それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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二人の胃袋が悲鳴をあげる


恋愛クソザコフロントライン

デジャブを感じるにゃ、IDWはその時のことを思い出してみる、あの時もそう、休日だし惰眠貪るつもりで基地を歩いていたら真剣な眼差しの当時はそれはもう酷いレベルのヘタレだったPPKに声を掛けれカフェに来てみたは良いものの中々相手が相談内容を口にしなかったなと。

 

時間も確かこんな昼下がりだった気がしないでもない、ただあの時はマフィンも頼んでいた記憶があるにゃと思えば少し失敗したなという気持ちになりながら時間が経ち少々ぬるくなってしまった紅茶を口をつけつつ視線を少しだけ前にすれば、そこにはこのテーブル席を彼女が一人で使っているのではないという証拠であるコーヒーが置かれていた。

 

が、見た感じ注文したはずの主はこれに手を付けていないのか減った気配はなく来た当初は上がっていたはずの湯気も鳴りを潜めてしまうくらいには冷めてしまっている、それを確認してからIDWは更に視線をコーヒーから上に動かせば

 

「あ~、えっと、その」

 

何かを言おうとしては中途半端に途切れ、開いた口をそのままに迷いに迷っている感じの声を上げ、指はしきりに動かして遊ばせて、視線は泳ぎに泳いでいる彼女は趣味でカフェとBARを開いてマスターとして腕を振るっているスプリングフィールド、他の基地では『からかい上手の春田さん』だとか『魔性の女、春田さん』だとか『彼女が動いたら一人勝ちしてた』とか様々噂が飛び交うほどに恋愛に関しても非常に強いというイメージが持たれる彼女だが、どうやらこの基地に限ってはそれは当て嵌まらないらしい。

 

この目の前の状況にIDWは諦めたように溜息を吐く、何時ぞやK5の占いでもそんな事を予言されていたことだし、自分でもそんな気が薄々してたし、何だったら此処最近のスプリングフィールドの様子から何かもう諦めがついてたしと自身に言い訳を積み重ねつつも

 

「世界は、私にちょっと押し付け過ぎじゃないかにゃ~」

 

「美味しいですわ~」

 

IDWのどうにでもなーれ的な独り言も、世界は許容したくないらしいのかカウンター席にてマフィンを食していたカラビーナのそれはもうご満悦な笑顔とともに放たれた言葉にかき消され彼女は引き攣った笑みを浮かべる。

 

ここはIDW恋愛相談窓口、別に彼女が始めたわけでもないし相談件数はあのPPK以来全く無かったがあのヘタレを結婚まで引っ張り更には今やイケメンな旦那さまに化けさせた実績は確かな物があるために今回、彼女は思いっ切り巻き込まれた、そしてまぁスプリングフィールドだけならまだなんとかなるにゃと割と楽観的な思考の彼女は知らない……今回のお悩み相談、一筋縄ではいかないということを

 

「……マスター、コーヒーが冷めるほどに話しにくいなら今日は」

 

「い、いやですね?別に話しにくいとかじゃないんですよ、ただそのえっと、どう言葉にして良いのかが分からなくてですね?」

 

「んじゃまぁ別に整理しなくていいからありのままで話せにゃ、いつまでもうだうだ迷われても時間が無駄に過ぎるだけにゃ」

 

「そ、そうですよねすみません……えっとですね、その、ヴァニラさんとどんな風に話せば良いのかなと」

 

あまりに予想通りな相談内容に思わず優しい微笑みを浮かべてしまうのも仕方のないことだとIDWは思う。何かもうそれ以外の相談だったらどうしようかとも思ったにゃとすら思う、そもそもにして最近の二人はあまりに微妙な距離感過ぎた、それもこれもすべての始まりは

 

「んなもん今までどおりに会話すりゃあ良いにゃ、そもそもにしてどうして急にあんな余所余所しい感じになったにゃ」

 

「あ~、それはですね」

 

「と聞いてみたがぶっちゃけ知ってるにゃ、マスターが小さくなった時にヴァニラに好きだの何だと口走ったのが原因だろうにゃ?」

 

「え、なんで知ってるんですか!?」

 

スプリングフィールドの焦った表情にIDWは真顔で聞きたいかにゃ?と返す、質問に質問で返すのはよろしくはないのだが事これに関しては先に聞いておかないと後が怖い、暫しの沈黙、それから小さく頷いたのを確認してから

 

「ROがビデオを撮って見てたにゃ」

 

「……」

 

絶句、正にそれがピタリと当てはまるだろう顔になるスプリングフィールド、それはそうだろう常識人筆頭の一人であるRO635がそんな事していたとは夢にも思わない、それはIDWも同じだ、だが偶々見てしまったのだから疑いようもない事実なのだ。

 

因みに彼女曰く、別に隠し撮りをしていたつもりもなく後にFMG-9に記事の資料として提供したので今は彼女の手元にはない、それでもあの映像で物凄く癒やされた表情をしていたので多分彼女はもう駄目なのだと思う、ともかくそれのお陰でIDWは二人のあの微妙な距離感の理由は知っている。

 

「でもそれだけでどうしてあんなに余所余所しくなるにゃ、それともあれか?好きは本心でそれをあんな勢い良くぶつけてしまったがために気まずくなったって感じかにゃ?」

 

「……はい、いや、だってそうでしょ?ヴァニラさんがこっちをどう思ってるか分からないのにあんな一方的にぶつけて困らせて、あ、あまつさえ一日ずっとそんな調子でべったりしてたんですよ!?」

 

恥ずかしいとかいう次元じゃないですよあれ!?と何だか妙な感じにエンジンが掛かってしまったスプリングフィールドの言葉を何だかんだで真面目に聞きながら、こりゃあヴァニラから引っ張ってもらったほうが楽かにゃと幾つか案を浮かべているのとほぼ同時間、広報室では

 

「ねぇアリババ、気まずくなった相手と会話を違和感なく切り出せる方法ってなんか無い?」

 

「はぁ?なんですか急に、ていうか今見て分かりません?忙しいんですよ、今月の記事まだなんですよ、そろそろ更新しないとカリーナからどやされるんですよ」

 

FMG-9の顔にいつもの余裕が無いほどにぶっちゃければ今は一秒でも惜しいくらいに修羅場である、暗殺未遂やら何やらバタバタが多すぎて記事に割ける時間がなかったのである、それはどうやらヴァニラも分かってはいるのだが

 

「いや、分かってるけどさ、相談できるのあんたくらいしか」

 

「そもそもいつものキャラで接すればいいじゃないですか、女の経験なんてそれなりにあるって言ったの自分じゃないですか」

 

「あれはほら、遠回しなアプローチを事前に防ぐって感じが大半だったし……ストレートに来るのは初めてなのよ」

 

後に、IDWがその時の会話をFMG-9から聞いてマジかにゃと死んだ魚の眼をしながら呟きFMG-9の肩を掴むことになる、ともかくマスターと整備士、この二人の不器用な駆け引きはIDWとFMG-9の胃袋を犠牲に行われることが確定した日である。




ROさん「ち、違うんです、これはそのあれですほら、微笑ましいものを残しておきたかっただけなんです!!??」

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