それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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その糸の先は?


小さなほつれ

執務室、何時もならばまぁ和気藹々と言った感じで仕事が進められているこの場所だが今日は違った、明らかに怒っている指揮官、やらかしたという表情のハッカーコンビ、今回一番の主原因であり本気で申し訳ないという表情と雰囲気を出している副官。

 

「……なんで私がこうして呼び出したか、分かるよね?」

 

それは今朝、D地区からの通信から始まった。副官が出て少しの間は世間話をしていたのだが急に声の雰囲気が変わったなと同時に放たれた言葉で場は一転した。

 

『所で、そちらの基地にアリババとメジェドってコンビいませんかねぇ?いやーウチの諜報部がちょっかい掛けられてるんですわ。えぇえぇ、そりゃもう今日も大騒ぎですよ』

 

『なんのつもりかは知らんのですがねぇ、仮にも交友もってる基地にハッキング仕掛けるのはどういう事か詳しくご説明願いたい』

 

声が本気で怒ってるそれだった、いや当然だよそれと指揮官は割と白い顔を青くしながらこの最悪に近い状況をどうしようか考え、とにかくと二人を呼び出して今に至る。因みにだがあの決意した日から彼女もこの基地の諜報部の存在も知るようにはなっている、ただまだ深くまでは知らないが。

 

だが今は別にその部分はいい、問題はその二人が自分が預かり知らない所で信用をドブに捨てるようなことをしていたということが問題だ、指揮官として知らなかったでは既に済まない領域まで来ている。

 

「ねぇ、なんでそんな事をしたの?」

 

「……すまぬ、事の発端は間違いなくわしじゃ。FMG-9にアリババ名義で情報を集め、渡しておいてくれと伝えたのじゃ」

 

「ああ、いや、それを言うなら自分が一番悪い気がしますよ。てっきり防衛方面も見ろという言う意味合いでアリババを引き出したとばかり……いえ、何言っても言い訳ですね、すみません、落ち度でしたし一度は報告をあげるべきでした」

 

「止めなかった私も責任は重いわね……」

 

開けばどれも情報伝達が中途半端だったのが招いた感じのある内容、この基地の運営が長くなり、しかも諜報部に関しては今の今まで指揮官を通したことはなかったがための事故、ここで彼女達を攻めるのは恐らく簡単だ、だけどそれじゃあ今後にならないし、気付けなかった自分も同じだしと急速に落ち込んでいく気持ちを無理やり戻しながら、どうにかしようと考えに考える。

 

「通信で、いや、うん。三人共すぐD08地区の基地に向かう準備を、ヴァニラさん運転できるよね」

 

「ええ、もちろん」

 

「じゃあヴァニラさんが運転手、二人は一応の装備で、向こうに直接出向こう。こちらからは出来るだけの謝罪と今後の情報支援、それとこっちの諜報部の協力体制、とにかく無くしてほぼ空になっちゃった信頼を少しでも取り戻せるだけの提示を惜しみなくしていくから」

 

こうして彼女達はD地区へと謝罪諸々の為に一時的に基地を空ける、そうするとでは業務はどうするのだという問題になるのだが、指揮官達は戻ってきてから全力でという行き当たりばったりの持論を持ち合わせてしまっている。

 

「だから、私がこうして処理できるのはしてるってわけよ」

 

「なるほどな、じゃあこっちの作戦の報告は後にしたほうがいいか?」

 

それは指揮官か副官じゃないと駄目だからそれで頼むわと指揮官の席に座っているのはHK416、誰も居なくなったこの執務室を見るなり何やってるんだかと呆れながらもこうして代打として仕事をこなしている。

 

M16はそのタイミングでAR小隊の任務完了を報告しに来たのだが、来てみれば居るのは彼女でどうしたのかと聞き、理由を知れば

 

「あーあ、珍しいミスしてんなここも、それで指揮官自らが……自らねぇ、成長したのを喜んでいいのかねこれは」

 

「いいと思うわよ、少し前じゃあ絶対に無理だったでしょうし。だからこそ私がこうして代わりをしてあげてるのよ」

 

