それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
早朝の訓練所、そこで2つの影が組み手をしており、それを眺めているCZ75、となれば2つの影の内の一つはスコーピオンだというのは分かる。だがその攻防は長くは続かず、スコーピオンが戦っていた影のほんの一瞬の隙を逃さず放った掌底が影を捉え
「ヌッグアッ!!??」
「今のは良いのが入ったな」
ゴロンゴロンと影が転がり、だが彼女等の予想とは反してそれは受け身をとって体制を整えた。特徴的なKの形の髪飾り、褐色の肌に小柄な少女の名は【KLIN】自身をいずれグリフィンナンバーワンになる存在だと豪語している少女だ。
そして彼女は手始めにこの基地でのナンバーワンを目指すべく、道場破りよろしく訓練所に向かい常連であったスコーピオンとCZ75に挑戦を叩きつけて今に至る。だが来てからの彼女ともはや古参と言ってもいい程のこの基地で戦い続けているスコーピオン、ハッキリ言えばKLINがよほど天賦の才能を持っているとかでもなければ勝てる見込みなど最初からない戦いであり、それはCZ75も分かっているのでただ一言
「で、まだやんのか?」
「当たり、前だ!アタシはナンバーワンに、なるんだ!」
「おぉう、すごい気迫だね~、何か事情でもあるのかい?」
緩い感じながらも隙きを感じさせない立ち振舞のスコーピオンが聞けば、KLINはその目の闘志を更に燃やしながらぐっと立ち上がり、吠えるように答える、それは彼女が過去に何があったのかを語らずともその言葉に込められていた。
「アタシはナンバーワンでなきゃいけないんだ、有能だと、優秀だと、示し続けないと行けないんだよ!!」
「……」
「じゃないと、アタシに価値なんか、ないんだ!!だから、だから!!」
「っち、そういうことかよ……スコーピオン?」
「ふぅん、で?だからこんな事するってんの?バッカじゃないの」
「ああ!?」
おいなんで煽ったんだよお前とCZ75がスコーピオンを見れば彼女は何処と無く悲しい瞳をしていた、憐れむ感じではない、本当に彼女の何かを察して共感しての悲しさに見え、思わずCZ75は言葉を失う、自分では分からないがスコーピオンはその何かを感じ取りそれでいてああして煽ったのだと言うのは分かりそれ以上は言葉を掛けずに成り行きを見届けることにした。
「大体さぁ、この基地じゃあそんな事一々気にしてるやつなんていないし、指揮官だってそれでどうこういう人じゃないよ?」
「んなの分かんないじゃん!最初は人のいい感じかもしれなかった、でも急に態度を変えて除け者にして、最終的には切り捨てられる、そんなの嫌なんだ!!」
「……お前、指揮官がそういう人間だって言うのか?」
声の質が変わった、先程までは促すようなそんな感じの声だったのが今は突き刺すような、明らかに怒りを込めた声に。だが彼女が怒る理由は分からなくもないなとCZ75は一人頷く、だが同時にKILNの過去を垣間見て彼女の心情も理解できない訳でもないと悩む。
悩み、そして出した結論はもうコイツラに好きにやらせるかというぶん投げだった、正直言えばこの手の説得はあまり得意ではないので下手に口を出せば更に自体がややこしくなるんだろうなぁと理解した上での判断だった。
「一度会ったじゃん、それでお前は指揮官がそんなくだらない事で
「お、お前らは長く居る、アタシは来たばかりだ、ならそんな事思っても゛っ!!??」
言葉を言い切り前に、遂に我慢の限界を迎えたスコーピオンの拳が彼女を捉えた、怒りの身を任せた力任せの一撃であったが完全に不意を疲れる形であったがためにKILNが避けることも叶わずモロに受けて吹き飛び受け身を取りそこねる。
いや、恐らくは受け身は最初から取れないだろう、ガバっとKLINが顔を上げた時にはスコーピオンは彼女の前に立っておりそのまま胸ぐらを掴んで
「指揮官はな、入ったばっかりだとか長いだとかそんなのどうでもいいんだよ!!!来たなら皆須らく仲間だって、家族だって笑顔で言い切って守ろうとする人なんだよ!!!!」
「……口挟もうか悩んだけど挟むわ、KLIN、お前一度でもちゃんと指揮官と会話したか?してねぇならしてこい、んでお前の不安全部吐き出してこい。それでも気持ちが変わらないってんなら此処にもう一度来くればいい、そん時はアタシが相手になってやるよ」
「え、いや、CZ75これはあたしとコイツの問題……」
「此処まで見ててお前らだけの問題に出来るかっての、ほら手を離してやれよスコーピオン」
指摘され手をゆっくりと離しKLINを下ろせば彼女は二人を見て何かを言いたげな顔をするも、迷うように目を伏せてから
「……行って、みる」
「そうか、指揮官にはこっちから通信を入れておく、何処がいい?」
「こういう時はカフェ開けてもらえば?そこなら話しやすいでしょ」
ならそうすっかと指揮官に通信を入れる為に少し距離を離すCZ75、その間にスコーピオンは彼女に対して、ここまでしておいてなんだけどさと前置きをしてから気まずそうに指で頬を掻き
「ごめん、ちょっと感情的になりすぎた……」
「なぁ本当に、信頼しても良いのか?」
「うーん、あたしら的には良いと思ってる、いや、寧ろあたしらも支えてあげれるようにならなきゃとすら思ってるよ。でも結局最後に決めるのは君自身だと思う、誰かが言ってたからで決めちゃ駄目だよ」
「そういうことだ、っとカフェの場所、分かるか?分かんねぇなら案内するけど」
実を言えばマップもちゃんと見てなかった彼女は二人に案内を頼めば二つ返事で了承されて先程までの空気は何処へやらと行った感じでカフェへと歩き出し、そこで彼女は指揮官と真剣に会話を行い、その日の午後、また彼女が訓練所の二人の所に顔を出し
「ごめん、アタシ、指揮官を凄い勘違いしてた……」
「良いやつだっただろ?いや、寧ろ良すぎるのか、一度それで刺されて死にかけてるし」
「いやぁ、あの時は本気で焦ったよね~ってKLIN?」
「さ、刺されたってあんな人のいい指揮官を刺したのは何処の誰だよ!?」
「刺したのは虐待を受けて逆らえなくなった人形、黒幕が居たって話……まぁそいつらがどうなったかは知らねぇけど」
てかコイツあの数時間で指揮官に対して柔らかくなりすぎだろと思いつつ訓練を開始、その日から訓練所の常連にKLINが加わるのであったとさ。
早速、新規人形を打ち込むスタイル。
彼女は来てから早々に報告書ぶっこんで主力にしましたねぇ!!