それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
モグモグと可愛らしい咀嚼音が彼女からしてからゴクンと飲み込んで一言
「ん~まぁい!」
「……それ、何個目ですか?」
キラキラな瞳で今しがた食べたそれ『一口メロンパン』の感想を述べる彼女は【SPAS-12】名の通りショットガンタイプの戦術人形であり、ショーを演じることを好み、戦闘をショーと題することもある。
だがそれ以上に特徴的なのはその食欲、あのエンゲル係数組に匹敵するほどの大食らい娘であり、そのメロンパンも1つ2つという数ではなく、ティスの質問に少し視線を上にして人差し指を顎に当てて考えてから
「む~、2袋目から先は数えてないからなぁ」
「個数じゃない所がもう笑えますよね」
少なく見積もってもこの一口メロンパンは一袋に10数個入ってたのは確認してのでそれ以上は食べていると分かる、というか既に4袋目の半分も消え始めているのでこれにはティスも変な笑いがこみ上げてくる。
と言うかとティスは今回の組み合わせにため息が出る、この間はMP-446、その前はスコーピオン、更に前はPP-90、何だこの問題児共はという人形とコンビを組んでこの警邏の任務をこなしていたがいよいよ今日の配置で悟った、副官は間違いなく私にこの手のキャラを押し付けていると、いや、彼女はまだいい方である、つまり
(別にそういう訳じゃない……?)
因みにそれが副官の狙いだったとティスが知るまでまだまだ掛かる模様、ともかく今日の相方は比較的に手がかかるわけでもなく少々自由に食べ物を買ったりはするがそれはMP-446だって同じなので問題にはならない、寧ろこれくらいを一々問題にしてたらキリがなくなり自分の胃が無事に死滅すると結論を出してから隣を見れば……誰も居なかった。
「は、いやいや、何処行ったんですかあの大食らい!?」
「おお、嬢ちゃん良い食べっぷりじゃねぇか!」
嬢ちゃん、食べっぷり、その単語が聴こえその方向に視線を向ければフランクフルトの屋台の前で片手それが沢山入れられている袋を持って幸せそうな笑みを浮かべながら彼女はフランクフルトを豪快に頬張ってモグモグと食べている姿があるではないか。
因みに頬張ってとは書いたがよくそういう方面に使われる感じではなく、パックンである、咥えていると言うより噛み千切りながら食べ進めている感じ。
「SPAS、何やってるんですか貴女!」
「ほへっ?ほほひいよこれ?」
「食べながら喋らないで下さい、聞き取れませんから」
ティスからの指摘にこりゃ失礼と言った感じにモグモグと食べ進めてからキチンと噛んでゴクンと飲み込み、それから改めて幸せそうな笑みを浮かべつつ
「これとっても美味しいよ!ティスちゃんも一本どう?」
「……いや、まぁ頂きますけど、それよりメロンパンはどうしたんですか」
「へ、もう食べちゃったよ?」
だとすれば食った側からこれだけ大量に買ってまた食べてるのかコイツと呆れ顔になってからふと例のエンゲル係数跳ね上げ隊の三人娘と最近になりPKPもよく食べることが判明した基地を思い出して、これではまた基地のエンゲル係数が跳ね上がるなぁと割と呑気なことを現実逃避として考え始める。
「ですが、それだけ食べると増えますよ?」
「うぐっ、い、いやほら、私ほら、エネルギー効率悪いほうだから……もしもの時に全力出せないとほら、マズイから」
「吃るくらいならそんなに食べなきゃ良いじゃないですか」
だって美味しいんだもん!と開き直りに近い声に返事にもう勝手にして下さい、それよりもパトロールの続きに行きますよと追加注文の構えだった大食らいドールを引き摺り歩き出して三歩、いやもしかしたら二歩目だったかもしれない。
ともかくそのタイミングで二人の人形の目が少し先のアパートと呼べる建物の上層付近の窓から、ボンッ!!と爆発音と同時に黒煙と炎が吹き出したのをしっかりと捉えた。
「っ!!??行きますよ、SPAS!!」
「了解!」
二人は出せる全力を出しつつ人混みを上手くかき分けて現場付近に行けばまだ消防は来ておらずアパートの入り口にて泣き叫ぶ女性の姿が、二人がどうしたのかと近付いてみれば
「あの中に、まだ息子が!!」
「中って、どの階ですか!?」
「4階です!!留守番をさせていて、ああ、あの子も連れて行けば良かったのに!!」
4階、現場に来る前に見た感じでは火の元は三階、まだ上階には火は回ってはいないと思われるが階段も通路も間違いなく火に包まれて近寄れないと思われると考え苦い顔をするティス、流石に戦術人形言えど火災の真っ只中に防具無しで突っ込んで無事ではいられない。
だがSPASは違った、4階と言われた時、彼女は直ぐに上を向いてその階層までの距離を測り、コクンと1つ頷いてから絶望に暮れ掛けている母親に笑顔を見せて
「私に任せて!」
「え、た、助けてくれるのですか!?」
「ちょ、SPAS、ここからどうやって、幾らSGと言えど火の中はキツイですよ!?」
「だったら、火の中を突っ切らないルートを通ればいいのよ」
ニヤリと地面を何度も踏みしめて4階の窓の部分を見つめるSPASにティスも彼女が何をするのかを理解した、がその発想にぶっ飛んだことをと思いつつも行ってこいとばかりに頷けば、向こうは左の手をぐっと握ってから母親に
「信じて!」
力強くその言葉を伝えてから、体全体に自身が出せる力を込めそのまま全身をバネにして助走もなしに一気に跳躍を行いガシャン!と窓をぶち破って4階に侵入、そのあまりに衝撃的な突撃方法に母親は勿論、周りの野次馬も声を失うほどに驚き、だが同時に無事に帰ってきてくれと祈り始めるものも現れる。
それから数分、そろそろ4階にも火の手が回り始め、マズイぞこれと周りがざわつき始めたとき、ティスの通信に彼女の声が
《ティスちゃん、今から壁一つぶち破るんだけど近くに人居ないよね!?》
「は!?いや、居ないですけど先程の窓からじゃ駄目なんですか!」
《火の手が思ったより早くて塞がれちゃったの!!とにかく居ないんだね?よぉし、大丈夫、お姉さんを信じて!》
保護したその母親の子供に伝えたのだろう、それが聴こえた数秒後、宣言通りアパートの壁がぶち破られその勢いのまま少年を抱えたSPASが
「どぉぉぉっこいしょ!!!怪我はない、少年!」
「だ、大丈夫、です」
良かった!爽やかな笑みを少年に向けてからそっと降ろし母親と再会させる、その日、基地にSPAS宛に少年から手紙が届いたとか何とか、そしてそれを呼んだSPASが
「いやぁ、嬉しいね!」
何を書いてあったかは断固として他人には読ませないし教えてはくれないが、彼女の何処か照れくさそうな反応が何よりの答えだろう。
馬力特化過ぎてエネルギー効率が悪いから大食らいなSPASちゃん可愛いと思うの、思わない?思って?
信じて、はただ単に言わせたかっただけ、別に誰かをぶん投げたりはしない。