「お母さんかな?」

 

「お黙り」

 

などと言っているが416の顔はどことなく嬉しそうではあった……が急にそれが鳴りを潜め何か違和感を感じ取ったような表情になる。

 

確かに指揮官は成長している、ついこの間ならばこうして彼女が直接出向くことも、何より今回は謝罪にプラスして交渉紛いもしなければならない場面に出ることなんて決して有り得なかっただろう、だというのに先ほどすれ違った指揮官の顔に不安はなく、何処か凛としていた。幾らある程度慣れた相手とは言え、間違いなく色々言われるだろうというのに、あの指揮官が?と考え、一つの考えがよぎる

 

まるで別人……?

 

「どうした?急にだんまりになるなんて」

 

「M16、貴女は指揮官に何処か違和感みたいなのを感じたこと無いかしら。なんていうか、こう、オンとオフの差とかそういうの」

 

真剣な表情でそう聞かれればM16は目を閉じて記憶に探りを入れる、オンとオフ、だがそれは最初の頃から……とハッとなる、確かに出会った当初からオンとオフの差が激しい指揮官だなぁとは思っていた、だが最近のそれは何というかまた別の、言うなれば

 

「スイッチが切り替わったみたいな、いや、ああ、なんて言えばいいんだこれ。だけどある、確かに違和感が」

 

「別人のようだ、この言葉がしっくり来ないかしら?」

 

「それだ!ああ、そうだ、更に言えばあの纏う雰囲気どっかで感じたと思ったがハイエンドモデルだ、もっと言えば奴らが上級だとか言ってる奴ら、それの雰囲気だ」

 

寧ろなんで今の今まで何も感じなかったんだと湧き上がる疑問に戸惑うM16を見つめつつ、416は更に状況を整理する、どういう訳か何も感じなかったのに今になって違和感担ったのかはこの際置いておくにしてもM16が言ったハイエンドモデルに近い雰囲気というのは無視できない話だ。

 

何故、指揮官の纏う雰囲気にそれが混ざるのか、一番可能性があるのは眼の影響、侵食を止めて尚も指揮官に何かしらの影響を与えているとすればあり得ない話ではない。だとすればこの手の話に一番詳しい者に聞くのが良いだろう、そう思った416は

 

「アーキテクトに会いに行くわよ」

 

「あいつにか?」

 

「ええ、もし指揮官の眼がなにか関与しているのならば知ってる可能性が一番高い」

 

それだけを告げて執務室を後にする416をM16も気になるという理由で付いていく、途中PPSh-41もと考えたがどうやら取り込み中だったので二人でアーキテクトが居る開発室に入る。

 

「ん、どったの二人共」

 

「少し聞きたいことがあってな、まぁ416がなんだが」

 

「アーキテクト、指揮官の眼についていくつか聞きたいことがあるわ」

 

そう切り出して自分達が先程気付いた事柄を全て丁寧に話していく、アーキテクトはそれを聞きながらうーんと唸り、それから思い出したかのようにポンっと右拳で左掌を叩き

 

「心当たりはある、鉄血に居る時に読んだ資料の中に『ハイエンドモデル【支配者(ルーラー)】適合実験』っていうのを読んだんだよ。内容は確か」

 

目を瞑りこめかみ辺りに人差し指を当てて思い出すように話していく内容は彼女達も知っている指揮官の眼と同じ内容、鉄血人形が暴走した際の存在であり、生身の人間にしか適合しないくせに適合率は巫山戯てるレベルで低く、適合後も様々な後遺症などを引き起こす、ここまでは同じだった、あとは指揮官だけが適合し、そう続くと思われていた。

 

だが彼女が衝撃的なことを口にした。それは今までの事を全てひっくり返さんとする一言

 

「孤児、まぁ実際はユノっちみたいに誘拐も混ざってたみたいなんだけどさ、ともかくその子らに適合実験を行い、そして……」

 

全滅してるって書かれてたんだよね。




開けた箱は、もしかしたらパンドラだったかもしれない

あ、次回に続きます

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