス、ケチャップライスはまだ何とかなった(それでも少しベチャッとしてる)が肝心の卵が少し破けてるし焦げてる。

 

彼女からしてみれば失敗である、しかも更に悲しいことにそれが2つ並んでいる、最初のを失敗した時に即座に二つ目に挑戦し、こっちが成功したら彼女に出すという心意気でやったものなのだが……

 

「なぜ、同じミス」

 

「でも、おいしいよ?」

 

声に見れば、モグモグと食べていたちびスプリングが彼女の方を向いてニカッと笑顔になりながら感想を述べる、どうやら彼女の舌は満足させることは出来たらしいと一先ずの息を吐く、これで普通などと言われた日には恐らくは立ち直れなかっただろう。

 

まぁ、彼女なりに気を利かせている部分があるのかもしれないと思ったが今の彼女の顔を見てるとそれはないなと考え直してオムライスを一口、やはりケチャップライスはベチャッとして思わず苦笑いをしてしまう。

 

「ごちそうさまでしたー!」

 

「はい、お粗末様でした」

 

「洗うの手伝う!」

 

無理しないでね?と心配になりつつも、彼女にも手伝ってもらいお昼ご飯の後片付けも済ませ、胃を休ませるという意味でまた中庭に戻ってきて、今度は芝生の中央にてヴァニラは座り、ちびスプリングは大福と遊んでいる。

 

一応、ちびスプリングには何処に行きたいかは聞いてみているが返ってきたのは此処が良いという返事、スプリングは此処がお気に入りだったっけなと思いつつも彼女が良いと言うならばと結局此処に戻ってきているのだ。

 

「はぁ~、やっぱりここはいい風が吹くわね、ちょっと食べ過ぎた胃が落ち着くわ」

 

「まてー!!あはははは!!」

 

実際、あのオムライスは少し大きく作りすぎたなぁと思っている、だがちびスプリングはそれをペロリと平らげて、そして今はああやって大福を追い掛け回しながら笑い遊んでいる。

 

元気だなぁと微笑みつつ彼女を眺めていると、ふと隣に影ができ、そっちに視線を移せば居たのはK5、何かようなのかと聞いてみれば

 

「用って訳じゃないけどね、マスターさんが小さくなったって聞いたから見に来たってだけ」

 

「ただ小さくなっただけじゃなくて、メンタル部分も身体に引っ張られて幼くなってるわよ?」

 

「みたいだね、ふふ」

 

遂に大福に振り回され始めたちびスプリングを見て微笑むK5、その微笑み方が何というか何処か深い優しさみたいのを感じたヴァニラは驚く感じの表情をしていると、ちびスプリングがこちらを見たと思えば大福と遊んでいたにもかかわらずヴァニラの方に駆け寄り、それから威嚇するようにK5を睨みつける。

 

「おっと、なんだか嫌われてるみたいだね」

 

「ヴァニラを困らして、怒らして、悲しい顔させた!」

 

「あの時か……スプリング、あの時の事はもう大丈夫よ」

 

ヴァニラがそう告げるもちびスプリングは彼女の前に立ちはだかりウ~と彼女らしからぬ唸り声を上げて睨むのを止めない、その様子を見てK5はなるほどねと何かを納得してから、一枚タロットを引こうと手を動かしたが、ふと何かを思ったのかその手を止めてから

 

「じゃ、私は撤収しようかな……バイバイ、マスターさんとヴァニラ」

 

「え、ええ、じゃあね」

 

あそこまで敵意を剥き出しにされていても彼女は余裕の表情を崩さずにヒラヒラと手を振ってその場を去っていく、ちびスプリングは完全に姿が消えるまで彼女を睨みつけていたがポンポンと頭を撫でられ振り向けば、少し困った表情のヴァニラ、少ししてから彼女が行って行動の意味を言葉を選びながら答えてみる

 

「まぁ、その、守ってくれたってことでいいのかしら?」

 

「……わかんない」

 

が、返ってきてのは予想とは違う答え、表情も何処と無く戸惑っているという感じであり、自分でもキチンと答えが出ているという感じではないのがよく分かる、これはなにかあるのではと思ったヴァニラは視線を合わせるように体を動かして、ちびスプリングの瞳を見つめつつ

 

「ありゃ、じゃあどうしてかしら?」

 

「ヴァニラはK5と居るのが楽しいの?」

 

「ん、まぁ、最初の印象は悪かったけど今はそんなんでもないし、何だかんだで会話してて楽しいわね」

 

「むぅ……」

 

目が訴えていた、自分と居るのはそうでもないのかと、ヴァニラもそれで彼女の心情が理解できた、もしかしなくてもこの娘は今嫉妬しているんだなと、だが同時に嫉妬したという意味にも気付いてしまう。

 

いや、そんなのもっと前から気付いてはいた、だが……だがぞれに気付いていないフリをしてただけだと

 

「(だけど今はそれは置いておこう)貴女と居て私がツマラナイわけ無いわよ、そもそも本当にそう思ってたら今こうして一緒にいると思う?」

 

「えへへ、良かった」

 

どうにか持ち直してくれたようだと思いつつ、今子供の彼女がそんな感情を持ったということはやっぱり今までのあの感じはそういうことだったのよねぇと現実を再確認してしまい、どうにも曖昧な表情を浮かべそうになる。

 

(もし、そうだとしたらスプリング、貴女の女癖ちょっと悪いわよ全く……)

 

無論、これを言えば彼女は何を言ってるのですかと言うかもしれない、だけどこれだけは確かに言えるのだ、自分は誰かに好かれる資格なんてものは存在しない人間だと。

 

だから、この次に出てきたちびスプリングの言葉に彼女は酷く動揺してしまった、無垢な、だからこその本音の一言に

 

「ねぇヴァニラ!」

 

「何かしら?ああ、もしかして私も遊べって?お姉さんあまり体力に自信ないのよね」

 

「それもあるけどさ、私ね、ヴァニラが大好き!」

 

「ッ!!??も、もう、何を突然言い出すのよ……」

 

「本気だもん!ほんきで、そう思ってるんだから!」

 

真っ直ぐな瞳が彼女を射抜く、ヴァニラはそれを正面から受け止めることが出来ない、これが本当に子供の言葉ならば受け流すことが出来た、だけど彼女は違う、スプリングフィールドが持っていた想いを子供特有のブレーキの無さで口にしてしまっているのだ。

 

その日、彼女はその言葉に適当な答えしか返せなかった、受け止めることも受け流すことも出来ずに、ただ曖昧な回答で逃げてしまった、そうしてちびスプリングとの一日は終わりを告げ、翌日

 

「あ、えっと、やぁスプリング」

 

「ひゃ!?あ、いえ、お、おはようございます……ヴァニラ、さん」

 

その日から、ヴァニラとスプリングフィールドの距離感が微妙になり、それを偶々目撃してしまい、自分の未来を感じ取ったIDWの目が急速に死んでいった。

 

最後にだが、なぜスプリングフィールドがあの薬を服用したのかと言えば

 

「いえ、実力は落ちないと聞いても小さくなった身でどれくらい狙いにくいかを実践してみようかと思ったのですが、結果は、その、あんな感じでした……」

 

メンタル部分まで幼くなるのは考えていなかったらしい。




別に深刻な悩みとかがあってロリ化薬を飲んだわけじゃなかったというオチ。

ヴァニラの料理センスは磨く直せば並以上にはなるよ!!

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